記事・インタビュー

2019.09.19

International SOSが求める医師像(3)

 

医師としてグローバルな環境で働く International SOS Japan

医師免許が必要な職業は、医療機関以外にも外務省医務官、厚生労働省の医系技官、製薬会社で働くメディカルドクターなどさまざま存在します。今回は「海外医療と渡航安全の統合ソリューション」を提供し、その領域のリーディングカンパニーであるInternational SOS Japan(以下Intl.SOS)でメディカルダイレクターとして勤務されている医師の葵 佳宏先生にお話を伺いました。Intl.SOSの業務内容や、葵先生がIntl.SOSで勤務されることになった経緯、そして医師採用に際しての求める人材像などを3回にわたりお伝えします。

医師が海外で働くことについて

医師が海外で働く方法は多岐に渡りますが、主に以下があります。

  • 外国の医師免許を取得し、現地の医療機関で働く
  • 外務省医務官
  • 国境なき医師団などのNGO団体
  • 国際緊急援助隊医療チーム
  • WHOなどで公衆衛生の専門家として働く
  • 海外の研究所でリサーチャーとして働く

医学部卒業時、外国の医師免許を取得して勤務することは考えていませんでした。むしろ、「自分の根を張る」という意味で、日本でしっかり経験を積み、専門性を極めたいと考えていました。専門性とユニークなスキルがなければ、海外へ行っても通用するわけがないと思っていました。

その後、航空医療も経験してから、Intl.SOSでキャリアを積むことになりますが、医療機関以外で働く医師は皆、「病院という枠組みを出たら、医師としてのアイデンティティがどこにあるか」と悩みます。企業に勤務することで環境が一変し、戸惑いを感じる場面に多く遭遇します。「医師と患者」から「お客様へのサービス業(カスタマーサービス)」へと関係性が変わり、多種多様なリクエストに応えなくてはいけません。そこでは、医学だけでは収まりきらない、理不尽な要求も時には出てきますし、下手に出ないといけない面も出てきます。経営側の考えや、お金を払う側の考えがどのようなものか、サービス業とはなんなのかを強く認識させられました。

東京アシスタンスセンターで行われる他業種間の会合

そのような(医師が一番苦手とする)社会人的な要素を嫌でも学ばないといけないところが自分自身に合うか合わないか、最初のころはかなり戸惑うと思います。医療機関にいるうちは医師がピラミッド構造のトップかもしれませんが、一旦医療機関を出ると、さまざまな職種の人たちとインタラクションし、こちらから企業へ赴くこともあります。私自身はそのような点を学べたことがよかったですし、現在の業務を行う上での経験となっていると感じています。

 

専門医資格の維持は可能か

新専門医制度で状況は変わってきています。まだ流動的な部分がありますが、今後、資格の維持は難しくなってくると予想しています。

企業の総務部や人事部向けの渡航リスクセミナー

捉え方にもよりますが、専門医は結局、国家資格ではなく、各学会が認定している資格でしかありません。法的根拠のもとに認められている資格は、「医師免許」(医師法)以外では、「麻酔科標榜医」(医療法)、「母体保護法指定医」(母体保護法)、「精神保健指定医」(精神保健福祉法)、「産業医」(労働安全衛生法)と限られています。もちろん、臨床に直結する資格を維持するのも大事なことですが、渡航医学や産業医学など、これまで自身が認識をしていなかった分野も今は非常に大事だと感じています。

Intl.SOSが求める医師像

シンガポールアシスタンスセンター 医療チーム

1つ目は、専門医資格を持ち、堅実に臨床経験を積んだ医師です。若く経験が少ない医師は臨床に未練があり、継続的な勤務が難しい傾向があります。臨床でやれることを最大限習得するだけでなく、面談の仕方や、紹介状の書き方、紹介先の選定など、病院や地域連携システムの知識も大いにコーディネーティングドクターには求められます。

これらをくまなく経験し、これから他分野にも進出していきたいと考える30代後半~40代、医療機関でも中堅クラスで、自分の判断ができる方に来ていただきたいです。そして、あくまで私の考えですが、専門科に関しては内科、外科、産婦人科、小児科、救急科の方が対応しやすいと考えています。また、患者さんの問い合わせ・相談が多岐にわたるため、どの専門医であってもプライマリ・ケアの知識、最低限の救急知識(コードブルーの対応で、ファーストエイドも含む電話指示をすることもあります)は必要であると考えております。

