記事・インタビュー

2018.07.06

「週刊北原」vol.15 ーグラデュエーションパーティー 別れの季節ー

 

米国イリノイ州にあるシカゴ大学で心臓外科医として働いている北原 大翔と申します。
この企画は、日本で育ち日本で心臓外科医としての研修を受けた僕が、米国での臨床留学中に経験する医療や教育の違い、心臓外科医として、この1週間に対応した症例、手術室で起こる日本ではありえない出来事などを、真面目かつ可能な限りリアルな形で伝えることを目的としています。

今週の症例数

症例 June
24 25 26 27 28 29 30
Sun. Mon. Tue. Wed. Thu. Fri. Sat.
CABG
冠動脈バイパス
1 1 1 1
LTx
肺移植
1 1
Tricuspid valve
三尖弁手術
1

 

グラデュエーションパーティー 別れの季節

米国の6月は日本でいうところの3月、すなわち卒業の月です。卒業していくレジデントやフェローのために心臓外科のチーフが家でグラデュエーションパーティーを開いてくれました。実は僕も今年の8月でフェローを卒業する予定なので、そんじゃ一緒にやっちゃうかというノリでパーティーに招かれました。チーフの家はとても大きく、15人の卒業生(心臓外科、心臓麻酔、ICUチーム、ナースなど)とその他100人くらいの関係者が参加していました。パーティーというのはどうも苦手意識があり、特に話す人もおらず、ご飯を食べ終わったら何もやることなく、ただひたすらはぐれ感を出しながら、ぼーっとするのが今までの僕でした。しかし、2年も米国にいると少しは成長しており、僕と同様のはぐれ感を出している人と話したりなんかして何となく過ごせました。

前に手術中に突然チーフから「何のケーキが好きか」と尋ねられたので、他の英語が浮かばず勢いで特に好きでも何でもないストロベリーと答えたら、ストロベリーケーキをわざわざ作ってくれていました。卒業生全員、15人分のケーキを作っていましたが、おそらく大量に残ったであろうと思います。

 

今週のトピックランキング身近に起きた出来事をランキング形式でお伝えします。

平井先生 さようなら
平井先生の送別会

シカゴ大学循環器内科でフェローをしている平井先生(日本人、珍しい)が6月にシカゴ大学を卒業するのでフェアウェルパーティー(お別れ会)をしました。7月からはカンザスシティ(シカゴの少し南、少し西)の病院に移るみたいです。平井先生とは昨年の8月くらいに知り合い、1年間病院内はもちろん食事会など一緒にさせていただいて、同じ日本人が米国のフェローと同等に渡り合っているのを、非常にかっこいいなと羨望の眼差しで眺めていました。卒業のプレゼントとしてサングラスにカメラがついているSpectacles ver 2.0をあげました。僕も欲しかったので一緒に買いました。平井先生の益々の活躍を祈念します。

ECMO トーク
ECMOトーク

ECMOエクモ(体外循環補助装置、人工心肺的なもの)を皆に伝える講演会のようなものが院内であり、1セッションのプレゼンテーションを担当しました。会自体はECMOブートキャンプとかいう名前がついていました。そういえばビリーズブートキャンプというのが日本でも流行っていましたが、ブートキャンプというのはもともとアメリカ軍の新兵を教育する施設の名前で、その後教育訓練プログラム自体がこう呼ばれるようになったみたいです。

本来プレゼンテーションを行う場合、5分などの短いものではほぼ言うことを暗記して本番に臨むのですが、どこかの偉い人が30分とか1時間とか発表時間が長くなればなるほど準備時間は少なくなるのだ、ということを言っていたのを思い出し、特に準備せずに挑みました。結果、ぐずぐずな30分間の発表になりました。発表翌日、全然知らない人から「昨日の発表グッドだったわよ。英語もすごくうまくなってきているわね、自信もっていいわよ」と特に自信ないとも言っていないのに言われました。告白していないのにフラれる感じに似ています。

パトリックによる恋愛講義
麻酔科パトリックたちとの飯会

金曜の夜、お調子者麻酔科レジデントのパトリックから食事に誘われたので行ってきました。ダウンタウンのはずれにある牛角でした。パトリックは僕に彼女ができるよう色々なアドバイスをくれました、が、どれも参考にはならなそうでした。最も参考にならないな、と思ったのが自己紹介の仕方。パトリックいわく「まずバーで女性に会うだろ、そしたら何の職業をしてるかは言わないんだよ。彼女が職業を聞いてきたら、シカゴで働いてる、とだけ言うんだ。そして何を?と聞かれたら医療職を、医師を、心臓外科を、と段階を踏んで言うんだ。心臓外科がでた段階でもう8割方いけるから、後はダメおしで「君の壊れたハートを治すのが僕の仕事だよ」と言えば確実だぜというものでした。この話を会の途中3回くらい繰り返し言っていたので相当確信があるのだと思います。

 

北原 大翔

1983年東京生まれ。2008年慶應義塾大学医学部卒業。モテるために心臓外科になりアメリカ留学を目指し、2016年より単身渡米。現在イリノイ州にあるシカゴ大学で心臓胸部外科医として働く。独身彼女なし。NPO法人 Team WADA(医師の海外留学情報を発信する団体)で留学ブログを担当。

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北原 大翔

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