記事・インタビュー

2018.08.28

“STRONG for Surgery” 後編 地域外科医療問題への独自の試みと若手外科医育成を目指して

医学部臨床実習生外科学講座一同と外科に魅力をもった医学部臨床実習生 近影(当講座HPより)
宮崎県の医療をリードする若手外科医を積極的に育成する取り組みの後編をご紹介します。

新たな歴史の扉を開く外科学講座

宮崎大学医学部

2015年4月、宮崎大学医学部外科学講座は第一外科と第二外科が統合し、一つの大講座としてスタート。翌年には合同の外科同門会が発足しました。この大講座制は宮崎大学医学部が厳しい地域医療の打開策とした方針であり、私たちは旧来のナンバー外科間のわだかまりを捨て、そして多くの障害を乗り越え、宮崎県外科医療が一丸となって、5年後、10年後その先の明るい未来に向けて邁進しています。
若手医師の新専門医制度への対応を見据え、高度な外科医療のビルドアップと宮崎県地域医療の充実を目指しています。

新専門医制度への対応

外科の専門医制度の一階建てをなす、外科専門医を習得するには、広い領域を数多く、できるだけ早く習得することが必要です。胸腹部、内分泌臓器、四肢の血管、そして外傷も含め、全て経験しなければなりません。
旧来のナンバー外科や、全国的にも分野別に特化した組織では、若手医師がそれらを習得するのに時間がかかってしまうため、十分な症例数や知識も積めず、違う分野を修練する際にしばしば講座の壁が障害になることが、現在でも課題とされています。

しかしながら、大講座制では主要な臓器別診療科の全てがそろって連携しているため、互いの経験数などもうまく調整しつつ、専門医資格も効率的に取ることが出来る点が最大のメリットです。
宮崎大学医学部外科のように大講座制を統括して運営するシステムは、全国にも稀で画期的な体制です。

新専門医制度への対応

また、奨学金制度などの対象となっている若い研修医の皆さんは、うまく義務年限と専門医が両立できるよう調整も行っています。
より高度な専門医・指導医含め、人員が増えれば増えるほど、大きな機能を発揮できる体制のため、若手医師のみなさんには大いに期待してほしいと思います。

学生・若手医師のトレーニングシステム“マンゴウ・プロジェクト”

マンゴウ・プロジェクト

MANGOU(Miyazaki Advanced New General surgery Of University 宮崎の進歩した新しい外科に取り組む大学の)プロジェクトは、宮崎の特産品にちなんだ若手外科医師養成プロジェクトで、大講座発足と同時に始動しました。
これまでは学生の臨床実習で、わずかにしか手技を経験できませんでした。しかし実際に専門外科医から手技を指導してもらい、外科のやりがいとモチベーションを感じ取るには医学部生からの実体験しかありません。
宮崎大学でもなるべく早い段階で、手技の面白さを感じられるようにと考案したのが『マンゴウ・プロジェクト』です。

手技を体験する実践型のセミナー

学生や研修医に対しては「外科に対する不安を払拭して自信を持つ」、あるいは「外科の醍醐味を味わってもらう」ことを、また若手外科医に対しては「スキルアップ」を目的として、豚臓器のウエットラボトレーニングを主体に、実際に手技を体験する実践型のセミナーを行っています。

年に2回、定期的に開催し、トレーニング後のアンケートで、ほとんどの参加者が外科手技に自信を持てるようになり、リピーターも順調に増えています。今後、さらに内容にも色々と工夫を凝らしていきます。

大講座制発足(外科講座の再編)というタイミングと、七島がノウハウとして持っていた、Ryomaプロジェクトの成功例※1をもとに、「この時こそ」と外科スタッフの力を集結したのが始動のきっかけです。

地域医療を支える外科医の確保のため、学生や若手医師のモチベーション向上と外科専門医育成を目指しています。

※1:他施設で行ったプロジェクトで、8年間でのべ約150名が参加。入局者増の30名獲得(J Surg Educ 2013)

Q. 都会の有名病院に比べ、宮崎では実力は詰めないのでは?

逆の発想です。都会の病院は高名な先生を頼りに集まるので執刀医が限られ周術期管理に24時間追われます。一方で、宮崎には年間2万人の外科手術患者がいると報告されていますが、若手にも多くの執刀や第一助手を行ってもらわなければいけません。技術も発想も狭い日本の都会は飛び越え、“地方から世界に”のコンセプトが本学のモットーです。

MIYAZAKI STRONG for Surgery(宮崎の外科、頑張ろう!)

宮崎大学外科学講座は、まだまだ新しい組織ですが着実にビルドアップしている外科医育成に恵まれた環境と心意気がみなぎっています。

2015年バージョンの『MANGOU(Miyazaki Advanced New General surgery Of University 明日に新しく羽ばたく宮崎大学の総合的外科)』のロゴに加え、2017年末からの『MIYAZAKI STRONG for Surgery(宮崎の外科、頑張ろう!)』(下図)

MIYAZAKI STRONG

“MANGOU” “STRONG”という新たなロゴを共有し、前向きな強い気持ちで困難に立ち向かっています。厳しい地域外科医療にある宮崎県の外科医療者にも勇気を与え、高い志と強い気持ちで困難に立ち向かう合言葉なのです。

<問い合わせ先>宮崎大学医学部外科学講座

▶ 電話番号 0985-85-2808(肝胆膵外科)、0985-85-2291(心臓血管外科)、
0985-85-9786(形成外科)
▶ ホームページ http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/surgery/
▶ お問い合わせ http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/surgery/contact.html
▶ facebook https://www.facebook.com/miyazaki.surgery1/

<執筆者プロフィール>

七島 篤志(ななしま・あつし)

七島 篤志(ななしま・あつし)

長崎県出身。1988年 宮崎医科大学卒業。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本肝胆膵外科学会、日本胆道学会、日本内視鏡外科学会、日本Acute Care Surgery学会などの専門医、指導医、高度技能指導医および評議員、米国外科学会(American College of Surgeons)フェロー

中村 都英(なかむら くにひで)

中村 都英(なかむら くにひで)

佐賀県出身。1981 年、宮崎医科大学卒業、宮崎医科大学第二外科入局。日本血管外科学会、日本外科学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本循環器学会、日本脈管学会などの専門医、指導医、評議員

“STRONG for Surgery” 後編 地域外科医療問題への独自の試みと若手外科医育成を目指して

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