記事・インタビュー
ドイツはノルトライン=ウェストファーレン州にあるボン大学で循環器内科のフェローとして働いている杉浦 淳史です。
この記事では、日本生まれ日本育ちの循環器内科がドイツでの研究・臨床留学の中で経験するさまざまな困難・葛藤・喜びを、ありのままにお伝えします。
医師免許(Approbation)取得のための書類準備
今回は、ドイツにおける医師免許取得のために私が行った準備を紹介します。ただし、これらは2018年にノルトライン=ウェストファーレン州で行ったものであり、外国人の医師免許取得(あるいは労働許可)のための「関門」は州ごとに異なること、さらに刻々と変化していることを前提に、参考にしていただければ幸いです。
さっそくご紹介すると、私が行った手続きはざっくりと以下の手順になります。
【日本での手続き】
A:必要書類の申請
B:必要書類のうち「公的書類」は外務省でApostille(証明)付与、「非公的書類」はNotar(公証人)の原本証明
【ドイツでの手続き】
C:英文書類は原本を市役所へ、日本語書類はNotar事務所に持参し、Beglaubigte Kopie(認証印が押されたコピー)を作成
D:日本語書類をドイツの認定翻訳士に翻訳してもらう(参考サイト:http://www.justiz-dolmetscher.de)
E:作成したすべての書類をBezirksregierung(行政区)に提出
最終的にBezirksregierungに提出した書類は下記16点です。(5以降はすべて認証コピー)
(1)申請書類 (Antrag auf Erteilung der Approbation)
(2)宣言書 (Erklärung)
(3)履歴書 (Lebenslauf)
(4)ドイツでの健康診断書 (Ärztliche Bescheinigung)
(5)パスポート (Reisepass)
(6)語学試験の証明書 (Zeugnis der Deutsche Sprachkenntnis Niveau B2)
(7)医師免許証(Zertifikat der medizinische Erlaubnis)
(8)医師の無罪証明(Führungszeugnis)
(9)医学部の卒業証明書(Abschlusszeugnis(Fukui University))
(10)医学部の成績証明書(Abschrift der Hochschule(Fukui University))
(11)卒後初期研修の証明書(Zertifikat der Residency Training)
(12)大学院の修了証明書(Zertifikat der Hochschulanschluss(Chiba University))
(13)大学院の成績証明書(Abschrift der Hochschule(Chiba University))
(14)循環器専門医の証明書(Zertifikat der “A board certified member of JCS”)
(15)各勤務先病院での就労証明書(Zertifikat der Arbeit)
(16)警察の無罪証明
以上を提出し、Fachsprachprüfung(医師患者面接試験)の日程が決まるのを待ちました。実は、ここでさらにドイツでの医学部教育との「同等性」を示すシラバスの提出を求められました。この「同等性」が認められなければ、さらにKenntnisprüfungという医学知識試験を受けなければなりません。従来は日本の医学部を出ていると免除されることが多かったようですが、最近は厳しくなってきているようです。
いま見返してもうんざりするステップですが、実際にかなりの「手間」と「時間」と「お金」がかかります。アドバイスとしては、少なくとも日本で発行できて期限がない書類(9〜15)は留学前に準備してNotarで原本証明まで取っておくとよいと思います。参考までに、最近改定されたHPのリンクを貼っておきます。(参考サイト:Bezirksregierung Münster – Approbation)
クリスマスマーケット
ドイツの冬は非常に寒くて暗く、晴れの日も少ないため鬱になりやすいと聞いていましたが、本当にそうでした。時々ビタミンDの錠剤を摂取し(ドイツでは常識?)、休日に陽が射した時には自宅の窓際で上半身裸になって日光浴をしたりしました。
しかし、そんな最低なドイツの冬でも、11月下旬からの1ヶ月間はとても素晴らしいです。そう、クリスマスマーケットです! 約4週間、それぞれの街で規模や雰囲気もさまざまなマーケットを楽しむことができます。写真で見るのと実際にマーケットに出向くのとではまるで違います。マーケットによってはまるで中世ヨーロッパに迷いこんだような錯覚を受けるものまでありました。そして何より極寒の中で飲むGlühwein(ホットワイン)やReibekuchen(すりおろしジャガイモを揚げたもの)は最高です。病院帰りに一杯ひっかけたり、家族や友人と行ったり、同僚たちと行ったりと、よく飲みました(笑)。
また面白いことに、このクリスマスシーズンは病院での予定治療件数が激減します。おそらくこの時期は、職員は働きたくない、患者さんは病院で過ごしたくない、といったお互いの要望がマッチしているのだと思います。我が家もクリスマスはみんなで教会に行き、1週間の旅行に出かけ、そして大晦日は友人家族たちと花火とシャンパンで祝うという、日本では考えられないような最高な体験をしてドイツ最初の年を締めくくりました。
<プロフィール>
杉浦 淳史(すぎうら・あつし)
ボン大学病院
循環器内科 指導上級医(Oberarzt)
論文が書けるインテリ系でもないのに「ビッグになるなら留学だ!」と、2018年4月からドイツのボン大学にリサーチフェローとして飛び込んだ、既婚3児の父。
杉浦 淳史
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