記事・インタビュー

2021.02.12

危険な疾患を手遅れにしないために。 テクノロジーを活用した産科救急疾患への挑戦【Ubie②】

Ubie当記事は今大注目のヘルステック(テクノロジー×医療)を実践する企業をメプラジャパン CEO 佐藤創氏と共に取材し、医療の未来、海外のヘルスケア事情、医師の企業、未来の働き方について、考えていきたいと思います。

初回は、人工知能(AI)による医療向けシステム及び生活者(患者)向けサービスを開発するスタートアップ、Ubie(ユビー)です。患者の利便性や医療効率を高め、医療現場の負担を軽減するデジタル問診システムの価値が上昇、近年その中でも特に注目される企業となっています。

当記事では、開発に当たる志や仲間として求める人材像などについて、Ubieで働く2名の医師に伺いました。

<お話を伺った方>

金沢誠司(かなざわ・せいじ)
医師・産婦人科

患者の不安と医療従事者の負担を共に軽減したい

――どのような経緯で、Ubieに入社されたのでしょうか。

10年以上に渡って、東京都立多摩総合医療センター、国立成育医療研究センターなど、総合周産期センターの最前線で母体救命と胎児診療に携わってきました。

ある時、当時勤務していた国立成育医療研究センターで、内閣府による「戦略的イノベーション創造プログラム」(通称SIP)の一つである「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」(※1)の演題募集が行われました。これをきっかけに、AIチャットボットを活用して、産科救急をサポートするシステムを開発したいと考えたのです。

兼ねてから、患者さんが何か不安な症状を感じた際の対応に関して、強い課題感を抱いていました。気になる症状があるときに、正しい情報にアクセスできず間違った情報に触れてしまうと、患者さんの不安は増大してしまいます。

もちろん、患者さんの心配事や不安は解消すべきですが、その全てに応じることで、医療側の負担がやみくもに増えてしまうことも望ましくありません。実は、産科では「ちょっとした症状が気になって、かかりつけ医に電話相談をする」という頻度が他の科に比べて高いのですが、国立成育医療センターの集計では、電話対応のうち72.6%が緊急性はないと判断できる内容でした(※2)。

一方で、症状を我慢してしまうことで、早期受診の機会を逃してしまうケースもあります。特に産科で長年解決方法の模索が続いている課題が、「常位胎盤早期剥離」という疾患への対応です。分娩前に胎盤が剥がれてしまう病気で、早期分娩の必要がありますが診断が非常に難しく、時に数分の対応の遅れによって赤ちゃんに後遺症を残す危険性もあります。

(※1)AIやIoT、ビッグデータ等を元に、高度で先進的な医療サービスの提供と、病院や医療従事者の効率化や負担軽減に繋がるシステムの開発・構築を目指すプロジェクト。

(※2)2017年1月16日~5月31日における国立成育医療センターでの産科に関わる電話対応を分析したもの。期間中の電話対応件数は1,514件(1日平均11.1件、対応時間の中央値は約360秒)。陣痛など分娩に関連した連絡を除き、72.6%に緊急性がないと判断できる内容だった。

 

――妊婦さんの早期受診に繋がるシステムを開発したいと考えられたのですね。

その通りです。まず、患者さん側がいつでも気軽に相談でき、問題があれば早期の受診を促す仕組みであること、同時に、医療側の負担も軽減できるような仕組みがあれば――と考えました。このテーマは、実際に前述のAIホスピタルの演題として採択されました。

開発の手段なども様々に検討しましたが、何よりも高い技術とスピード感を以て開発を進めたいと考えて、Ubieにジョインするという結論に至ったのです。

入社したのは2020年の4月です。現在はAI問診の精度向上をはかり、典型的な症状から非典型的な症状まで見逃しなく早期受診の促進に繋げられるように、改良を行っている段階までやってきました。今後は医療機関にも協力を仰ぎながら、実証に取り組みたいと考えています。

スピード感を以てアウトカムに役立つ開発に取り組む

――入社される前のUbieの印象はいかがでしたか。

実は、私の場合は正式にこちらから応募して選考を受けたわけではないんです。前述のようなテーマを持ち込んだところ、相談――と自分は思っていたのですが、いつの間にか面接が行われて、「採用したい」との申し出を受ける流れになりました。採用までに、在籍している医師、エンジニア、最後に代表との面接という形で話が進んで、入社に至りました。

