記事・インタビュー
福島県いわき市は、東北地方の南部に位置し、太平洋に面し温暖な気候が特徴で、美味しい海の幸や温泉地があります。そんないわき市では、医師不足/超高齢化・多死社会に向けて、現在、病院や組織の壁を乗り越え、「チームいわき」で地域医療に取り組んでいます。
特にこれからの医療を支える若き医療人を地域全体で迎え入れ、学びと成長の場を提供する取り組みに力を注いでいます。医師の偏在化はじめ、担い手不足にあってもよりよい地域医療を諦めないいわき市の取り組み、是非お読みください。
医学生たちの学びから、いわきの魅力を編み直す
毎年、福島県立医科大学と連携し、8〜9月にかけて合計3回、2泊3日の日程で医大3年生にいわきの医療の現場を体験してもらう合宿ツアー「いわき地域医療セミナー」を開催しています。いわき市の急性期病院を皮切りに、病院や施設をめぐり、現場の医師から話を聞き、患者さんやそのご家族と交流したり、まち歩きまで行い、対話を重ねながら学びを深める内容となっています。
特定の病院や施設に缶詰めではなく、2泊3日の日程を余すことなく、いわき市内各地の医療機関や介護施設などで多様な体験プログラムを提供しますが、これこそまさに「チームいわき」の力。ご協力くださったドクターはおっしゃります。「医学部3年生は、医療の基礎的なことを教科書から学ぶ段階。この“専門的な領域に入る前”のタイミングにこそ、地域にどっぷり浸り、疾病ではなく人と向き合い、みんなで共有して、それぞれに学びを言葉にしていく時間がなによりかけがえがない。だから、私たちは診療の間を縫ってでも、このプログラムに協力するんです」と。
そんな激アツな医療関係者によって、本プログラムは、急性期、地域包括ケア、最先端の医療機器、人を診ることの重要性、介護や障がいなど多様な学びで構成されている。いわきは、医療の「学びと情熱のるつぼ」なんです。
病院の垣根を越えて、初期研修医の合同勉強会
いわき市には、基幹型の初期研修病院が3病院あります。いわき市医療センター、福島労災病院、そして常磐病院の三つです。普段はそれぞれの病院で研鑽を積む若手研修医の皆さんが、病院や部局の壁を超え、共に学び合う勉強会&交流会をいわき市では年に2回開催しています。
知識や経験を先輩医師から学ぶだけでなく、せっかく縁あって、いわき市で医師としての一歩目を踏み出した皆さんの交流を通じて「横の連携」もつくる。と同時に、医師不足という「医療課題先進地区」ではなく「医を学び合うコミュニティ」へポジティブな転換を目指そうという取り組みです。
勉強会では県外から講師をお招きし、これからの医療人にとって重要な知識だけでなく、講師自らのキャリアにおける失敗例を話しながら、医師として大事な心構えまで伝えていきます。勉強会が終わると、美味しいご飯とお酒の交流会。研修医だけでなく、院長先生や指導医の先生方も病院の垣根を越えて参加。指導責任者の先生はおっしゃります。「ワイワイと交流するだけでなく、第一線の先生を講師として招いた学びがあるということが重要です。みんなで顔を合わせて交流する場と機会はとても大事。勉強会だけでもなく、交流会だけでもない。この組み合わせがとてもよいですね。」
いわきの魅力、充実した学び、さらには交流とネットワーク。医師の数が急には増えないからこそ、いわきは多様な人たちがつながり合うことで、地域医療と学びのネットワークの網の目を細くしていきます。
ライフイベントとキャリアの両立を目指す、いわきの女性医師ネットワークの力
いわきでは、女性医師のライフイベントと医師としてのキャリアの両立にも目を向けています。医学部6年、初期研修2年、その後の専門医研修と続く医師としてのキャリア形成と結婚・出産・育児というライフイベントのタイミングが重なりがちな女性医師の皆さん。この難しい両立を、いわきの女性医師の皆さんは、病院の垣根を越え、また先輩⇄後輩の縦のつながりで互いに支え合っています。
先輩医師が産休や育休の制度をつくり、身をもって実績を積み上げ、自らが管理職になり、後輩の女性医師が両立しやすい環境を整えてく。また後輩医師も先輩医師が産休・育休に入る際は、先輩医師の患者さんを受け持ち、カバーする。そんな縦横の支え合いネットワークが、病院や所属先の違いを越えて、深まり広がっています。女性医師の一人はこう言っています。「13年前の東日本大震災で、人にとって何が大事かを改めて考えた。休めるなら休もう、家族と向き合う時間も大事にしようって、いわきのみんなが思った。だから、医師である私が今回産休・育休に入る時、“元気な赤ちゃん産んでね、お大事にね”って患者さんが言ってくれた。私たちの暮らしこの地域は、大変なことを乗り越え、人間として豊かになれる地域なんだって思います」と。
こんな地域で暮らしとキャリアの両立を支え合う、女性医師のしなやかな関係性は、いわきの医療の大きな魅力だと思います。
ジャイキリを起こす
福島県いわき市は30万人が暮らす中核市だが、深刻な医師不足の街である。でも、悲壮感たっぷりに「医師の皆さん、是非いわきに来てください」とお願いするだけでなく、「いわきに行ってみようかな」「どうやら最近、いわきがアツいらしい」と、これからの医療人の学びのフィールドになればと思っています。今は妄想かもしれないが、私たち「チームいわき」は、本気で、でも楽しみながら、「全国トップクラスの医師不足地域から医療人がつどう学びのフィールドへ」という地域医療のジャイキリを目指していきます。
<いわきの地域医療プロジェクト>
福島県いわき市役所 保健福祉部 医療対策課
担当:猪狩
「いわきの地域医療プロジェクト」は、いわき市役所地域医療課と市内の医療機関及び医療関係者の皆さんとの共創による取り組みです。立場や組織の垣根を越え、「チームいわき」で協働し、アクションを展開するとともに、「発信」にも力を注いでいます。WEBや各種SNSも是非チェックしてみてください!
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いわきの地域医療プロジェクト
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