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2025.06.11

書評『呼吸ECMOおたすけハンドブック ~教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100』~ICU管理の“総合力”を磨くための呼吸ECMOの医学書決定版!

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

書評『呼吸ECMOおたすけハンドブック ~教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100』~ICU管理の“総合力”を磨くための呼吸ECMOの医学書決定版!

ECMO(体外式膜型人工肺)は、重症呼吸不全の患者さんにとって“最後の砦”とも言える生命維持装置です。
しかし、導入するだけで治療が完結するわけではありません。
抗凝固療法はどの程度行うのが標準的なのか?
出血傾向の患者さんがいる場合はどう対応すればいいのか?
呼吸ECMOを導入したけれど、いったい何をもって呼吸ECMO離脱のタイミングを判断すればいいのか――。
こうした疑問に対して、当直中やカンファレンスの場で思わず「うーん」と唸った経験はありませんか?
本書『呼吸ECMOおたすけハンドブック ~教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100』は、まさにそうした“モヤモヤ”に答えるための一冊。
医師・看護師・臨床工学技士・理学療法士・薬剤師・管理栄養士といった、多職種の視点が凝縮されており、ICUで実際に呼吸ECMOを運用するときに直面しそうな悩みや疑問を100項目のQ&A形式でわかりやすく解説しています。
総勢73名が参加した実践知の集大成だけあって、その情報量は圧巻です。

呼吸ECMOおたすけハンドブック: 教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100
呼吸ECMOおたすけハンドブック: 教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100
大下 慎一郎 (編集, 著)/ メディカ出版 発行
価格:4,620円(税込)
発刊:2023/2/20
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書評『呼吸ECMOおたすけハンドブック: 教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】

  • 呼吸ECMOを含む人工呼吸管理に携わる集中治療科・救急科・麻酔科の医師
  • ICUで働く看護師・臨床工学技士・理学療法士・薬剤師・管理栄養士など多職種
  • 呼吸ECMOの“初学者”から“エキスパート”まで幅広く

【推定読了時間】

約6~8時間(280ページのボリュームで、Q&A形式ながら濃密な内容がぎっしり)

2.本書の特徴

本書は「教科書には載っていないリアルな悩みや疑問」を一つひとつ丁寧に解きほぐす、“呼吸ECMOの総合ガイドブック”と言えます。
具体的な特徴を挙げると、以下のようになります。

  1. ①Q&A形式で現場の悩みや疑問を解決
    • 呼吸ECMO導入時の抗凝固コントロールや出血対策、呼吸ECMO離脱基準など、誰もが一度は疑問に思うテーマをQ&A形式でわかりやすく整理。自分の悩みに合った項目をピックアップして読み進められます。
  2. ②ICU管理の“総合力”を高める視点
    • 本書では、肺機能だけに留まらず、循環・感染・血栓・出血・水分バランス・鎮静・筋弛緩・栄養・リハビリなど、多岐にわたるICU管理の要素が盛り込まれています。まさに“ICU管理の縮図”としての呼吸ECMOを学べます。
  3. ③多職種の視点を融合
    • 医師だけでなく、看護師・臨床工学技士・薬剤師・理学療法士・管理栄養士らが参加しているため、それぞれの専門職の知識や工夫が満載。チーム医療における連携のヒントを得られるのも大きな魅力です。
  4. ④議論の多い“コントラバーシャル”なテーマにも踏み込む
    • 呼吸ECMO離脱のタイミングをどう決めるか、自発呼吸再開をいつどのように判断するかなど、エビデンスが確立しきれないコントラバーシャルな領域にも、最新の知見や複数の視点を提示しながら紹介。実践で迷ったときの羅針盤になります。
  5. ⑤マニアックなポイントにも言及
    • カニューレ固定部位の皮膚トラブル対策や、呼吸ECMO中の口腔ケア時の出血リスクへの対処など、細部まで踏み込んだ実践Tipが多数。現場で困る“ちょっとしたコツ”を網羅しているのが、本書の頼もしいところです。

3.個人的総評

本書を読んで強く感じたのは、著者の大下先生をはじめ、多くの執筆者の方々が「呼吸ECMOを通じてICU医療を高めたい」という熱意をもって書かれている点です。
単に手技やデータを羅列するのではなく、「なぜその方法を選択するのか」「うまくいった場合、いかなかった場合の背景には何があるのか」を考え続ける姿勢が伝わってきます。

  • “ICU管理の縮図”としての呼吸ECMO管理
    呼吸ECMO患者さんは、肺機能だけでなく全身管理の完成度が生死を分けることもあります。本書では抗凝固や感染管理だけでなく、口腔ケアや皮膚トラブルへの配慮、リハビリの進め方など、細かなポイントを丁寧に解説。この総合力が身につくのはICU管理全体の質向上にも直結しそうです。
  • 議論の分かれるテーマへの明快なアプローチ
    「いつ呼吸ECMO離脱を検討するか」の問題は、多くの施設で課題になっているはず。本書125ページで取り上げられている「自発呼吸の再開を検討する時期」は、CT所見を重視する“CT優先派”と、呼吸仕事量など生理学的評価を重視する“呼吸生理優先派”という2つの考え方をバランスよく紹介しており、読者が自施設の方針に照らして考えやすい構成になっています。
  • 多職種連携の大切さを再認識
    呼吸ECMO患者さんは抗凝固療法を行うことが多く、口腔ケア一つをとっても出血リスクが高まります。そうした現場のリアルを、看護師や臨床工学技士の視点で補足しているため、“チーム医療”の重要性がより具体的に理解できます。呼吸ECMOの患者さんを診ることで、ICUスタッフ全員が連携しなければ良い転帰を得られない――まさに呼吸ECMO管理がチーム医療の真髄を体現するのだと改めて感じました。
  • 悩んだときに“立ち返れる”便利さ
    Q&A形式と見出しの明確さ、そして280ページというボリュームは、困ったときの即参照に最適です。たとえば「カニューレ固定による皮膚潰瘍を防ぐには?」などのマニアックなトピックもカバーされており、ちょっとした悩みや疑問が頭に浮かんだときにもすぐ解決につなげられます。

