記事・インタビュー

2019.12.04

T&Aマイナーエマージェンシー(静岡コース)

一般社団法人プライマリケア外科診療研究会が主催する「T&Aマイナーエマージェンシー(静岡コース)」を取材してきましたので、その様子をご紹介します。

<本セミナー開催の趣旨>
T&AとはTriage & Actionの略で、「動きながら考える」をモットーに、救急初療を学ぶコースです。これまでに、成人版T&A、プライマリケア版T&A、小児版T&Aなどが開発され、開催されてきました。T&Aマイナーエマージェンシーはそれらのコースの弟分にあたり、主に救急外来で出会う軽症外科疾患を、それらを専門としない医師でも適切に緊急度を判断し、対応できるということを目標としています。

それを可能にするために、各領域の専門家の先生と相談しながら、明日からすぐに使えるオリジナル診療アルゴリズムをまとめました。また、少しでも楽しみながら多くのことを吸収できるように、講義形式に加えてシミュレーション形式も取り入れています。コースの随所での参加者同士の対話を通じて、日々の診療で遭遇する疑問や悩みを共有・解決し、ともに成長することを目標としています。

開催概要

日時:2019年10月27日(日)
場所:国立病院機構 静岡医療センター
コーディネーター:木村 慶先生(国立病院機構 静岡医療センター 循環器内科)

<背景・概要>
外科系医師でなくとも救急外来等で外科系疾患の初期診療を担当することは多く、各専門科への紹介前に適切な初期診療を行うことで予後を改善することができたり、適切な紹介のタイミングを知ることで円滑な診療を行うことができます。しかしながら、これらの知識を系統立って学ぶ機会は少ないです。
そこで、眼科・耳鼻科・整形外科・皮膚科領域の疾患の中から、救急外来での遭遇頻度が高いものと、見逃したり初期診療を誤ると問題となる可能性が高いものをピックアップし、「明日から使える!」をテーマに、minimal&essentialな初期診療の方法をまとめました。

<主な対象と目的>
●眼科・耳鼻科・整形外科・皮膚科領域の救急疾患を学び始める人の土台作り
●全科当直などでの対応力の向上を目指す人の速習
●眼科・耳鼻科・整形外科・皮膚科領域の診療から遠ざかっていた人の知識のブラッシュアップ

<目標>
このコースでは講義とロールプレイを通じて、以下の2点について学習もしくは再認識することを目標としています。
1.緊急度を適切に把握し、専門科への相談の必要性やタイミングを判断できる。
2.簡単な処置ののち自宅での経過観察が可能な軽症例のマネージメントを地域・組織の現状に合わせて行うことができる。

<コース内容>
0)トリアージ
1)眼表面異物
2)鼻出血
3)外耳道異物
4)軽度熱傷
5)動物咬傷
6)手をついた
7)足をひねった

スケジュール

9:00~9:10(10分)開会挨拶・イントロダクション

木村 慶先生(国立病院機構 静岡医療センター)、松原 知康先生(広島大学 脳神経内科)

9:25~10:00(35分)眼科講義眼科/ロールプレイ(1症例)

宮阪 英先生(医療法人 紫苑会 藤井病院)

10:10~11:20(70分)耳鼻科講義/耳鼻科ロールプレイ(2症例)

講師:手島 隆志先生(医療法人 同愛会 小澤病院)

13:00~13:50(50分)皮膚科講義/皮膚科ロールプレイ(1症例)

宮崎 紀樹先生(東京都立墨東病院)

14:00~15:10(70分)整形外科講義/シーネ固定デモ/整形外科ロールプレイ(1症例)

海透 優太先生(JCHO若狭高浜病院)、手島 隆志先生(医療法人 同愛会 小澤病院)

登壇者インタビュー

左から海透先生、宮崎先生、木村先生、松原先生、手島先生

左から元プロボクサー自閑先生、宮阪先生、木村先生、海透先生

木村 慶先生(静岡コース コーディネーター)

金沢大学卒業 医師9年目
初期研修、後期研修を宇治徳洲会病院、静岡県立総合病院を経て現在の静岡医療センターへ。

Q:T&Aマイナーエマージェンシーを知ったきっかけは?

初期研修の1年目に成人版T&A、2年目に小児版T&A、それ以降宇治徳洲会病院では小児版T&Aを毎年行っているためインストラクターで参加していた。マイナーエマージェンシーは、去年宮阪先生の紹介で東京コースに参加して、静岡でもやりたいと思いインストラクターの先生方を集めていった。

Q:準備期間・インストラクター集め・集客は?

構想から含めると半年くらいですね。インストラクターで15名お願いしています。4、5名は参加してますが、それ以外の先生は初めてです。集客は静岡県内の病院にポスターで告知したら、大半は集まりました。

Q:今後の展開として

今後は静岡で成人版T&Aや小児版T&Aも開催したいなと思います。

手島 隆志先生

京都大学卒業 医師14年目
初期研修を飯塚病院、その後京都で整形外科医を目指し、現在は小田原市の小澤病院で働いている。

Q:T&Aコアメンバーになったきっかけ

当コースに参加していたとき、T&Aの整形コースを作りたいという希望もあり、マイナーエマージェンシーのメンバーになりました。今は年に3、4回インストラクターとして参加しています。

Q:なぜこの活動を続けているのか?

