記事・インタビュー

2019.06.17

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(6)

ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。

ドイツでの医師の働き方

今回はドイツでの医師の働き方について気が付いた点を挙げてみます。全体として「かかりつけ医制度」「専門制・分業制」「効率化」が進んでいて、休暇もしっかり取ってしっかり働く、ということを感じます。

開業医・家庭医

基本的には予約制で、かかりつけ医制度(医療の分業制)が進んでいます。患者さんはまずはかかりつけ医のいる診療所で受診し、症状に応じて検査専門のクリニック、あるいは総合病院や大学病院に紹介されたりします。分業制が浸透していて診療所の設備も限られているため(レントゲンもなかったりします)、かかりつけ医側もそこで広く診断や治療をカバーしようという感じはありません。そのためか分かりませんが、日本の外来診療に比べて圧倒的に時間にゆとりのある雰囲気を感じます。金曜の午後から土日は休みで、その間の急患は救急病院が担当します。

以前大学病院に勤務し、現在開業している先生の中には、週1程度大学病院に来て、ご自身でカテーテル治療を行う方もいます。

大学病院

大学病院で受信する患者さんは2パターンで、「家庭医や総合病院からの紹介」もしくは「救急搬送」です。私が所属している循環器内科には病棟が4つ、集中治療室が1つあり、一病棟につき病棟医(Assistenzarzt)が3人グループで常在しています。そして予定入院や緊急入院患者(1日10人以上の時もあります!)の病状説明や検査手配などを行いつつ、その病棟担当の上級医(Oberarzt)と相談して治療方針をします。毎朝カンファレンスを行い、ルーチン業務である入院の簡単なプレゼンに加え、複雑な症例をピックアップしてボス(Chef)に治療方針を伺います。なお、日本とは異なり、「公的保険の患者の病棟」と「プライベート保険の患者の病棟」ははっきり分かれています。

カテーテル手術

カテーテル検査治療室は、一般的なサイズの部屋が3部屋、手術にも対応したHybrid-operating roomが1部屋、救急室に併設してあるものが1部屋あります。検査治療の基本的な流れは日本と同じですが、違いを感じるのは、
(1)効率化を徹底している
(2)上級医へのコンサルトが徹底されている
(3)(上記の一方で)現場での判断や個人個人の考え方が尊重されている

また驚くべきは、休暇の日数です。祝日とは別に、計6週間の休暇を取ります。多くの医師は1回につき1週間以上しっかりと休暇を取るようにしていますし、夏は3週間前後取る医師が多いです。システムの効率化が浸透しているためか、誰かが休むことで診療が滞るといったことはありませんし、普段の責任者(ChefやProfessor)がいなくても、その次の役職の医師を責任者として、いつもと変わりなく治療が行われます。

そして、朝は日本と同じように早くからバシッと働きますが、夕方以降はだらだら働き続けないというのが、病院でもドイツ全体でも感じることです。

ドイツ人の多くは休暇が大好きなので、「今度はどこに行くの?」「この前の休暇はどうだった?」「旅行の写真みせて」は話のネタとしてよく使います(笑)。

<プロフィール>

杉浦 淳史

杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)

1983年千葉生まれ。2008年福井大学医学部卒業。
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。

杉浦 淳史

山あり谷あり谷底あり! ドイツ留学(6)

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