シンガポール時代、同僚のコーディネーティングドクターと

2つ目は英語力です。日本勤務か海外勤務かによっても求められるレベルは異なります。日本で働く場合は8割が日本人、残り2割が外国人の対応になります。最低限、医学的な内容を聞き取れて、それについて応対ができること。会社内の公用語は英語ですので、円滑なコミュニケーションが取れ、なおかつ自分の主張ができるくらいの英語力が求められます。

業務を行う上で大切なのは、「最大公約数的にコーディネーションができるスキル」です。各国の医療水準、患者さんの状態、搬送のタイミングなど、最適の選択肢をコーディネートするため、フットワークが軽くフレキシビリティのある方に適任な業務だと感じます。

採用までのプロセス

面接回数は決まっていません。まずは、英文履歴書を送っていただき、経歴、臨床経験などを確認し、電話面談を行います。もし興味があれば、実際に社内を見学していただくこともできます。そして面接では、「今後、医師としてどのようにしたいのか」「なぜIntl.SOSに入社したいのか」などの質疑応答を行います。さらに、英語力の見極めのために私の上司による面接を受けていただき、人事面接を経て、最終的な採用の判断をいたします。

東京アシスタンスセンター

日本勤務であれば、International SOS Japanでの採用判断となりますが、入社後、能力がある方であれば海外で活躍できるチャンスもあります。むしろ自分でその道を切り開いていくものと考えて頂きたいです。実力があり言葉を操ることができれば、より広い地域を管轄するInternational Coordinating Doctorへの役職につくことも可能です。航空搬送に携わりたければ、それも自分のやる気次第です。採用側として、その人が2、3年後にどのようなポジションに就いているかということも見極めながら採用活動を行っています。

採用予定人数

フルタイム社員:若干名
パートタイム社員:最低でも月5、6日以上出勤できる医師。
※いずれも、約2ヶ月間のトレーニングが必要です。一人前になるまでに半年~1年かかります。

働く環境

東京アシスタンスセンター 東京医療チーム

Intl.SOSでは、IT Solutionを活用し多様性のある働き方を実現しています。特に、夜間や週末のシフトは自宅からのリモート勤務も可能です。また、時差を利用してコールを一部海外で取るなどし、24時間体制で稼働しています。シフトは事前に希望を提出してもらい、3ヶ月前に組み上げるように心がけています。国による祝日が異なるため、シフトを融通し合える点や、調整により長期休暇も取得可能で、メリハリをつけて業務を行っています。完全引き継ぎ制を敷いているため、時間外勤務は基本ありません。そのため子育て中の医師でも、計画が立てやすい職場環境だと言えます。チームで支え合いながら、家庭も仕事も両立して頂きたいです。私が一番自慢できることは、全員有給消化できていることですね。

海外では医療機関外で働く医師も多く存在しますが、日本ではまだまだ浸透していません。病院外でも活かせるスキルであることを知って頂きたいです。

社員の声

Intl.SOSでは「Equal-opportunity」「Diversity」を重視し、スキルと適正を見極めた上で採用活動を行っています。ご興味のある医師の皆さん、ぜひ一緒に働きましょう。ご連絡お待ちしております。

 

<プロフィール>

葵 佳宏

葵 佳宏(あおい・よしひろ)
International SOS Japan メディカルダイレクター

2002年に琉球大学医学部卒業後、武蔵野赤十字病院で初期研修を修了(2002-2004)。横浜市立大学で麻酔・救急の専門研修を経て、2011年から沖縄県の浦添総合病院でドクターヘリのフライトドクターとして救急・総合診療に従事する。
2014年よりInternational SOS本社(シンガポール)にて医療搬送、メディカルアドバイザー業務および在外邦人の健康相談に携わる。2016年より現職。

 

キャリアチェンジを考えられている先生は 「民間医局」へご相談ください。

 

医師としてグローバルな環境で働く International SOS Japan

  1. (1)International SOSで勤務するきっかけ
  2. (2)International SOSの業務内容
  3. (3)International SOSが求める医師像

葵 佳宏

International SOSが求める医師像(3)

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