記事・インタビュー

救急医学の発展のため、ER型救急に従事する医師たちで構成される非営利団体EM Alliance(以下、EMA)が発足から10年を迎えたことを記念し、全国の救急医が一堂に会するイベントとして「EMA festival!」が2019年8月3日(土)・4日(日)の2日間にわたり、横浜労災病院で開催されました。EMAの創設メンバーとして今もなお相談役として支えていらっしゃる先生方の講演をはじめとした多くのプログラムに約150名の参加者が集い、イベントは大盛況に終わりました。
今回は、EMAの創設メンバーで相談役の長谷川先生にインタビュー取材を行い、ご経歴やEMAとのかかわり、そして若手医師、医学生に伝えたいことなどを伺いました。
渡米した理由
「何か面白いコト」をやってみようと思ったからです。「このままだと人生後悔するな」と、米国でチャレンジしようと思い立ちました。
私の場合、海軍病院で働いていたことで、比較的スムーズに海外でのキャリアを始めることができました。渡米当時、研究者になるつもりではありませんでしたが、結果として研究者になり、自分に一番合う仕事に出会えたことは、アメリカに来て良かったと思う瞬間でもあります。
自身の研究室を構えるまで
レジデントの時から研究を行っていましたが、臨床と研究の両方に打ち込むことはできないと感じ、キャリアが中途半端になるのであれば、臨床を犠牲にして「研究の分野で一流を目指そう」と考えました。また、リサーチフェロー時代には研究以外にも目標意識を持ち、月1本の論文執筆を自身に課していました。
リサーチフェローとして研究キャリアを開始しましたが、自身の研究領域を確立し、徐々にNational Institutes of Health(以下NIH)の研究助成金を獲得できるようになりました。そこで、スタッフを雇用して自身の研究室を構えるまでに至りました。私の研究室では、主に小児喘息や細気管支炎などの小児呼吸器・アレルギー疾患に関する研究を行っています。
グラントの獲得
研究費についてよく質問を受けますが、研究費の大部分は研究者自らがアイデアを出し、獲得するものです。
アメリカではNIHから研究費、特にR01(Independent Research Project Grants)を獲得できてからが一人前といわれています。NIHグラントにも非常に多くの種類がありますが、「R01」は最も一般的なグラントです。日本の基盤研究と異なり、1人の研究者が複数のR01グラントをとることも可能です。上限額は年間US$500,000(×5年間)が一般的のようです。
研究室を維持するためには、日本と異なりシビアな面もあります。アメリカでは研究費から人件費を捻出するため、研究費の獲得ができなくなると必然とスタッフの雇用や給与の支払いも難しくなります。現在の仕事は非常にやりがいのあるものではありますが、研究者の立場は不安定だと言わざるを得ません。その点、日本やヨーロッパの方がアメリカに比べて、研究者の雇用は安定しているといえます。
EMAとの関わり
立ち上げメンバーの一人として、10年前の発足当初からEMAに関わっています。まずは仲間を集めるネットワークづくりから始め、そこから徐々にメンバーそれぞれが興味を持つ分野へと活動を広げ、教育や研究なども行うようになりました。EMAの運営に関われない時期もしばらくありましたが、今回は「EMA festival!」にも登壇者として参加させていただきました。
若手医師、医学生に伝えたいこと
立ち上げメンバーの一人として、10年前の発足当初からEMAに関わっています。まずは仲間を集めるネットワークづくりから始め、そこから徐々にメンバーそれぞれが興味を持つ分野へと活動を広げ、教育や研究なども行うようになりました。EMAの運営に関われない時期もしばらくありましたが、今回は「EMA festival!」にも登壇者として参加させていただきました。

ごく当たり前の事かもしれませんが、海外を目指すのであれば、「spoon-fed(甘やかされること)」を期待してはいけません。あまり気後れせず、覚悟を持ちながら行動してほしいと思います。よく、留学を希望する医師から「コネクションがないのが悩み」と聞きますが、学会に参加して積極的にコネクションをつくるくらいの行動をしてほしいと思いますし、守りに入ることが一番のリスクだと考えます。
技術の進歩が目まぐるしく、将来何が役に立つのか予測も難しい現代において、若いうちに視野を広げておくことはとても重要だと考えます。漠然としているかもしれませんが、例えば世界一周旅行など、健康なうちに「一生に一度のような経験」をしておくと、後々物事の見え方が違ってきます。
<プロフィール>
EM Alliance
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