記事・インタビュー

2020.08.21

循環器専門医を取ったら発想の世界へ(3)

 

大阪暁明館病院 心臓血管病センター
小松 誠、児玉 和久

はじめに

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我々は、教育者でもあり日本の循環器の権威でもある児玉和久のグループで血管内を調べる「血流維持型汎用血管内視鏡」という技術を開発、2018年にJournal of American College of Cardiology(2018年のimpact factor 18.639)に大動脈内視鏡という新しい分野を報告。症例報告、reviewも含め多数の報告を行い、新しい臨床分野を開拓するとともに、各領域における従来の概念も変わっていく知見を発表しています。

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血管内視鏡を世界で初めて大動脈に応用する

血管内視鏡が初めて米国から輸入された際、それはバルーンで冠動脈をふさぎ血流を止めて視野を確保するというものでした。しかし事故が続いたため、米国では認可が取り消されました。

日本ではしばらくそのタイプは認可されたままでしたが、もっと安全にできないかと、当院顧問の児玉和久先生が日本オリジナルの方法を開発、20年ほど使われてきました。さらに5年前。それまでは冠動脈を見終わると内視鏡システムをさっと抜き去るのが通例でしたが、あるとき内視鏡システムが冠動脈から期せずして抜けたことで、大動脈の観察が可能なことを発見。カテを工夫して、安全に大動脈全体を5分程度で見通せるスクリーニング方法を作りました。

すると、見たことのない種類のプラークが次々と見つかりました。自然にバラバラとはがれていくプラークや、きらきら光るプラーク。どれも名前がありません。みなさんは大動脈のプラークといえばCTなど思い浮かべるでしょう。しかし、CTでは正常に見える血管でも激しい動脈硬化があり、まったく違う所見であることがわかりました。さっそく「これは大変広い分野である。広めないと」ということで研修会を開催し、これまで100名以上の先生方にこの方法を伝えています。また、10種類以上の未分類のものに名前を付けたりしていますが、まだ分かっていないことも山ほどあります。


いろいろな概念が変わる~塞栓の実態とは?

大動脈からの塞栓の頻度は、我々の報告では、冠動脈疾患及び疑い症例324例で自然破たんプラークは80.9%でした。従来の病理での大動脈塞栓の報告では、頻度は4%未満です。

これまで知られていなかった大動脈からの無症候の塞栓がだんだん組織を傷めて機能障害を起こしてくる可能性もありますし、脳梗塞をはじめとした起源不明の塞栓症の原因となっているかもしれません。下肢閉塞性動脈硬化症も、狭窄・閉塞しているその場所だけ治療しても、上流から塞栓物質が降ってくることがあるかもしれません。眼底の動脈に引っかかっているプラークであるHollenhorst Plaqueという末梢血管の塞栓や、腎臓や足のコレステロール塞栓などは、詰まった後は知られていましたが、生体内で飛んでいくところは観察されたことがありませんでした。

こうした我々の報告を受けて、大動脈からの塞栓も比較的重要な位置に占めるという考え方がされるようになってきています。(Narula et al, JACC 2019.)


塞栓物の解析~見えなかったコレステロール結晶をみえるようにする

塞栓物は病理の先生にお願いして解析してもらうのですが、我々は病理の世界でも変革を起こしました。

これまで、粥状動脈硬化のかけらであるアテローマを標準的な染色であるHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色して、組織像のなかに針状に抜けた像が見えると、これはコレステロール結晶ですと説明されてきました。臨床医は何の疑いもなく受け入れます。しかし、実体のないものを「何々です」と言われて信じるのが科学でしょうか?体内にはほかにもいろいろな種類の結晶があります。染色の時に用いる有機溶媒で、コレステロール結晶は溶けてしまうため、欠損像になってしまうのです。

そこで我々は「ろ紙リンス法」という、コレステロール結晶を実際に観察する方法を作りました。カテーテル検査室の横に偏光顕微鏡を置き、サンプルが取れると2分程度で、そこにコレステロール結晶があるかを判定することができます。基礎分野では電子顕微鏡で観察したという報告はありますが、これを日常臨床で普通に見ることなどできませんでした。さぞかし専門的な新技術だと思われるでしょう? いえいえ、研修医の先生も臨床検査技師の方も簡単にできます。方法は何でもいいのです。工夫して、見えたら成功。手段は何でもいいのです。そうやって工夫してできた方法です。


次世代のリーダーを育てます

我々は、循環器専門医資格を取られた方がその能力を発揮する、“ポスト専門医”の施設として仲間を募集します。もちろん、これから専門医を取りたい方、専門医資格はないが新しいことに携わりたいという方も可能です。

大阪暁明館病院では、一緒に働いてくれる医師を募集しています。

554-0012 大阪市此花区西九条5-4-8
Tel:06-6462-0261 Fax:06-6462-0362
Mail:plaquemap@yahoo.co.jp

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