記事・インタビュー

2018.04.25

<海外研究・臨床留学をサポートする病院>札幌徳洲会病院

北海道札幌市の南東に位置し、市内のみならず近郊都市の地域医療・救急医療の中心的役割を担っている「札幌徳洲会病院」。診療だけではなく医師教育も病院運営の大きな柱の一つとして力を注ぎ、国内だけではなく世界を舞台に活躍している医師を多く輩出しています。
そこで今回は、臨床留学を目指す医師へのサポート活動にも尽力する、札幌徳洲会病院 プライマリセンター センター長である中川 麗先生に、臨床留学という視点からみた「札幌徳洲会病院」の取り組みや魅力についてお話を伺いました。

<お話を伺った先生>

中川 麗(なかがわ・うらら)
中川 麗(なかがわ・うらら)
医療法人徳洲会 札幌徳洲会病院
副院長/プライマリセンターセンター長(総合診療科主任部長)

[プロフィール]
東海大学医学部卒
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医/日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医・指導医/日本病院総合診療医学会総合診療認定医/臨床研修指導医/臨床研修プログラム責任者/日本専門医機構認定「総合診療領域」プログラム統括責任者/日本病院総合診療医学会評議員

Q:概要や特徴について教えてください

A:札幌徳洲会病院は301床の中規模病院であり、1983年の開院当初から地域医療と救急医療の充実に力を注いできた臨床研修指定病院です。市内だけではなく近郊からも患者さんが多く訪れ、24時間365日体制で対応しています。

2012年には新築移転し、整形外科外傷センター、プライマリセンター、炎症性腸疾患(IBD)センター、⾎友病センターを開設するなど、従来の機能を強化すると共に、診療の守備範囲を広げながら地域住民の高いニーズに応えています。

常勤医や研修医、専攻医の出身大学はさまざまであり、他病院からの研修医はもちろん、海外医師の短期・長期受け入れや、海外医師を招聘して国際的な会議や勉強会を積極的に行うなど、幅広い人的交流ができることも特徴です。

Q:実際に臨床留学に行かれている医師について教えてください

A:家庭医療を学ぶためにハワイ大学へ臨床留学している医師や、テキサス大学で救急に携わっている医師、さらに家庭医療のティーチングフェローとしてミシガン大学に赴任した医師もいます。海外に赴任した先生方が日本に帰国した際は、当院の研修医や専攻医のティーチングにも係わっていただいています。

シャディア・コンスタンティン先生と中川 麗先生

また、札幌徳洲会病院は、海外で活躍している医師が一時的に日本に帰国している間の所属先としての役割をもっており、海外留学前の医師も短期から受け入れていることが特徴です。
たとえば、「国境なき医師団」に参加している先生方などは日本における軸足として当院に所属し、ミッションによって海外に赴任する際には休暇届けを出していただき、ミッションが終了して帰国した際には当院の勤務医として活躍していただくなど、先生方の海外活動に合わせたフレキシブルな対応をしています。

さらに札幌徳洲会病院では、海外から外国人医師を招聘していることも特徴です。現在、パナマ大学医学部出身で、渡米してUSMLE(米国医師免許試験)に合格し、チーフレジデントにも選ばれた実績をもつシャディア・コンスタンティン(Shadia Constantine)先生が、当院の研修医や専攻医の教育に携わっています。
また、韓国を始めとする海外の医学部を卒業した医師の⽇本での活躍の橋渡しも⼤切な役割と考えています。

札幌徳洲会病院には、臨床留学を経験している医師が多く在籍しており、将来、臨床留学を考えている医師たちにとっての身近なロールモデルとして、大いに参考にしていただけるのではと思います。

Q:海外留学前などの短期勤務の受け入れについて教えてください

A:札幌徳洲会病院では、海外留学前の医師や海外から一時帰国している医師なども受け入れていますが、その際はプライマリセンター(救急診療のその先を担当するいわば総合診療科)での勤務となります。
月単位はもちろん週単位からの短期勤務が可能で、各先生方の状況やスキルに合わせて診療に携わっていただきます。カテーテルや内視鏡に携わりたいなどのご希望に全て沿うことは難しいですが、⼿技にも積極的に参加してもらっています。アメリカに行くにしても、ヨーロッパやアジアに行くにしても、総合診療と救急医療は重要とされる共通分野であり、当院のプライマリセンターでの勤務は臨床留学の現場でも役立てていただきたいです。

