記事・インタビュー
2024年5月7日(火)〜13日(月)にかけて、若手医師のための臨床推論大会「第3回Medii臨床グランプリ」を開催しました。
15チーム 82名の医師・医学生のみなさまにご参加いただき、聖路加国際病院のチームが優勝しました。
Medii臨床グランプリとは
Medii臨床グランプリは、「未診断症例および診断に至らずに亡くなってしまうような剖検症例を、世の中からなくす」という社会的な課題解決に貢献していくことを目指したチーム対抗の臨床推論大会です。
今までの臨床推論大会は、オフラインでのイベントや、オンライン会議ツールを用いたリアルタイムでの開催とすることが一般的でした。Medii臨床グランプリは、昨今働き方改革が推進されつつあるこれからの時代にマッチした”チャット形式”の新しい大会となります。
優勝チームの紹介
聖路加国際病院 「チームDx」チーム
- 谷口 光輝 先生(初期研修医2年目)
- 丹治 文子 先生(初期研修医1年目)
- 平間 智絵 先生(初期研修医1年目)
- 多田 祝 先生(初期研修医1年目)
- 山本 尚子 先生(初期研修医1年目)
- 上原 萌 先生(初期研修医1年目)
- 加藤 惇 先生(初期研修医1年目)
優勝特典として、優勝トロフィー・Amazonギフト券・MediiオリジナルTシャツを進呈いたしました。
優勝チームのコメント
Q.診断困難症例に遭遇したとき、まず初めにどのようなステップを踏んで患者の状態をより詳細に把握しようと心がけていますか?
その時点で得ている症例の情報を整理し、上級医に意見を仰いだりインターネットを用いたりして鑑別疾患を考えます。特に、インターネットからは豊富な情報を得ることができると感じており、症例報告を参照したりSQ(セマンティッククオリファイヤー)を用いた検索を行うことで、考えられる疾患の幅を広げています。その後、広がった鑑別疾患を絞っていくために聴取すべき情報や検査すべき項目を考え、必要な問診・診察・検査を行うよう心がけています。
Q.症例の診断に関わる医学的な知識や最新の情報を継続的に更新するために、意識していることや取り組んでいることはありますか?
当院の研修は豊富な症例を受け持ち、その経験を通して様々なことを学んでいくスタイルですので、多彩な症例を経験する中で疑問に思ったことはその都度忘れないようにメモをし、後の学習のきっかけとしています。
Q.症例が複雑な場合、専門医や同僚とどのように協力し意見を共有し合っていますか?
当院は病棟医制度であり、研修医が病棟に配属されて、症例に関して困ったことがあれば上級医に相談する、という体制が敷かれています。受け持った症例で確定診断が得られなかったり治療に難渋する際は、上級医の先生や、場合に応じて他科の先生にも相談させていただいています。その際には、できるだけ自分でも調べてから相談することを心がけています。ただ単に困っていることを聞くよりも、まずは調べて自分なりの考えを形成し、それを先生方と共有した方がより深いフィードバックが得られると感じています。
Q.症例が解決しない場合、どのようにして新たなアプローチや視点を見つける努力をしていますか?
まずは症例の診断や治療を考える上での自分の思考回路を客観的に見直しています。症状や検査結果等の様々な情報に重み付けをして診断や治療を考えることが多いかと思いますが、自分の中でのその重み付けを一度変えてみる努力をしています。例えば、重視していなかった症状を中心に鑑別を考えてみたり、検査結果を今一度見直して見落としている変化がないかチェックしたりなどしています。 それと同時に自分一人では限界があるため、何か困っていることがあれば上級医にすぐ相談しています。病棟には必ず後期研修医がいらっしゃり相談しやすい環境ですので、気になったことは共有しています。すでに上級医の先生方は答えをもっていらっしゃることが多く、いつも大変勉強になっております。
Q.最後に第3回Medii臨床グランプリ優勝に当たってのコメントをお願いいたします。
昨年度の第2回グランプリに参加させていただき、診断困難な症例に対してのアプローチにおいてまだまだ力不足であることを痛感しました。今回も決して一筋縄ではいかない症例ばかりで、100%の自信を持って回答できた問題はありませんでしたが、幸いにも優勝という結果をいただき、嬉しい限りでありチームメンバーの自信にも繋がったかと思います。今回の大会参加を通じて、メンバー全員が今後の診療に必ず役立つ知識や経験を得たと思います。結果に慢心することなく、今後の日々の症例に対して患者さんに最良の医療を提供できるよう、精進してまいります。
民間医局コネクトチームも参加しました!
<<民間医局コネクト編集部より>>
「民間医局コネクトセミナー」にパネリストとして現在参加している、過去参加していた初期研修医、専攻医の先生方5名でチームを組んで参加しました。出身大学・勤務先がバラバラの選抜チームのため、チャットやオンラインミーティングを駆使して、難症例に立ち向かいました。
結果は8位。悔しさが残り、また機会があればリベンジしたいと皆で話していました。
リーダーとしてチームを引っ張ってくれた西村先生、ご参加いただきました益成先生、松下先生、草野先生、古川先生ありがとうございました!
民間医局コネクトチームのコメント
西村 涼 先生 (藤田医科大学 総合診療科/卒後5年目)
Q1. 難しかったところはどこですか?
与えられた情報から知っている疾患が思いつかなかった点。また、難しい病気にアンカリングされてcommonを疎かにしてしまった点
Q2. パネリスト仲間とやってみていかがでしたか?
どつぼにハマらず、冷静に意見を返してくれる仲間がいたことで自分の推論を客観的に見直すことができた。またこういうチーム戦を行いたい。
益成 湧太 先生 (洛和会丸太町病院/卒後4年目)
Q1. 難しかったところはどこですか?
初期研修と専攻医からなる年次の若いチームであり、また病院もバラバラであることから、様々な意見が出てきて興味深かったが、それらをまとめるのは大変であった。
Q2. パネリスト仲間とやってみていかがでしたか?
普段の臨床推論の勉強会は個人の頭の中で考えることが多いが、チームで話し合い、ある程度調べる時間の余裕があり何を使って調べても良いというのは実臨床に近いスタイルであり、おもしろかった。自分では思いつかない鑑別も出てきて、おもしろかった。
松下武史 先生 (大阪医科薬科大学病院 総合診療科/卒後3年目)
Q1. 難しかったところはどこですか?
症例がそもそもニッチ、または限局的なシチュエーションだった。
Q2. パネリスト仲間とやってみていかがでしたか?
オンラインでもしっかりディスカッションできたが、合宿感を出したいのでまた機会があれば是非対面でもやってみたいです!
古川 智裕 先生 (九州大学病院/初期研修2年目)
Q1. 難しかったところはどこですか?
典型的な症例ではなく、経過から鑑別があまり浮かびづらかった。病態を考えようとしても経過が予想とはずれることが多く、疾患のイメージがつかめなかった。
Q2. パネリスト仲間とやってみていかがでしたか?
普段と違う仲間と相談が出来るので新鮮だった。グループの中の研修医同士でも、注目する点が異なっていて、経験してることの違いを感じて刺激になった。
※本文章中の所属等の表記は取材当時のものになります。
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