記事・インタビュー
医師の偏在が深刻な日本社会では、地方で働く医師が求められています。
「都会から地方へIターンする」とはどういうことなのか、医師のIターン事情をまとめました。
地方自治体のIターン対策
経済協力開発機構(OECD)によると、人口1000人あたりの医師数は加盟国平均で2.8人、対して日本は2.3人です(2015年)。日本の医師数は世界と比してその絶対数が少ないことが分かります。
働く場所として人気の都市部エリアに医師が集まる反面、地方では医師不足が大きな課題となっています。
厚生労働省の「2014年医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、人口10万人あたりの医師数を都道府県別に比較すると、多い順に京都府(307.9人)、東京都(304.5人)、徳島県(303.3人)と続きます。
反対に少ない地域は埼玉県(152.8人)で最も深刻な状況にあり、続いて茨城県(169.6人)、千葉県(182.9人)となっています。
都道府県単位でも大きな差がありますが、県内の格差も大きく、医師不足の地域は、その解消に様々な手を打っています。
その一つが「ドクターバンク」事業。
医師不足解消に向け、UターンのみならずIターンで就職する医師も増やそうと、都道府県・国立大学病院を中心とした窓口をつくり、医師と自治体内医療機関のマッチングを行っているのです。
就職だけでなく、就業後のキャリアサポートやライフサポートも行っています。
Iターン転職。その魅力とは?
Iターンして地方で働く=野山に囲まれた場所で働く、というイメージを持つ方が多いかもしれません。
東京など大都市で働いていると自然に親しむ機会が限られますが、地方に住むことでそうした機会を気軽にもつことができるでしょう。
さらに、医師にとってはIターン=地域医療に携わる、という側面が大きくあります。
地方では医師数が限られるので総合診療的な医療が求められ、一人の医師が連日幅広い疾患を診ることになります。
負担が増えすぎないよう週4日勤務、非常勤医師の派遣など、勤務体制に配慮しているケースもあります。
また、各種手当や借り上げ住宅などの支援制度を用意するところもあります。職住接近でオンオフの使い分けや家族との時間がとりやすい、子どもたちをのびのびとした環境で育てられる、などをメリットとしてあげる方もいます。
単身赴任者には帰省料金を負担するところまであるそうです。
こうした充実した支援策はもとより、医師不足で困る住民に寄り添い、最後まで診る。医療を通して住民とつながることで「長寿日本一県」を成し遂げた長野県佐久市の若月俊一先生のように、地域由来の医療を発見・発展させられたら医者冥利に尽きますね。
Iターン転職を具体的に考えてみる
Iターンの希望者には40~50代が多いのが特徴です。ある程度のキャリアや経験を手に入れ、次の舞台として地域医療のやりがいを求めるのでしょう。
地方医療は患者さんとの距離が近く、顔の見える関係が生まれます。「街を歩いていて、通りがかりの人に感謝の声を掛けられる」といったことから働く意義を感じる方もいるようです。
若手でIターンを選択する人もいます。医師不足の状況があり、若手でも重要なポジションを担える、といった事情が後押ししているようです。
大病院では研修医も若手医師も多く、順番に経験を積むことになりますが、すべてを自分が担えば大変ながら、その分短期間で成長することが可能です。
特に将来ジェネラリストの医師を目指すのであれば、若手のうちに地方で働くことのメリットは大きいでしょう。
知らない土地で自分に合った勤務先を探すことは難しいでしょう。知人のツテなども使われることが多いですが、紹介先と合わない場合は退職しづらいといったデメリットもあります。
各都道府県が設置する「ドクターバンク」や紹介会社などを利用して、情報収集をするといいでしょう。医師招へいに積極的な地域ほど豊富に情報発信していますし、県内の病院をめぐるツアーを実施しているところもあります。
民間医局コネクトでは自治体・法人グループ情報をまとめておりますのでご興味のある方はご参考ください。
医師のドクターバンクなどを利用した適切な情報収集を行い、Iターンを成功させることできれば、医師として公私ともに充実した生活を送ることができるでしょう。夫や妻の故郷など、なにかしらゆかりがある地域への移住が圧倒的に多いIターンですが、都会育ちで伝手がなくても近隣のエリアに目を向ければ、医師不足で困っている地域は多くあります。趣味や特技を満喫できる地域へIターンを考えてみるのも、人生に彩りを添える方法かもしれません。
最終更新(2017/9/28)
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