専門は整形外科ですが、自分自身が幅広く診療できるよう状態をキープしておきたいですし、整形外科のすそ野を広げていきたいと思ったからです。

Q:今後の展開として

T&Aマイナーエマージェンシーはとてもいい研修なので、各地で自立してコースが開催できるようになるといいかなと思います。私はそれを微力ながら支えたいと思います。

宮崎 紀樹先生

京都大学卒業
初期研修は名古屋で行い、その後墨東病院の救命センターで循環器を専門として勤務。

Q:T&Aコアメンバーになったきっかけ

最初は2、3年前オブザーバーで参加して、それ以降、東日本を中心に参加させてもらってます。
コアメンバーのなかでは一番の新参者です。

Q:なぜこの活動を続けているのか?

各地域で素敵な先生方と出会えるからです!
あとコアメンバーも。とにかく楽しいです(笑)

Q:今後の展開として

今日のような成功例をもとに、シミュレーション教育を全国各地に広めたいです。

宮阪 英先生

岡山大学卒業
宇治徳洲会病院で救急と総合内科を行い、6年前にポニョの舞台で有名な福山市鞆の浦の藤井病院へ赴任。現在は同病院の院長、福山市医師会理事。

Q:T&Aコアメンバーになったきっかけ

2009年に初めてT&Aに参加し、そこから4つ(ER、プライマリケア、小児、マイナーエマージェンシー)とも全てインストラクターとして携わるなかで、コアメンバーとなったきっかけは3つあって、「なんと言っても楽しい」、「シミュレーションコースは自由度が高い」、「インストラクターをすることで自分自身も勉強になること」です。

Q:なぜこの活動を続けているのか?

私もさまざまなセミナーや勉強会に参加してきましたが、T&Aのように系統的に教えてもらえるコースはあまりなく、自分一人で助けられる患者さんは限られているので、このような教育を通じて多くの研修医に学んでもらい、多くの患者さんのためになればいいなと思い、この活動を続けています。

Q:今後の展開として

T&Aはとても勉強になるので4年前から地元福山でもマイナーエマージェンシーを開催し、今では小児コースも行っています。また福山市の医師会での活動しているので、開業医の先生方にも復習の意味も込めて参加していただき易いような研修も行っていきたいと考えています。

海透 優太先生

初期研修は宇治徳洲会病院で総合内科、救急、整形外科とフレキシブルに勤務。学生のときから「高浜町のために医療をする!」と決めており、現在は若狭高浜病院で整形外科と総合内科を専門として勤務。

Q:T&Aコアメンバーになったきっかけ

関西でT&Aを行う際、コアメンバーの宮阪先生から声を掛けていただきました。私自身、学生のACLSの活動代表も行うなど「お祭り男」だったこともあり、インストラクターをすることに特に抵抗はなかったです。

Q:なぜこの活動を続けているのか?

T&Aマイナーエマージェンシーで行っているセミナーは、世の中のニーズ(医師も患者さん両者)に応えていると感じているからです。今日のセミナー参加が、間違いなく参加者の明日からのアクションを変えていると思います!

Q:今後の展開として

開催回数を増やすこと、そのためのご当地のインストラクターを増やしたいと思っています。そのための私たち(コアメンバー)の課題は、インストラクターを育てることです。
未来はとても明るいと思います!

松原 知康先生

広島大学卒業
初期研修は麻生飯塚病院、その後、広島大学 脳神経内科。

Q:創設したきっかけ

専門科に進んでからも、日々の診療の中で内科以外の軽症外科診療に遭遇する機会が多かったということがコースを継続的にやっていこうと思ったきっかけです。この領域を体系立てて学ぶ機会が今までなかったので、せっかく勉強するのならば、皆で経験を持ち寄って学べたら、より楽しく・より定着できるのではないかとワークショップ形式で企画しました。

Q:T&Aマイナーエマージェンシーの特徴は?

とにかく手を動かすことです。せっかく会場に集まっているのでできる限り全員に手技を体験してもらえたらと思っています。講義を聞いてできるようになった気がしたけれども、実際に手を動かしてみると意外とできなかった(だから実際に体験しながら学ぶというのが大切!)という感想を多く頂いております。
もう一つの特徴は、質疑応答の時間が60分とたっぷり確保してあることです。各科の専門家の先生にも参加していただいているので、みんなで十分に意見交換を行い、疑問を残さず帰ることができるようにしています。

Q:今後の展開として

ニーズがあるところならば全国どこでも開催したいと思っています。そして、できれば単回のイベントで終わるのではなく、その後その地域で継続的に開催し、文化として根付くようになればいいなと願っています。ご興味を持っていただけましたら、お気軽にお問い合わせください。


今後のセミナー開催はこちらからご覧ください。
ホームページ:http://minoremergency.club/
Facebook:https://www.facebook.com/TandAminoremergency/

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