記事・インタビュー

2018.05.21

【Doctor’s Opinion】日曜日に1時間掛けて診察する意義

公益財団法人慈愛会
会長

納(おさめ) 光弘

 私は、日曜日と木曜日の午前中に予約外来を行っています。きっかけは、鹿児島大学病院の内科教授(一時病院長)を務めていた時、「百貨店は日曜日に営業しているのに、同じサービス業の大学病院が日曜日に診療しないのはおかしい、私は日曜外来を開始したい」と提案したことでした。皆に賛成してもらえると思ったが、実際には真逆で、「殿、ご乱心くださいますな。病院長が外来をするとなると、看護部門、事務部門、検査部門も出勤せねばならず、そんなこと不可能で、絶対にだめです」とのことでした。

鹿児島大学病院では実行することができなかったのですが、約10年前に鹿児島大学を定年退職して、公益財団法人慈愛会に奉職したのを機会に、実行に移すことにしました。幸い、理事長の理解とサポートを得て、日曜日の外来をスタートすることができました。日曜外来はとても好評で、予約が3ヶ月先まで埋まるほどになりました。そのうち、患者様の中には、日曜日よりはウイークデーの方が受診しやすいとおっしゃる方も少なからず存在することに気付き、木曜日にも予約外来をすることにしました。これは、日曜外来の混雑緩和にも役立ちました。

私がこの外来を実施している今村総合病院では救急・総合内科(ER)がとても軌道に乗っていて、休日の検査体制が整っていたことも、日曜外来を行いやすかった要因の一つであったと思います。365日24時間体制のERがあるのなら、私の日曜外来の意義があるのかと疑問視する方もあるかと思いますが、もちろん大きな意義があるのです。

ERは救急患者に対応していますが、私の日曜外来は、あくまでウイークデーの診療と同じレベルの診療を日曜日にも提供するというもので、しかも、新患の患者様には一人1時間かけて相談に乗ることをモットーにしています(木曜日の予約外来でも新患には1時間掛けています)。最近、新患は紹介状持参を予約の必須条件にしましたが、予約が減ることもなく、紹介率、逆紹介率のアップに繋がっています。

ここで、これまでの私自身の流れを振り返ってみたいと思います。私は鹿児島大学の病院長の時、新しい病棟の建設を目指し、文部科学省と精力的な交渉をしたのでしたが、なかなか思うようには進展せず、疲労困憊の揚げ句、血圧も高くなり、ついには病院長を辞任して、病気療養のため懇意にしていた内科の病院に4ヶ月間入院させてもらうことになりました。自分自身が患者として入院生活をする中で、患者の視点でいろいろのことを考えるという、貴重な体験をすることができました。冒頭で述べた日曜外来の発想もこの時の経験に基づき、患者様の視点での発想だったのです。

私が鹿児島大学を定年退職して、現職の公益財団法人慈愛会の会長に就任した当初より、全ての病院・施設を巡り、皆さんに言い続けてきたことは、患者様の目から見て、日本一の病院にしましょうという、メッセージでした。規模の面では、もっと大きな病院が日本中にありますが、私たちの病院・施設を訪れた患者様が「こんなに心のこもった病院は、ここしかない」と感じてもらえたら、それこそが「患者様の目から見て日本一」なのです。

最後に、今回のテーマの予約外来のもう一つの話題を取り上げたいと思います。最近、痛風の相談でみえる患者様がとても増えてきています。というのも、私自身が、鹿児島大学病院長の時に文部科学省との交渉がうまくゆかないストレスから、ストレス由来の高尿酸血症になり、痛風発作を体験した患者でもあるのです。せっかくの痛風患者になった体験を活かして、いろいろの臨床研究を行い、『痛風はビールを飲みながらでも治る!』という本を小学館文庫から出版したところ、これがベストセラーになり、インターネットで「痛風、鹿児島」で検索すると、一番目に私の名前が出てくるとのことで、私の予約外来に痛風の相談でみえる方が増えてきている状況です。同じ痛風患者同士ということもあり、私にとって、予約外来での楽しみの一つとなっている次第です。

以上、私の日曜日を含む予約外来を紹介させてもらいました。

おさめ・みつひろ

1966年九州大学卒業、聖路加病院シニアレジデントを経て鹿児島大学第三内科へ。東京大学薬理学教室からメイヨークリニック神経科へ留学、新しい脊髄疾患である「HAM」を発見。1987年鹿児島大学第三内科教授、大学病院院長を経て2007年より現役。
著書に『痛風はビールを飲みながらでも治る!』。

 

※ドクターズマガジン2018年3月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

納 光弘

【Doctor’s Opinion】日曜日に1時間掛けて診察する意義

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