記事・インタビュー

2020.12.25

日本で唯一、国内のへき地医療と海外を結ぶネットワーク拠点

<お話を伺った先生>

中桶 了太(なかおけ・りょうた)先生
長崎大学病院 へき地病院再生支援・教育機構
准教授

名称変更

2021年4月1日,「長崎大学病院 へき地病院再生支援教育機構」は
「長崎大学病院 国境を越えた地域医療支援機構」に名称が変更になりました。

日本で唯一、国内のへき地医療と海外を結ぶネットワーク拠点

長崎大学病院「へき地病院再生支援・教育機構」は2005年のスタートから15年目を迎えました。当機構の特徴は、長崎大学病院のバックアップを受けながら、県北部にある平戸市民病院を地域臨床教育拠点とし、地域医療の最前線で研修を行っていることです。全国各地からの初期臨床研修医を年間約35名、これまで合計300名以上を受け入れてきました。平戸市民病院を拠点に初診から入院、リハビリ、そして在宅まで一貫して地域医療に関わることができるのが最大の強みです。

機構のスタート時からスタッフとして関わってきた中で、私が実感しているのは、地域医療・へき地医療は、日本における未来の医療の縮図だということです。高齢化が進む中、多職種とチームを組むことで、限られた医療資源を最大限に生かし、患者さんの生活を支える――これはまさに未来の医療の先取りにほかなりません。

例えば在宅では、外来や病棟では決して見ることのできない、患者さんの生活を見ることができます。外来でどれほど聞き取っても言葉になって出てこない情報が、在宅に行けば分かるのは実に興味深い経験です。在宅には家族背景まで含めた、患者さん一人一人のパーソナルヒストリーがあり、まさに全人的医療が実践できます。

「国際医療人育成室」で国境を越えた医療人を育成

機構のスタートから今日まで、真の全人的医療を実践するために様々な取り組みを行ってきました。例えば毎年、「地域医療とケア」を考え・体験することをコンセプトにサマーキャンプを開催していて、2020年はオンラインで100人を超す医師や医学部生、コメディカルが参加しました。またサマーキャンプに加え、日本と世界のへき地で活躍する長崎人が集う「長崎国際医療人懇談会」も開催し、県内外の参加者がへき地医療について思いを語り合いました。

そして、次なる展開として位置付けているのが「国際医療人育成室」です。これは国境を越えた地域医療人を育成するためのプロジェクトです。

私自身、海外医療と平戸市民病院における地域医療の双方を経験して感じることは、海外医療と地域医療は非常にリンクする部分が大きいということです。海外医療では総合診療的な視点が求められますが、それは地域医療でもまったく同じだからです。

これまで海外での医療活動を志す医師に対して、国内の大学が地域と連携してバックアップする体制はほとんどありませんでした。国際医療人育成室プロジェクトは、海外医療を志す医師の国内での拠点となり、長崎大学病院と平戸市民病院が連携しながら海外活動を全力でサポートします。

海外に興味があるけれど、まだ行動に移すまで至っていないという医師にとって、平戸市民病院で働く期間は、貴重なモラトリアムになるのではないでしょうか。ここには海外経験の豊富なたくさんの仲間達がいて、あなたの悩みを聞いてくれます。まずは一度、ぜひ足を運んでみてください。


<お話を伺った先生>

杉本 尊史(すぎもと・たかし)先生
長崎大学病院感染症内科(熱研内科) 医師
特定非営利活動法人TICO
長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構 国際医療人育成室 助手

途上国に行くのが「当たり前」の環境がここにはある

長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構「国際医療人育成室」の大きなミッションは、国境を越えた地域医療への貢献を目指す、医師の国内拠点となることです。どこかの病院へ勤務しながら一定期間、海外医療に従事するのは一般的に困難です。海外派遣中、残った医師が穴埋めをしなければなりませんし、人事部もよい顔をしないかもしれません。

その点、平戸市民病院は海外派遣に対して理解が深く、海外での地域医療を志す医師を全面的にバックアップする体制を整えています。送り出すだけではなく戻ってきた時にスムーズに元の仕事に戻れるというのは、大きな安心材料のひとつになると確信しています。

長崎大学病院と連携し、研修体制を整えているのも強みです。大学病院との連携で総合診療や感染症、救急医療の専門研修が受けられるほか、熱帯医学研究所と連携して熱帯医学の勉強会や英語でのケースカンファレンスへも参加できるなどへき地にありながら勉強を続ける環境が整っています。

なぜこのようなことが可能になるのでしょうか。ここでは海外医療を経験した先輩達が多数、活躍していて、途上国に行くことがいわば「当たり前の環境」があるからです。

思いを同じくする仲間がいるというのは、何よりも心強い支えになります。そのような国境を越えた地域で仕事をしたい仲間のネットワークを作っていきたいと考えています。

初期研修医・後期研修医(研修プログラム)、その他ご相談などは「長崎大学病院 へき地病院再生支援・教育機構」公式サイトより、お気軽にお問い合わせください。

中桶 了太、杉本 尊史

日本で唯一、国内のへき地医療と海外を結ぶネットワーク拠点

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