記事・インタビュー
医師不足の地方が多い中、医師がUターンで地元に戻って転職する事例も増えています。給料の面や労働環境、自然環境の面でUターンする魅力についてまとめました。
医師はUターンで成功しやすい
地方へのUターンというと、一般的な会社員の場合、給料は下がるがワークライフバランスを重視して踏み切ることが多いでしょう。地方では求人自体が少なく、希望する職を選ぶことが難しいですが、両親に近いところに住む、子どもを自然豊かな環境で育てたい、といった事情からUターンを決断する方が多いようです。
しかし、医師の場合は別です。人が住んでいる限り、どのようなへき地でも医師は必要とされているケースが多数です。特に昨今は地方での医師不足が顕著となっているため、給料や仕事の選択肢の面でも、高待遇が提示されることが増えています。
従来、医師不足の地域では1人の医師への負担が大きく、激務というイメージがありました。しかし、医師不足が重大な問題となるにつれ、自治体等が医師確保・待遇改善のために予算を確保し、様々な施策を進めています。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、都道府県別の医師の給料実態が掲載されており、Uターンを検討する際の参考になります。2015年の「年収推計値」でみると、最も高いのは岩手県となっており、反対に最も低いのは大阪府となっています。
基本的に都市部よりも地方のほうが、待遇が良い傾向があります。医師の給料は年齢・役職・勤務内容によって大きく開きが出るので、給与と勤務時間は必ずしも比例しません。
地方の医師の給料が高い理由の一つには、経験のある医師を求めていることがあります。医師不足の中、一人ひとりの医師の裁量が必然的に大きくなること、若手医師を招へいするにも経験のある指導医が必要であるなどの理由が挙げられます。
Uターンした若手医師の育成にも各自治体が力を入れています。医師不足に悩まされている県の一つ、青森県では2005年に「あおもり地域医療・医師支援機構(現・青森県地域医療支援センター)」を設立し、Uターンした医師が働きながらスキルアップできる環境を整備しました。女性の医師が出産や育児によってキャリアが中断しないように、働きながらも子育てをできる仕組み作りにも取り組んでいます。
新潟県でもUターンした女性医師が活躍できる環境を整えています。2010年には「新潟県女性医師ネット」を創設しました。女性医師の相談事業やイベント開催などの情報提供を行っています。
「地元に戻る」以上のメリット
このように、医師偏在が深刻化する中、国や地方自治体あげてUターン・Iターン支援を行っています。医師本人にとって、地方で働く利点は何でしょうか?
人によっては、生活環境やQOLの改善が挙げられるでしょう。医師は当直や呼び出しなどがあり、他職種に比べ、配偶者や子供への負担が大きい職業です。Uターンして実家の近くに住むことで、子供の面倒を見てくれる人が増え、負担が軽減することもあるでしょう。医師自身も生まれ育った地域に住む安心感があるでしょう。激務の中でも、見慣れた山や川、田園風景、家族、友人などに囲まれていることで心が落ち着くのもUターンならではでしょう。
また、どんな地方でも医師の求人がまったくない、というケースはあまりないでしょう。働く場所を好きに選べることは、医師の特権ともいえます。地元で開業する場合でも、身元が保証されているので信頼を得やすい、という点も挙げられるでしょう。
そして、Uターンする一番のメリットは、慣れ親しんだ地元への貢献ができるということでしょう。医師を志す人は、「誰かの役に立ちたい」という思いが原点にある方が多くいます。大都市の病院で多くの症例や患者を診ることで臨床経験を積み、キャリアアップにつながりますが、一方で地元の人たちが安心して暮らせる医療の提供も大きなやりがいにつながります。
医師がUターンで地元に転職するということは、大都市とは違った魅力があります。家族・友人との過ごす時間や地元への貢献を考えるならUターンのメリットは大きいでしょう。
最終更新(2017/9/28)
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