記事・インタビュー

日本医療は、今や世界にもさまざまな影響を与えています。その理由のひとつが医療ツーリズム。それでは、医療ツーリズムの実際について見ていきましょう。
観光分野は病院にも!医療ツーリズムとは
グローバリゼーションは、もはやモノやサービスだけに限りません。医療の分野においても広まりを見せています。それが、「医療ツーリズム」と言われるものです。買い物や旅行だけでなく、病院についても、選択肢は世界に広がっています。
医療ツーリズムとは海外の病院で治療を受けること。
症状がさほど深刻でない場合には、旅行のように治療法や検査について調べ、より自分の希望に近い形で実現してくれる医療機関を選ぶというケースも。
日本でもこうした流れを受け、その需要を取り込もうとしている医療機関が少なくありません。
現場ではどうなっている?医療ツーリズムの現状
先進国の中で、日本は医療ツーリズムにおいて遅れをとっていました。
しかし、2010年に「医療滞在ビザ」を認める閣議決定が下りたことにより、一気に拡大。各医療機関がその対応に知恵を絞るようになりました。
海外からみると、日本の医療技術のレベルは高く、費用がさほど高額ではないという点が魅力です。同じ手術が北米では日本の倍以上、もしくは数千万円といった桁違いの費用がかかる場合も少なくありません。
ヨーロッパ諸国は、医療費負担はそこまでではないものの、手術を受けるまでに長い時間がかかる、といった問題が挙げられています。
また、アジア諸国では医療の発展が遅れている地域も多く、医療費が高額であるということからも、日本での治療を希望する患者が出ています。
医療ツーリズムのメリット
日本の医療現場から見た医療ツーリズムのメリットは、どのようなものでしょうか。
まずは、「医療業界の活性化」という点が挙げられます。
医療ツーリズムの受け入れが拡大すれば、それだけ世界との競争を強いられます。経営的には厳しい面も出てくるでしょうが、正常な競争は医療技術の発展やサービスの改善、新技術の導入などにつながるでしょう。
また、特徴ある医療で海外からの患者を呼び込むことで、過疎化の進む地域医療の再建にも貢献することが期待されています。
さらに、医療ツーリズムにおける患者が観光などの周辺産業にも貢献することで、経済的な効果も期待されます。医療の発展だけでなく、日本全体の発展にも期待できるということです。
医療ツーリズムの弊害
ただ、医療ツーリズムの発展を手放しで喜べるわけでもありません。日本医師会は、医療ツーリズムが国の健康保険制度を崩壊させることを懸念しています。
健康保険が適用される治療には、当然ながら限りがあります。
しかし、外国からの渡航者がよりレベルの高い「保険外治療」を望めば、そちらの方が病院の利益を生むことも事実です。つまり、病院が利益優先で際限なく医療ツーリズムを取り入れれば、日本の保険適用の患者の治療がそっちのけになってしまうのでは、という不安です。
日本医師会はこうした点を踏まえ、医療ツーリズムにしっかりしたガイドラインを作る必要がある、と提唱しています。
医療ツーリズムの今後とは
このように、医療ツーリズムは医療の発展や経済的効果において大きな魅力があります。実際に、海外の多くの国では一つの産業として定着しています。
しかし、今後、日本で定着させるには、問題解決の策も必要となるでしょう。

世界的にも評価が高い日本の医療を、うまく医療ツーリズムに乗せるには、経済的なインバウンドをもとめるのではなく、日本の健康保険制度とのバランスを考えた解決策や法整備が必要です。
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