記事・インタビュー

2019.09.20

EMA festival!開催報告(インタビュー編)渡瀬先生

救急医学の発展のため、ER型救急に従事する医師たちで構成される非営利団体EM Alliance(以下、EMA)が発足から10年を迎えたことを記念し、全国の救急医が一堂に会するイベントとして「EMA festival!」が2019年8月3日(土)・4日(日)の2日間にわたり、横浜労災病院で開催されました。EMAの創設メンバーとして今もなお相談役として支えていらっしゃる先生方の講演をはじめとした多くのプログラムに約150名の参加者が集い、イベントは大盛況に終わりました。

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今回は、EMAの設立当初のコアメンバーである渡瀬先生にインタビュー取材を行い、ご経歴やEMAとのかかわり、そして現在の活動内容などを伺いました。

ワシントン大学での業務

ER管理・オペレーションをメインに、シフト勤務をしながらレジデントやスタッフを対象にした気道管理のワークショップなどの教育を行っています。研究業務は必須とされているため、研究を続けながら、これらの業務に取り組んでいます。そのほか、新しいプロジェクトとして待合時間の改善など、病院内の業務効率化にも関わっています。

ワシントン大学でプロジェクトを立ち上げるには、医師はまず病院の上層部に新規プロジェクトの提案を行います。そして承認されれば病院から資金が提供され、プロジェクトを実行する流れになります。承認を得るためには常に問題意識を持ち続け、解決のためにはどのような提案をすべきか考える、能動的な姿勢が求められます。

救急医を目指したきっかけ

医学生の時は外科医を目指していました。しかし身近にロールモデルとなる先生が存在せず、勉強会では必然的に内科系の医師との関わりが増えていき、次第に内科系に進もうと考えるようになりました。そして、内科系から循環器、感染症、総合内科、救急科を検討していくうちに、研修で救急の当直を経験したことや、講演会に参加した時に強く興味を掻き立てられたことで、救急の道を志しました。

EMA立ち上げから活動の広がり

私と志賀 隆先生で「若手救急医が支え合えるようなネットワーク」を立ち上げようと考えたことがきっかけです。まずはお互いに交流のある医師に声を掛けたことで徐々に人が増え、2009年に盛岡で開催された学会(通称:わんこそば学会)で、組織としてどのように活動していくか構想を考えたことからEMAがはじまりました。

EMA立ち上げ当初は優秀な医師たちが率先して活動してくださったおかげで、苦労というものはあまり感じませんでした。EMAという新たな組織を運営していくなかで、過去には意見の食い違いから衝突もありましたが、現在はメンバー同士、良い関係を築いています。また、コアメンバーには個性的な方が多く、EMA組織内でそれが良い方向に活かされ、自然と役割分担ができていきました。現在までに、研究班・教育班・WEB班・ミーティング班・小児班・代表・幹事など、さまざまな立場で各メンバーが活動しています。

2019年現在、約3,000名の会員が所属しています。正直なところ、これほど大きな組織になるとは思っていませんでした。救急医以外の初期研修医の先生も「ネットワークづくり」や「勉強の場」として参加いただいているので、まだまだ伸びる可能性を感じています。救急医だけに限定していたら、ここまで集まることはなかったと思います。

私たちは、たとえEMAに参加いただいた先生方が救急の道を選ばなくても、救急に対して理解を示してくれる医師が1人でも多くなればと願い、EMAの活動を続けています。さらに、EMAの組織自体が和気あいあいとした雰囲気で勉強会を行い、互いの知識を共有しようと進んで努めていることも、多くのメンバーが集まるきっかけになっていると考えています。

帰国後に取り組みたいこと

来年度から藤田医科大学病院の救急科で勤務する予定です。日本での医療の必要性を考慮し、医療の質を高め、患者さんが何を求めているか、大きく二つの方向で取り組んでいきたいと考えています。

一つ目は「救急医療システムの見直し」です。
救急医療は一つの病院だけでは完結しないので、地域における救急医療システムの役割が重要になってきます。今のシステムが長年変わらないことには疑問を感じていますし、患者さんのニーズや時代の流れに合わせて救急医療システムを見直し、効率化や制度の透明化を図ることが必要だと考えています。

二つ目は「特定医療のセンター化」です。
アメリカの病院に勤務して実感したことは、概して医師の疲弊度が日米で異なる点です。人口当たりの医師数は日米ともに変わりはありません。アメリカでは大規模病院が多く、関わるスタッフの数も多いのですが、日本の場合は比較的小さな規模で少人数体制で運用している病院が多く、場合によっては一人体制のこともあります。そのため、どうしても医師一人ひとりの待機時間が長くなり、かかる負担が大きくなってしまいます。

医師の負担を軽減するためにも、外傷、脳血管障害、心臓血管外系など疾患が明らかなものに対しては機能を集約・センター化して効率化を図ることで、手術件数とともに手術成績が向上し、安全性も高まると考えます。

これらを実現するにはさまざまな課題があるかと思いますが、現在の医療のあり方を見直し、「患者さんが求めている医療」「医療が将来どうあるべきか」について改めて必要性を問いかけていきたいと思います。

若手医師、医学生に伝えたいこと

自身のキャリアの方向性を見極めるなら、所属している集団から一旦離れて、外の世界を見てみることが大切だと思います。長い目で見たら1年・2年という期間は大したことありません。私自身、医学生の時に4ヶ月間アメリカの病院でインターンを経験し、それが今のキャリアにも影響を与えています。

また、留学に関する海外医師とのコネクションづくりについては、学会で知り合うのが悪いとは言いませんが、時間が限られているため、満足に話せないのが実情だと思います。そのような場合は、海外の医師が大学病院などに招待され来日した時が、自身をアピールするチャンスだと思います。学会に比べて滞在期間が長いので、よりコネクションがつくりやすいですし、日本の医師に対してもある程度理解があると考えられます。

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<プロフィール>

渡瀬 剛人(わたせ・たけと)
ワシントン大学
ハーバービュー・メディカルセンター 救急科

父親の仕事の都合でニューヨークに生まれ、13才まで過ごした後、イギリスで高校を卒業。その後日本に帰国し、2003年に名古屋大医学部を卒業。海南病院での初期研修を経て、名古屋掖済会病院の救急科に2年間勤務。2007年に渡米し、オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)の救急レジデントを開始(最終的にチーフレジデント)、レジデンシー修了後はED Administrationのフェローシップを修了、MBA取得。2012年よりワシントン大学の救急スタッフとして勤務。

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