記事・インタビュー

2016.06.01

「新専門医制度」をどれだけ知っていますか?

新専門医制度画像

医師だけではなく多くの医療関係者が注目している新専門医制度ですが、実際の内容は「よくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
今回は、そもそも新専門医制度とはどんな制度なのか、現行制度との違い、問題点、そして新制度対応のため必要なこと、などについて解説します。

新専門医制度の概要

新専門医制度は「“専門医”の質を担保し公的な資格とすべく、中立的な第三者機関である“一般社団法人日本専門医機構”が設置する19分野の専門医を認定する」というものです。
新専門医制度の大きな特徴は「二段階制」。
新専門医制度に基づく専門医取得を希望する医師は、初期臨床研修修了後、まずは19 基本診療領域(内科や外科など)のいずれかの専門医資格の取得に最低3年を要し、その後サブスペシャルティ領域の専門医(消化器・リウマチ・心臓血管外科など)を目指す事になります。
日本専門医機構は、育成プログラムを認証し、質を担保します。

現行の専門医制度との違い

これまでの制度との一番の大きな違いは「誰が認定するか」という点です。
これまでは各学会が認定していましたが、症例数や経験を要件としたり筆記試験を行ったりする学会がある一方で、一定の講習を受講すれば全ての医師に資格を与える学会もあるなど、基準がバラバラでした。
それにより同じ「専門医」でも少なからず技量にバラつきが出ていたのです。
新専門医制度では中立的な第三者機関が養成段階から評価・認定を行うことにより、どの分野の「専門医」でも一定の診療の質を担保する、とされます。

そもそも何が問題なのか

一見いいことだらけに見える医師の新専門医制度ですが、実は大きな問題をいくつか抱えています。
最大の問題は、新専門医制度に基づく研修を行う「基幹病院」が、大学病院や大病院に限られそう、ということでしょう。
こうした病院が指導医確保に走ることが予想され、新専門医制度開始後の医師は若手・中堅を問わず、指定基準に満たない市中病院や連携施設、特に地方病院に医師が行かなくなる(行けなくなる)ことが予測されます。
この問題については、現在、専門委員会を中心に再検討が始まりました。

今、しておくべきこと

今、しておくべきことはなに?

「新専門医制度元年」を2017年に控え、クリアすべき課題はまだ多くあり、その内容も日々変化しています。
全ての医師に必要なことは、「自分に関係する分野の情報を早く集める」ことでしょう。
これから専門医を取得する医師は、まずは専攻医登録が必要です。
それから、将来、希望する専門領域のプログラムの中から、自分が望む研修が受けられる施設群を確認しましょう。
また、専攻医受入数(採用枠)は、「症例数」・「指導医数」などで決まるとされてきましたが、「過去の採用実績」という指標が追加検討され始め、採用枠が変わる可能性が出てきています。研修施設の追加もあるかもしれませんので、制度全体の行方をしっかり注目しましょう。
サブスペシャルティが決まっていない医師は、どんな進路にでも対応できるよう、どの医療機関でどんな研修が受けられるのか、レジナビフェア(https://www.residentnavi.com/)や自治体・医療機関主催の説明会を利用して、多くの研修施設の話を聞き、進路のイメージをつかみましょう。

専門研修の選定期間が短い上、更なる制度変更も予想されます。
「ご自身のキャリア」の第一歩をしっかりと踏むために、冷静な視点で情報収集するとよいでしょう。
すでに専門医を取得された方は、新専門医制度に基づく専門医の更新要件を日本専門医機構や学会ホームページなどで随時確認することをお薦めします。
※このコラムは2016年5月の状況をベースとしています。

最終更新(2016/06/01)

「新専門医制度」をどれだけ知っていますか?

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