記事・インタビュー
外科学講座一同と外科に魅力をもった医学部臨床実習生 近影(当講座HPより)
宮崎県の医療をリードする若手外科医を積極的に育成する取り組みの後編をご紹介します。
新たな歴史の扉を開く外科学講座

2015年4月、宮崎大学医学部外科学講座は第一外科と第二外科が統合し、一つの大講座としてスタート。翌年には合同の外科同門会が発足しました。この大講座制は宮崎大学医学部が厳しい地域医療の打開策とした方針であり、私たちは旧来のナンバー外科間のわだかまりを捨て、そして多くの障害を乗り越え、宮崎県外科医療が一丸となって、5年後、10年後その先の明るい未来に向けて邁進しています。
若手医師の新専門医制度への対応を見据え、高度な外科医療のビルドアップと宮崎県地域医療の充実を目指しています。
新専門医制度への対応
外科の専門医制度の一階建てをなす、外科専門医を習得するには、広い領域を数多く、できるだけ早く習得することが必要です。胸腹部、内分泌臓器、四肢の血管、そして外傷も含め、全て経験しなければなりません。
旧来のナンバー外科や、全国的にも分野別に特化した組織では、若手医師がそれらを習得するのに時間がかかってしまうため、十分な症例数や知識も積めず、違う分野を修練する際にしばしば講座の壁が障害になることが、現在でも課題とされています。
しかしながら、大講座制では主要な臓器別診療科の全てがそろって連携しているため、互いの経験数などもうまく調整しつつ、専門医資格も効率的に取ることが出来る点が最大のメリットです。
宮崎大学医学部外科のように大講座制を統括して運営するシステムは、全国にも稀で画期的な体制です。
また、奨学金制度などの対象となっている若い研修医の皆さんは、うまく義務年限と専門医が両立できるよう調整も行っています。
より高度な専門医・指導医含め、人員が増えれば増えるほど、大きな機能を発揮できる体制のため、若手医師のみなさんには大いに期待してほしいと思います。
学生・若手医師のトレーニングシステム“マンゴウ・プロジェクト”

MANGOU(Miyazaki Advanced New General surgery Of University 宮崎の進歩した新しい外科に取り組む大学の)プロジェクトは、宮崎の特産品にちなんだ若手外科医師養成プロジェクトで、大講座発足と同時に始動しました。
これまでは学生の臨床実習で、わずかにしか手技を経験できませんでした。しかし実際に専門外科医から手技を指導してもらい、外科のやりがいとモチベーションを感じ取るには医学部生からの実体験しかありません。
宮崎大学でもなるべく早い段階で、手技の面白さを感じられるようにと考案したのが『マンゴウ・プロジェクト』です。

