記事・インタビュー
医師のSNS利用や活用法についての対談企画、第1弾。
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSは今や多くの人々のライフスタイルに溶け込み、SNSのアカウントを持っている医師も少なくないと思います。
そこで今回は「医師とSNS」をテーマに、SNSやデジタルマーケティングにも詳しい水野 篤先生(聖路加国際病院)に、現在Twitterフォロワー数1万人以上でブログも大人気の伊田 瞳先生(昭和大学)と、医師がSNSを利用する際の注意点や活用方法、フォロワー数の増やし方など、SNSの利用についてさまざまな内容で対談していただきました。
「医師が知っておきたい、SNSの活用法」
››› 第2弾:けいゆう先生×水野 篤先生
コミュニケーションツールから情報発信ツールへ
水野:僕が最初にSNSを使ったのは2010年ごろで、ミュージシャンの友人達とのコミュニケーションツールとしてFacebookを始めました。それがFacebookの友達申請をきっかけとして高校の同級生と連絡を取るようになるなど、同窓会のようなノリがありましたね。伊田先生がSNSを始めたのは何がきっかけですか?
伊田:私の場合は、大学に入ってからも高校の友達と繋がっていたかったので、高校卒業時に友達とmixiを始めました。後からFacebookやTwitterが登場してくるのですが、それらもmixiの延長線みたいな感じで始めて、最初は友達との繋がりや、大好きなハムスターの写真を見るだけのプライベートなSNSとして利用していました。
水野:伊田先生のTwitterは現在フォロワー数が1万人以上と人気ですが、Twitterをプライベートなものとしてではなく、情報発信用に始めたきっかけは何だったのでしょうか?
伊田:2018年に昭和大学の「睡眠医療センター」へ赴任したとき、センター長からHPを作ってほしいと頼まれ、その際、「Twitterでも情報発信をしましょう」と提案をしました。そこで、それまでTwitterでつぶやいていた10年分のデータを消去し、「睡眠医療センター」の情報発信のためのTwitterとして再度始めたんです。
水野:元々は伊田先生が個人的に使っていたTwitterアカウントをそのまま「睡眠医療センター」の情報発信用にしたんですね。ちなみに、Facebookでも「睡眠医療センター」の情報発信はしていますか?
伊田:はい。HPを作った際にお世話になった方から「プロモーションをするならFacebookでもした方がいい」とアドバイスをもらい、こちらも個人でやっていた10年くらいのデータを全部消して新しく「睡眠医療センター」の情報発信用に始めました。
水野:SNSはTwitterやFacebook以外にもInstagramやYouTubeなどがありますが、それらは情報発信用として利用されていないのですか?
伊田:Instagramもしていますが、こちらは100%個人の趣味でやっています。私は文章で発信していくほうが得意ですし、Instagramは利用者層が若く、我々30、40代との相性は良くなさそうだなと思っていて(笑)。YouTubeに関してはノウハウを知らないのでやっていません。ただ、YouTubeを本格的にやっている医師がいないので、これをやればパイオニアになるのではと思います。
水野:動画は編集作業が大変で、時間と体力も必要になりますからね。自分の性格や生活スタイルに合ったSNSで情報発信してくことは、継続するという意味でも大切なことだと思います。
フォロワーを増やすために「武器となるコンテンツ」を発信
水野:「睡眠医療センター」の情報発信用にTwitterを始めて、ツイートの内容はどのように変わりましたか?
伊田:ツイートする内容は大きく分けて、①「育児ネタ」、②「ワーキングママとしてのキャリアやワークライフバランス」、③「医学ネタ」の3つになります。
水野:①、②、③のツイートの割合はどのくらいですか?
伊田:最初のころは同じくらいの割合でしたが、その後①と②を多くしました。そうした内容がフォロワーさんや世間から大きく求められていますし、③の「医学ネタ」については神経を使いますからね。
水野:「睡眠医療センター」の情報発信を目的としたTwitterであるのに、ツイートのほとんどの内容は睡眠に関してではないですよね。それはなぜですか?
伊田:2018年に「睡眠医療センター」の情報発信用として始めたとき、新人医だった私には、睡眠に関して「武器となるコンテンツ」がなかったんです。そこで自分の武器となるウリは何かなと考えて、①「育児ネタ」や②「ワーキングママとしてのキャリアやワークライフバランス」についてのツイートをあえて多くしました。
水野:なるほど。もしTwitterなどを広報目的で使用するなら、目的に沿ったど真ん中の強いコンテンツを持っていない人は、まずは自分の強みや得意分野である内容を発信して注目を集めたほうがいいということですよね。
伊田:はい。「睡眠医療センター」を広くみんなに知ってもらうには、自分自身が有名になる必要がありましたし、それには自分の強みや得意分野の内容をツイートして注目を集めた方が効果は高いと思いました。
“炎上”の予防策はまず組織人であることを意識すること
伊田:Twitterでは、あえて「睡眠医療センター」のHPのリンクを貼っていませんし、昭和大学病院の名前も出していません。Twitterは爆発的な拡散力があるため、拡散されてほしくないものも拡散されてしまうという特徴があるので、万が一そうなった場合、「睡眠医療センター」に影響が及ばないようにするためです。Twitterを見た人があえてワンポイントの手間をかけないと、「睡眠医療センター」のHPに辿り着かないようにしています。
水野:普通、HPへのクリック率やアクセス数を増やそうと思ったら、直リンクを貼ったほうがいいですよね。そうではなく、拡散力の強いTwitterでは一旦手間をかけさせて検索させることで、本当に睡眠に困っている方を選別するという役割もあるわけですね。
伊田:はい。それに万が一“炎上”してしまったとき、直リンクや昭和大学の名前があると、組織にも大きな被害が及んでしまいますから。“炎上”したら、私がトカゲのしっぽ切りになればいいんです。
水野:これはとても重要な話で、SNSを利用する際に組織に所属しているという意識が欠けている人が多いですよね。自分が有名になれば組織のメリットになりますし、その逆で、自分の“炎上”が組織の“炎上”にもなりうるということもありますから、医師がSNSをする際は、そうした両軸で回しているという意識が非常に大切なことだと再度強く心に刻みます。
<プロフィール>
伊田 瞳、水野 篤
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