Ubieの選考では、エンジニアとの面接や、場合によってデザイナー等との面接も設定されます。それぞれの役割が非常に大きいですし、医者は”プロダクトの元を作って、形に起こす”というプロセスを知らないので、専門性の高い話を聞くことは意義深いことでした。体系をしっかり立てて、高度な物を創る企業であることが理解でき、共に開発ではなく、自分で開発したいと考えるようになりました。

 

――現在はどのような業務を担当されているのでしょうか。

病院向けプロダクト開発チームで、「AI問診ユビー」の開発に携わっています。

具体的な仕事としては、まず推測に用いる医学データベースの作成やAIアルゴリズムの設計改善があります。導入されている病院の医師からフィードバックを受けたデータを回収して、収集、加工、整形、分析を行うという内容で、都度エンジニアやビジネスチームと協働しています。

新機能や新プロダクトの提案や開発、Ubieのサービスを用いた臨床医学研究の推進にも力を入れており、学会での発表や論文の作成も手掛けています。また、週一で臨床勤務も継続しています。

 

――仕事のやりがいや面白さを特に感じられるのはどのような点でしょうか。

スピード感があり、アウトカムに役立つサービスやプロダクトがどんどん構築されていくという部分に、やりがいを感じています。特にUbieでは1週間ごとに目標を決めて4人~8人くらいのチームで取り組むので、開発プロセスが非常に速いのです。

例えば、電子カルテだと、使いづらい部分はどうしてもあると思いますが、現場の医師が改善の要望を出すことは少ないのではないでしょうか。多くは「要望を出しても変わらないだろうし、仕方がない」と考えてしまうと思います。

しかし、改善要望を出して1週間で直っていたら、どんどんフィードバックやアイデアを出そうという気になるのではないでしょうか。

私たちが重視し、実践しているのは、そういったスピード感です。実際に、リリースは週3回のペースで実施しています。現場の医師の要望や希望を積極的に受け止めて、次々に改善に取り組むことで、医師との繋がりや信頼関係を強めています。

 

評価も役職もない革新的な組織作り

――取り組むべき業務への課題などはどのように設定されるのでしょうか。

社員数は現在90人前後ですが、四半期に一度のペースで会社全体の目標を全員で検討します。それから、目標を因数分解してチームごとの担当を決めていきます。1週間ごとにやる仕事を決めて、成果報告会も毎週行います。

 

――具体的な働き方などを教えてください。

現在は、社会的な情勢も鑑みてほぼ全員がリモートで業務をこなしており、コアタイムもなくフルフレックス制です。個人がパフォーマンスを発揮しやすい形での勤務が推奨されています。

――評価制度や役職がないと伺いましたが、この点についてはいかがでしょうか。

自分には合っていると思います。他人から評価されるのは励みになるし嬉しいですが、その為に仕事を選んだり議論を避けるといった駆け引きが一部にあることに違和感を感じていましたので。また、医歴に応じてなんとなく医長などに昇格する病院の階級システムによって同僚と揉めるといったケースも見てきました。Ubieでは評価や昇進の為ではなく、また上司の顔色を伺うことなく、ミッションに向かって各個人が実力を遺憾なく発揮できるシステムがあります。具体的にはホラクラシーという構造により、役割で繋がるフラットな組織作りが行われています。

 

――Ubieで働く医師に求められるポイントや、必要となるスキルなどはありますか。

5年以上の臨床経験、専門医相当の臨床経験、国内外での臨床研究の経験、英語によるコミュニケーションスキルがあれば望ましいでしょう。

「Ubieness(ユビネス)」と題した人材募集要件や、会社のカルチャーなどは、Ubieのサイトのほか、noteやNotionへのポストなどを通じて積極的に発信しています。

先述のような開発とフィードバックのスピード感に価値を感じる人も、向いていると思います。スタートアップは常に“今”が面白いので――、数年後には会社の規模感も変わって、面白さも変化しているでしょう。

 

――Ubieのような最先端のテック企業で働くことを志す医師へのメッセージをお願いします。

お話してきた通り、世界中の患者さんを適切なタイミングで、適切な医療機関へと案内できる“新たな医療インフラ”の実現を目指して、開発を進めています。

ミッションの達成には、幅広い患者への医療を通じて臨床を極め、国内外の医療への深い理解と課題意識を持った医師の力が不可欠だと感じています。医学とテクノロジーの融合によって、新たな医療体験、また新たな医療インフラをゼロから共に創造していきましょう。

金沢誠司

危険な疾患を手遅れにしないために。 テクノロジーを活用した産科救急疾患への挑戦【Ubie②】

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