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2025.08.08

書評『Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本』子どもの呼吸、これで合っている?

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

書評『Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本』子どもの呼吸、これで合っている?

日常診療で遭遇する小児呼吸器トラブルは、症例数こそ多くありませんが判断に迷うシーンが山ほどあります。例えば次のようなトラブルが挙げられます。

喘鳴が改善しない…
乳児患者のSpO₂が安定しない…
挿管後のチューブ位置調整に難渋する…

そんな “かゆいところ” をピンポイントで解消してくれるのが『Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本』です。
ニッチ領域をここまで深掘りした書籍は珍しく、日々の診療で「これ、ちょっと聞きたいんだけど…」が浮かぶたびに開きたくなる相棒になるはずです。良かったポイントやおすすめの使い方をお伝えします。

まとめ抗菌薬 表とリストで一覧・比較できる、特徴と使い方
Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本
編集:川口 敦/小田 新/金澤 伴幸/児玉 和彦/庄野 健太/南條 浩輝 ほか
出版社:診断と治療社
価格:6,050円(税込)
発刊:2024/11/23
版型・頁数:A5判相当・356頁
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書評『Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
小児科医、小児救急・集中治療医、周産期医、新生児科医、呼吸療法認定士、PICU看護師、研修医で小児科に興味がある方

【推定読了時間】
356ページを通読するなら 約6時間。
気になる疑問だけ拾い読みするなら 1〜2時間 で主要エッセンスを吸収できます。

2.本書の特徴

【本書の特徴】
●400のQ&A を重要度・難易度・トリビア度の★評価付きで掲載。自分のレベルや緊急性に合わせて取捨選択しやすい
●呼吸診察・画像読影・在宅管理・PICUでの高度医療までを学べる。臨床序列に沿って子どもの呼吸に関する疑問が並ぶので検索も楽
●執筆陣は全国の 小児呼吸のエキスパート。現場の経験値がにじむ実践的回答が多い
●ニッチ領域ながら “誰もが抱くけど教科書に載っていない疑問” を網羅。学会・講演会ネタにも直結する

3.個人的総評

「ここまでニッチな領域を深掘りしたか!」 と唸りました。
本書は小児呼吸のトップランナーが 400の臨床疑問 を集め、重要度・難易度・トリビア度などの多様な評価をつけつつ、まとめ上げた一冊です。

まず目を引くのは、各Q&Aに振られた ★評価。重要度が高いのに難易度が低ければ「まず押さえるべき必須項目」、逆にトリビア度が高く難易度も高ければ「明日のカンファで披露したいネタ」――というように、自分の学習目的に合わせてページを開けます。356ページという分量も、この仕掛けのおかげで驚くほどストレスフリーに感じました。読む順番をカスタマイズできる“疲れにくい仕掛け”が秀逸だと感じます。

内容面では、基礎的な呼吸診察のコツからECMO管理の細かな設定まで幅広く、しかも “臨床現場の疑問形” で記載されているため、そのままコンサルトメモとして活用できる実用度が高いです。執筆陣が現役の小児呼吸エキスパートばかりなので、紙面越しでも「こんな時どうする?」に寄り添ってくれる安心感があります。加えて、各施設で微妙に異なるプロトコルや実践的tipsを惜しみなく披露してくれている点も秀逸です。

総じて、小児呼吸器トラブルという “症例数は多くないが悩ましい分野” で困った時に最初に開くリファレンスブックとして手放せなくなる一冊です。ニッチな領域の医学書好きの私としても、胸が躍りました。

星評価

4.おすすめの使い方・読み進め方

まずは目次を眺めつつ、★★★が付いた 重要度の高いQ を中心に読み進めてください。短い移動時間や外来の合間でも1問あたり数分で消化できるため、忙しい日常でも無理なく続けられます。
次に、PICU当直や在宅指導など特定の場面に直面した際には索引から関連Qを引いてピンポイント検索すると、実践的アドバイスをその場で得られます。
余裕がある週末や勉強会前には、難易度★★★・トリビア度★★★の「知られざる疑問」を拾い読みし、最新知見やユニークなtipsをアップデートしておくと、カンファや指導で一段深いコメントができて重宝します。
最後に、各Q&Aの末尾にある文献リストを活用し、一次文献を読んでみることで 学びの深さ がグッと増しますよ。

5.まとめ

本書は「小児の呼吸管理に困った!」を瞬時に解決できる、臨床密着型Q&Aブックの決定版です。
重要度・難易度・トリビア度などの★評価のお陰で、自分の関心と時間に合わせて学習をカスタマイズできるため、356ページというボリュームを感じさせません。小児呼吸を診る機会が少ない医師からPICUのプロフェッショナルまで、ICUやERに一冊置いておくことを強く推奨したい一冊ですね。
ほかにもレビュー記事を多数掲載していますので、ぜひサイト内を巡回してみてください!

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<プロフィール>

三谷 雄己先生

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
X https://x.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

書評『Q&A400 こどもの呼吸のコモンなギモンに答える本』子どもの呼吸、これで合っている?

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