Q:国際学会への参加や学会発表のサポートについて教えてください

中川 麗先生

A:札幌徳洲会病院では国際学会への参加を積極的にサポートしています。
研修医は必ず一回、専攻医に関しても年に一回は必ず国際学会で発表していただくようにしています。当院に勤務する卒後5年目の医師を例に挙げると、国内の学会発表に加えて、2年目に国際学会で2演題、3年目からは毎年2~3演題を国際学会で発表をしてもらいました。

最近では、アメリカでの第8回Diagnostic error in medicine米国総合内科学会でなどで複数の演題を発表していますし、当院の整形外科外傷センターには先進的な研究や世界のガイドラインをつくるようなオピニオンリーダーが在籍しており、海外の学会から招待をされてプレゼンテーションをしています。国際学会の発表者には、渡航費も滞在費も補償しています。当院では「若いうちから積極的に世界を経験してほしい」という思いから、初期研修医と専攻医に関して発表者の補償に制限を設けていません。

Q:臨床留学するうえでのコネクションはありますか

A:当院に在籍しているシャディア・コンスタンティン先生は、月に一度(約一週間)、グアムで診療をしているのですが、それに帯同してオブザーバーシップ(一定期間、アメリカの病院で医療行為を見学すること)をしながら、現地の医師と交流を持っていただきます。その際に、留学に必要な推薦状を書いてくれる医師や、ローテーションができる病院を見つけるために多くのアメリカ人医師たちを紹介しており、人脈づくりに活用していただくことができます。

また、国際的な会議や勉強会を定期的に開催していることも特徴で、海外から著名な医師たちを招いています。海外の医師たちに当院の研修医や専攻医、また若手医師の実力をみていただくことで、留学の後押しをするためのコネクションづくりに繋げることができます。また、日本で医師として働くことを目指す外国人医師の入職にも取り組むなど、世界の医師と繋がりがもてる活動も積極的に行っています。

Q:USMLE取得のためのサポートなどはありますか

A:当院のシャディア・コンスタンティン先生は、パナマ大学医学部を卒業後、渡米してUSMLEを取得している医師であり、彼女によるUSMLE合格のための日常的なアドバイスはもちろん、勉強会も開催しています。
USMLEは単に合格すればいいのではなく、スコアの高さによって病院側がレジデント希望者をスクリーニングするため、高得点で合格することが重要となります。(参照:①)
USMLEスコア表
教科書や参考書の勉強だけでは高得点を取ることは難しく、それぞれの診療科に最適な教材で学ぶことや、コミュニケーションスキルも含めた高い英語力が必要となります。シャディア・コンスタンティン先生による勉強会は、USMLEを高得点で合格するためのポイントを押さえ、clinical skillsにも対応できる練習の機会も提供しています。
▼シャディア先生が利用していたQ&Aサイト
http://www.usmleforum.com/forum/index.php?forum=4

Q:臨床留学を希望する医師の採用条件などはありますか

A:特に設けてはいません。
ただし、臨床留学を希望する医師一人ひとりに万全のサポートを提供するために定員数を設けています。
当院の役割は、英語が得意で、臨床留学の準備が既に整っている先生をサポートするのではなく、「英語に自信がないけど、いつか話せるようになりたい」、「臨床留学を実現するためにコネクションをつくりたい」、「USMLEを高得点で合格したい」など、そうした医師たちをしっかりサポートをすることです。臨床留学への熱意と意欲にあふれた医師を大いに歓迎します。

医療法人徳洲会 札幌徳洲会病院
http://www2.satutoku.jp/
北海道札幌市厚別区大谷地東1丁目1-1
TEL: 011‐890‐1110

※2020年2月12日、USMLEのポリシーを3点変更すると発表しました。

  • USMLE STEP 1がスコア制からpass / failへ変更
  • 各STEPの受験可能回数が6回から4回に変更
  • STEP 2CS受験にはSTEP1合格が必須

移行期間は11ヶ月~24ヶ月となっているため、今後受験を考えている方は公式サイトでご確認することをお勧めいたします。
››› USMLE公式サイト

中川 麗

<海外研究・臨床留学をサポートする病院>札幌徳洲会病院

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