記事・インタビュー

2017.10.27

知らないうちに呼吸不全や心不全が進行? 見逃すことも多いレビー小体型認知症髙瀬 義昌

たかせクリニック
理事長

髙瀬 義昌

 前回、ご紹介したレビー小体型認知症について今回は、第四回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が仙台で開催されたおり、筑波大学臨床医学系精神医学の朝田隆教授に教えていただいたことも加味してお伝えします。
まず、生理的なもの忘れについて下表が呈示されることが多いのですが、これは最も多いアルツハイマー型認知症について言われているものと考えて良いでしょう。レビー小体型認知症については、初期から中期にかけてはもの忘れは目立たず、次のような症状がみえます。
① 幻視(いないはずの子どもがいるので食事の用意をしなければとか、妻の隣に知らない男が寝ていると言って大騒ぎするといった妄想につながることがある)や誤認、場合によっては幻聴を訴えたり『背中に虫が這っている』などという体感幻覚を訴えることがあります。アルツハイマー型認知症にみられる被害妄想や物盗られ妄想とは趣が大きく異なります。
② パーキンソン症状により転倒しやすくなります。
③ 認知機能障害があります(症状の発現も進行もゆっくりである印象がある)。
④ 認知機能が日内変動します(ハッキリしている時とボンヤリしている時の差がはげしい)。
⑤ REM睡眠時に大声をあげたり、異常な行動をとって翌日全く覚えていません(この症状はいわゆる睡眠薬や抗不安薬で改善せず逆に症状が悪化することが多い。朝田先生によれば睡眠の異常行動をみたらレビー小体型認知症を疑うとのことです!)。
⑥ 抑うつ症状気分がふさぎこみ、悲観的で、憂うつな状態をいいます。睡眠障害や食思不振が重なり長期化すると、うつ病といわれる状態になります。レビー小体型認知症の場合7割に合併すると言われています。
⑦ 自律神経症状活動する神経といわれる「交感神経」と休む神経といわれる「副交感神経」の二つがうまく切り替わらず、起立性低血圧、便秘、多汗・寝汗、倦怠感など上記の状況やうつ病患も多いことも含め、専門医も見逃すことが多いといわれるレビー小体型認知症を知ることの重要性に気づかれたと思います。

【チェックポイントのまとめ】
□ もの忘れがある
□ 頭がはっきりしている時とそうでない時の差が激しい
□ 実際にないものが見える
□ 妄想がみられる
□ うつ的である
□ 動作が緩慢になった
□ 筋肉がこわばる
□ 小股で歩く・前屈みで歩く
□ 睡眠障害時に異常な行動をとる
□ 転倒や失神を繰り返す

小阪憲司先生によれば5個以上あれば、レビー小体型認知症の可能性ありとのことです! 朝田先生が言われていた最も重要な事は、知らず知らずのうちに呼吸不全や、心不全が進行したり、場合によっては急に発症したり急死に至ることもあるとのことでした。診断については各自ご確認いただきたいのですが、高炭酸換気応答の障害(高濃度の炭酸ガスを吸っても生体側が反応して換気量が増えるべきなのに、脳幹などの障害のため換気量が増えないため)も診断に役立つようです。認知症、うつ、せん妄についても、もう一度おさらいしておきましょう!

 

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※ドクターズマガジン2013年7月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

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