記事・インタビュー

2018.10.23

[医院開業の基礎知識] ー開業を成功に導くための手順ー

はじめまして。テナントアシスト・ウイン株式会社の福井 重雄と申します。弊社は約20年にわたり、先生方の開業支援を行っております。医院を新規開業するまでは、多くの手順が必要です。開業準備の手順を挙げると「① 基本構想の策定」「② 開業場所の選定や不動産物件探し、不動産契約」「③ 診療圏調査」「④ 事業計画書の作成、融資申し込み」「⑤ 建物や内装の平面図作成および建築工事」「⑥ 医療機器、什器・備品の選定」「⑦ 広告宣伝、HP作成」「⑧ その他、求人や開業届提出等」になります。

<お話しを伺った方>

福井 重雄さん

福井 重雄さん

[プロフィール]
NECメディカルに在籍中、旧住友銀行と提携して平成6年から新規開業コンサルタント業を開始。平成11年、会社の譲渡に伴い不動産業の免許を取得して、成功する開業支援をコンセプトに独立し、開業場所選定から開業後の支援までを行っている。独自の診療圏調査と不動産ノウハウにより、成功すると思われる場所を紹介している。現在まで、154件(新規開業130件)の開業支援実績があり、経営不振な施設からの相談も多い。

基本構想の策定は、なぜ重要か?

基本構想の策定が、開業準備にとって重要な理由は、これを行うことにより開業の目標が決まり、そのための具体的な行動計画が見えてくるからです。さらに、開業準備の進め方に無理や無駄が無くなり、ストレスや負担が無くなるからです。これは、開業準備が煩雑で多種多様な作業が多くあり、ほとんどの先生にとっては初めての作業であることを考えると、必須の作業といえます。

医院の新規開業も、創業の一種です。創業とは、事業を興しその事業の成功を目指して、各種の計画を立て、実現していく活動です。その活動の基礎になるのが、医院の将来を具体的に描く「基本構想の策定」なのです。これがあって、創業がうまく進むのです。単なるイメージ作りと侮ってはいけません。イメージを具体化することは、行動科学の見地からも、目的を達成するための行動統制上、重要だと言われています。従って、このイメージ作りを大事に行ってください。

基本構想の策定

基本構想を策定する手順はどんなものか

基本構想の策定手順は「① 開業場所」「② 自院の内容や規模」「③ 総事業費」「④ 開業準備の期間および開院日」それぞれの項目のおおよその決定となります。

① 開業場所」が確定している時は、その場所で開業する流れになりますが、確定していない時は、開業場所選定が最重要な準備作業となるため、自分の希望の場所を数カ所取り上げて、最終的には一カ所に絞る作業が必要になります。その際、経験豊富なコンサルタントや業者に相談して決めるのが、間違いが無く合理的です。

また、「② 自院の内容や規模」は、開業場所や診療科目、自己資金および借入可能額等によって決まってきます。「③ 総事業費」は、まず自己資金がいくら出せるか、機器購入額、そして借入額がどのくらいまで可能かを、概算で計算します。「④ 開業準備の期間および開院日」は、勤務先を退職できる日を決め、ここから逆算して決めていきます。これらの基本構想の策定は、それほど確定したものでなくて良いと思います。

開業場所の選定と物件探し

基本構想が決まったら、開業場所の候補を数カ所取り上げて地図を持参し、実際に現地を見学して診療圏を制約する川や鉄道等を確認します。また、駅の乗降客の状況や人の流れ、交通量、商業地か住宅地か、認知しやすい場所かどうか、マンションが多いか、一戸建てが多いか等、候補地の状況を確認します。そして、自分の構想に合っているかを肌で感じてください。地図の情報だけでは、現地の状況が分かりませんので、この作業は必ず行ってください。

開業形態は土地を購入、または借地して一戸建てにするか、テナントを賃貸する形態があります。開業場所により、不動産価格や賃料が大きく異なるため、開業場所の選定に連動し、自院の内容や規模が変わってきます。また、それによって総事業費も変わりますので、現地の不動産価格や賃料を確認することが大事です。良さそうな不動産が見つかった場合は内見を行いますが、排水や電気設備等の確認が必要なため、設計士や医療施設に詳しい人を同行してください。
この作業は、一人では難しい面があるので、開業に精通した人の意見を聞きながら、進めて行く方が合理的です。その際、複数の人の意見を聞くと、開業のイメージがさらに広がると思います。

不動産契約の形態について

開業物件が決定したら、次は不動産契約です。不動産契約の形態は、土地を購入する場合と賃貸する場合で違ってきます。一戸建てにする場合は不動産の売買契約か、土地の普通賃貸契約または定期借地契約があります。定期借地契約には、一般定期借地契約と事業用定期借地契約および建物譲渡特約付借地権契約の3種類があります。これは、貸主と協議して決める事になります。
テナントの場合は、普通賃貸契約か定期借家契約があります。定期借家契約は、営業用建物にも適用され、原則として契約の更新はできず、再契約には貸主と借家人双方の合意が必要です。普通借地や借家契約のメリットは、相場よりも安く賃貸できる可能性がある。デメリットは、途中解約ができない場合がある。このようにメリットやデメリットがあるので、契約前にこの点をよく確認しておくことが必要です。

テナント賃貸の場合、医療施設は普通の事務所や店舗と違って、X線装置やリハビリ機器等、いろいろな医療機器を設置するので、契約前に信頼できる専門家に相談することをお勧めします。物件探しは、医療施設のノウハウを持っており、実績のある医療専門の不動産会社に物件を依頼すれば、手間がかからないと思います。

不動産契約

開院は、自分の将来を具体的に描き、それを実現化する活動です。基本構想の策定は、その
ためのスタートになるものです。従って、できるだけ具体性を持ち、明確な内容をイメージしてください。

具体的に開業場所が出てきた場合は、開業の準備活動は先生自身で行う事は必要ですが、成功するノウハウを持っているケースが少なく、仕事をしながらの準備は難しい部分もあります。開業は大きな資金をかけて行うため、失敗すると大きな損失を被ります。これを避けるためには、開業支援実績が豊富で成功するノウハウを持っている専門家に有料でコンサルティングを依頼することです。間違っても、無料のコンサルティングは利用しない事です。

福井 重雄

[医院開業の基礎知識] ー開業を成功に導くための手順ー

一覧へ戻る