4.おすすめの使い方・読み進め方

  1. ①まずは気になる疑問を“拾い読み”
    • 「呼吸ECMO導入時の抗凝固量はどれくらい?」「呼吸ECMO離脱基準は?」「口腔ケアは?」など、日頃から抱えている悩みや疑問を目次やQ&Aから探して、ピンポイントでチェックするのがおすすめです。
  2. ②チームで共有し、カンファレンスの資料として
    • 看護師や臨床工学技士、理学療法士などと一緒に、各章の重要ポイントを抜粋しながら勉強会を開くと、より効率的に学べます。チーム全員が同じ知識基盤を得られるのは大きなメリットです。
  3. ③離脱の判断など“コントラバーシャル”な箇所をじっくり
    • 呼吸ECMO患者さんの管理で一番悩ましい呼吸ECMO離脱時期や再開タイミングなどのセクションは、論文検索や他施設の実例と照らし合わせながら読むと理解が深まります。
  4. ④実際の臨床で疑問が出たら立ち返る
    • 呼吸ECMO中の皮膚トラブルから口腔ケア、リハビリ開始のタイミングなど、実際に現場でぶつかった壁を本書で確認すると、より実践的にノウハウが吸収できます。
  5. ⑤通読で“ICU管理の集大成”を頭に叩き込む
    • 時間に余裕がある方は、一気読みで呼吸ECMO管理の全貌を把握すると、今後のケア・治療戦略を立案しやすくなるでしょう。ICUスタッフ全員の座学用テキストとしても適しています。

5.まとめ

『呼吸ECMOおたすけハンドブック ~教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100』は、まさに「呼吸ECMOのQ&A辞典」。

一見マニアックな領域に思える呼吸ECMOですが、ICU管理全般の知識と技術が集約された治療法と言えます。

抗凝固量や呼吸ECMO離脱基準などのシビアな課題に留まらず、口腔ケアや皮膚トラブル対策、リハビリや栄養管理といった多職種連携の重要性も俯瞰できるのが本書の魅力です。

Q&A形式で読みやすく、情報量も豊富なので、ICUや救急の現場で呼吸ECMOを使う機会が増えた方、あるいはこれから呼吸ECMOを勉強したい方には、絶好の“学びのパートナー”となるはず。

困ったときにサッと開いて、リアルなヒントを得る――そんな使い方をぜひ試してみてください。

6.医書レビュー

基本情報 書名:呼吸ECMOおたすけハンドブック: 教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100
編著者:大下 慎一郎(編集・著)
出版社:メディカ出版
発売日:2023/3/20
ページ数:280ページ
ターゲット層

●集中治療科・救急科・麻酔科など、呼吸ECMOを扱う可能性のある医師
●ICUに勤務する看護師・臨床工学技士・理学療法士・薬剤師・管理栄養士
●呼吸ECMOの初学者からエキスパートまで

推定読了時間

約6~8時間(Q&A形式とはいえ情報量が多いので、じっくり読むのがおすすめ)

本書の特徴

●100項目のQ&A形式で、ICU管理のリアルな疑問・悩みを網羅
●抗凝固量や呼吸ECMO離脱基準といったコアな領域だけでなく、口腔ケア・皮膚トラブル対策などマニアックなトピックもカバー
●医師以外の職種(看護師・臨床工学技士・薬剤師・管理栄養士・理学療法士など)の視点を取り入れた総合的な内容

本書で学べること

●呼吸ECMO導入時の抗凝固管理、出血傾向患者の対処
●呼吸ECMO離脱のタイミング、リハビリや再開の目安
●口腔ケアや皮膚保護など、細部にわたるICU管理の実践ポイント
●多職種連携を活かしたECMO管理のあり方

本書のおすすめの読み方・活用方法

●まずは興味のある疑問を拾い読み
●チーム全員で気になる項目を勉強会で共有
●呼吸ECMO離脱時期などのコントラバーシャルな領域を論文検索や他施設事例と照らし合わせ
●実際の臨床で困ったことがあれば、その都度本書を参照

評価
購入先 呼吸ECMOおたすけハンドブック: 教科書には載っていない、現場のギモンと実践Tips100

本書のまとめ 『呼吸ECMOおたすけハンドブック』は、呼吸ECMOが抱えるあらゆる疑問を“Q&A形式”でまとめた実践的ガイドです。ICU管理のすべてが詰まった治療法としての呼吸ECMOを、複数職種の視点から捉えているので、多職種連携の真髄を学ぶ良書とも言えます。最新のトピックやマニアックなポイントにも深く踏み込んでいるため、呼吸ECMO初心者からベテランまで幅広く活用できるでしょう。

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<プロフィール>

三谷 雄己先生

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
X https://x.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

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