学生や研修医に対しては「外科に対する不安を払拭して自信を持つ」、あるいは「外科の醍醐味を味わってもらう」ことを、また若手外科医に対しては「スキルアップ」を目的として、豚臓器のウエットラボトレーニングを主体に、実際に手技を体験する実践型のセミナーを行っています。
年に2回、定期的に開催し、トレーニング後のアンケートで、ほとんどの参加者が外科手技に自信を持てるようになり、リピーターも順調に増えています。今後、さらに内容にも色々と工夫を凝らしていきます。
大講座制発足(外科講座の再編)というタイミングと、七島がノウハウとして持っていた、Ryomaプロジェクトの成功例※1をもとに、「この時こそ」と外科スタッフの力を集結したのが始動のきっかけです。
地域医療を支える外科医の確保のため、学生や若手医師のモチベーション向上と外科専門医育成を目指しています。
※1:他施設で行ったプロジェクトで、8年間でのべ約150名が参加。入局者増の30名獲得(J Surg Educ 2013)
Q. 都会の有名病院に比べ、宮崎では実力は詰めないのでは?
逆の発想です。都会の病院は高名な先生を頼りに集まるので執刀医が限られ周術期管理に24時間追われます。一方で、宮崎には年間2万人の外科手術患者がいると報告されていますが、若手にも多くの執刀や第一助手を行ってもらわなければいけません。技術も発想も狭い日本の都会は飛び越え、“地方から世界に”のコンセプトが本学のモットーです。
MIYAZAKI STRONG for Surgery(宮崎の外科、頑張ろう!)
宮崎大学外科学講座は、まだまだ新しい組織ですが着実にビルドアップしている外科医育成に恵まれた環境と心意気がみなぎっています。
2015年バージョンの『MANGOU(Miyazaki Advanced New General surgery Of University 明日に新しく羽ばたく宮崎大学の総合的外科)』のロゴに加え、2017年末からの『MIYAZAKI STRONG for Surgery(宮崎の外科、頑張ろう!)』(下図)
“MANGOU” “STRONG”という新たなロゴを共有し、前向きな強い気持ちで困難に立ち向かっています。厳しい地域外科医療にある宮崎県の外科医療者にも勇気を与え、高い志と強い気持ちで困難に立ち向かう合言葉なのです。
<問い合わせ先>宮崎大学医学部外科学講座
▶ 電話番号 | 0985-85-2808(肝胆膵外科)、0985-85-2291(心臓血管外科)、 0985-85-9786(形成外科) |
▶ ホームページ | http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/surgery/ |
▶ お問い合わせ | http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/surgery/contact.html |
https://www.facebook.com/miyazaki.surgery1/ |
<執筆者プロフィール>
人気記事ランキング
-
著者が語る☆書籍紹介 『YouTube 山根塾 自宅でできる外科基本手技トレーニング』
- 新刊
- 研修医
- 医書マニア
著者が語る☆書籍紹介 『YouTube 山根塾 自宅でできる外科基本手技トレーニング』
山根 裕介
-
佐々木淳先生の在宅診療メモランダム Episode5 無力感からの願い
- Doctor’s Magazine
佐々木淳先生の在宅診療メモランダム Episode5 無力感からの願い
佐々木 淳
-
整形外科に進まない研修医も必読!研修医が読んでおくべき整形外科系の医学書4選
- ベストセラー
- 研修医
- 医書マニア
整形外科に進まない研修医も必読!研修医が読んでおくべき整形外科系の医学書4選
三谷 雄己【踊る救急医】
-
手術から創薬へ:製薬企業で臨床経験を生かすやりがい
- ワークスタイル
- 就職・転職
- 病院以外で働く
手術から創薬へ:製薬企業で臨床経験を生かすやりがい
田中 智子、堤 康行
-
書評『当直でよく診る骨折・脱臼・捻挫《研修医☆万里小路尚子の当直サバイバル日誌》』
- 新刊
- 研修医
- 医書マニア
書評『当直でよく診る骨折・脱臼・捻挫《研修医☆万里小路尚子の当直サバイバル日誌》』
三谷 雄己【踊る救急医】
-
“医工連携AI”開発ストーリー⑤ 「発想AI~わずかな入力で大きなヒントを」
- イベント取材・広報
“医工連携AI”開発ストーリー⑤ 「発想AI~わずかな入力で大きなヒントを」
-
バックアップ体制充実!患者さんも職員も安心の診療所
- ワークスタイル
- 就職・転職
- 専攻医・専門医
バックアップ体制充実!患者さんも職員も安心の診療所
田端 志郎
-
<開催報告>けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方 ①後悔しない診療科の選び方
- イベント取材・広報
<開催報告>けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方 ①後悔しない診療科の選び方
山本 健人
-
書評『救急外来 ただいま診断中! 第2版』まずはここから! 内科系救急研修医の必読書!
- 新刊
- 研修医
- 医書マニア
書評『救急外来 ただいま診断中! 第2版』まずはここから! 内科系救急研修医の必読書!
三谷 雄己【踊る救急医】
-
ブランクからの復職や時短勤務もOK 柔軟な働き方で最先端の眼科医療に触れられる環境
- 研修医
- ライフスタイル
- 就職・転職
ブランクからの復職や時短勤務もOK 柔軟な働き方で最先端の眼科医療に触れられる環境
神戸アイセンター病院