記事・インタビュー
※ドクターズマガジン2019年12月号に掲載された内容です。
#06 どくとるケイコと愉快な仲間たちの奮戦は続く
なんともう最終回だなんて!
名残惜しいですが、大切な紙面を無駄にせず、情報盛りだくさんでまいります。
日本で医師免許を取得した医師がカナダで臨床に従事するには
本誌の読者にとって関心が高い事柄だということで表題のリクエストをいただきましたが、研究留学の私には皆目見当がつかないので、実際にカナダで臨床に従事されている小児科医師のK先生に電話取材をしてきました(状況は流動的なので、随時ご確認願います)。まずカナダは日本と違って国ではなく、州が医師免許証を発行しており、いずれの州でも指導医の下で診療行為を行うdependent ライセンスと独立診療を行うindependentライセンスの大きく2つに分けられます。州や診療科によって難易度は異なるようですが、結論として、カナダ人医師の雇用を守るという理由から、日本の医学部を卒業した医師がindependentライセンスを取得するのは米国よりも困難で、よほどカナダ側が望むような臨床技能を持っているといった特殊事例以外は、原則カナダ人と同様に一から試験や臨床研修を受けねばならぬようです。
研究ベースに臨床を行うアカデミックライセンスなるものを主にオンタリオ州から発行してもらって臨床をされている先生方はちらほらいらっしゃるそうですが、それでも数年前のK先生調べでは、日本の大学を卒業してindependentライセンスを取得して、カナダで臨床に従事されている方は20人に満たないとか。dependentライセンスはそれよりは楽で、現時点ではオンタリオ州とケベック州においては英語の能力試験が不要らしく、フェローシップ相当で数年間カナダで臨床を経験したいということでしたら、チャレンジは可能だろうとのこと。K先生からは多様性に富む患者を診療するなど、日本ではできない経験が可能なので、若い先生方は積極的にチャレンジしていただきたい、とのお言葉をいただいております。
カナダ保健省(Health Canada)突撃リポ
前月号でカナダ保健省訪問に少し触れました。訪問の目的は何かというと、厚生労働省科学研究「医療用麻薬の乱用リスク要因の分析と適正使用促進のための研究」の研究協力として、カナダにおける麻薬乱用実態(とオマケで嗜好用大麻の解禁)に関する公衆衛生学的事案についての学術的事情聴取でございました。米国同様カナダでも麻薬依存が社会問題となっており、ここ3年間で麻薬関連死亡者が1万人以上に上ります。また、昨年10月から嗜好用大麻が解禁となり、カナダでいま何が起こっているのか、また、政府として公衆衛生学的にどのような取り組みをしているのかをサブのお仕事として教えてもらいに行っていたわけです。ここでもまたカナダ人の実直なお仕事ぶりに感銘を受けたのでありますが、内容のご報告はまた別の機会に、別の媒体を通じてさせていただきましょう。痛みの社会的側面と向き合う際に、麻薬や大麻の問題は外せないので、大変良い勉強になりました。また、厚労省勤務の際に、自分の専門外の食品部門に意図せず配属になったからこそ、日本大使館や関東の先生方とのご縁を得て今回のインタビューに至った流れにも運命的なものを感じており、現在の暮らしがこの先またどんな流れに合流するのかとワクワクが止まりません。
オトナの留学
私に限らずアラフォー医師のオトナ留学組は、知識や経験を自分のために吸収するだけでなく、自分の専門領域を通じて今後いかに社会貢献につなげるかという発想を若い時よりも強く持つ余裕があり、そうした目的意識があるからこそ、それぞれの皆さんが後ろ盾を得て国外に出られているという印象があります。ちまたでは結婚しようと思った時が結婚適齢期なんだそーですが、同様に留学しようと思った時が留学適齢期なんだと思います。オトナの留学を支援する仕組みももう少し充実してほしいところです。
奮戦はまだまだ続く
さて、人生初の6号連載コラムにお付き合いをいただきありがとうございました。私の留学はまだ期間途中で、総括の言葉で締めくくりたくない気分です。どうかこの先末広がりの留学となりますように。最後にこのような機会をくださった編集部の方々、日々SNSで私を励ましてくれる日本の皆さん、救援物資の乾物や酒のさかなをトランクいっぱいに詰め込んで時折モントリオールにやってきてくれる援軍たちに深謝申し上げます。
山田 恵子(本名)Keiko Yamada
McGill大学心理学科ポストドクトラルフェロー
日本学術振興会海外特別研究員
山田 恵子
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