記事・インタビュー

2021.12.20

パラレルキャリア~臨床しながら、第二のキャリアを築く~

医師だけど、医師以外の活動にも力を入れる二人。そのきっかけとこれから
医師の皆さん、パラレルキャリアという言葉をご存じでしょうか。

『知の巨人』、『マネジメントの父』と呼ばれるピーター・F・ドラッカーが「明日を支配するもの」(ダイヤモンド社)で紹介した考えでは、パラレルキャリアとは、「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」と定義されています。

医師で置き換えると、医師=臨床医というイメージが一般的ですが、医師+αで活躍している医師も多くいらっしゃいます。このシリーズではその+αの分野をどう展開しているのか、本業である臨床とどう結びつくのか、目標や目的などを深く掘り下げて話をしてもらっています。

第一回目のゲストは、医師×海外留学ということで、北原大翔先生と瀬嵜智之先生のお二人に対談していただきました。パラレルキャリアだけでなく、セルフブランディングをいかに行うか、モチベーションの保ち方、臨床とのバランスなど、ざっくばらんにお話しいただきました。

<お話を伺った方>

北原 大翔(きたはら・ひろと)
東京都出身。慶應義塾大学医学部卒業。心臓外科医。
モテるために心臓外科医となり、2016年より渡米。
現在イリノイ州シカゴ大学で、心臓胸部外科医として働く。
海外の医療者を中心に構成されたNPO法人『Team WADA』代表。
海外情報をリアルタイムで発信しつつ、医療関係者、医学生の海外留学・就労の支援や海外で働く医師同士の交流の場を提供している。

<お話を伺った方>

瀬嵜 智之(せざき・ともゆき)
愛知県出身。山形大学医学部卒業。精神保健指定医。
愛称は「セザキング」。合同会社U-Consultant代表。
高校時代の英語の偏差値は30台だったが、医学部6年生の4月にUSMLEのSTEP1に最高スコア99(当時)で合格し、難関のSTEP2CSも含め、全STEPに一発合格。
「Dr.セザキング直伝!最強の医学英語メソッド」(医学書院)はAmazonランキング1位を獲得。blogやTwitter、YouTubeでUSMLEの情報・試験対策を幅広く発信。経営するオンラインサロンでは合格率95%と多くの合格者を輩出している。

自分にしかできないことって何だろう?

Q:お二人は医師として臨床以外でもさまざまな活動をなさっていますが、なぜそうした活動に関わるようになったのでしょうか。
瀬嵜 智之先生瀬嵜 智之先生

 瀬嵜 先生 
正直、昔から「こういう医師になりたい!」という理想像を持つことができませんでした。山形の片田舎にいたということもあり、医師と言えば病院の先生か、クリニックの先生、または研究者の3本立てで、その中から選ぶのが常識でした。しかし、どれだけ勉強しても臨床医としてこうなりたいというイメージがわかなかったのです。ただ生業として臨床医をすることで生計を立てる必要もあると考え、東京に出て色々な価値観と触れ合い、そして相対的に興味があり汎用性の高い精神科を専攻することにしました。USMLEを勉強しており、おせっかいな性格も相まって、多くの方の相談に乗るようになっていきました。教えることで相手に喜ばれ、そして自分も楽しさを感じるこの「USMLEコンサルト」に自分の使命があるのではないかと思い、それをメインの仕事に変えたという感じです。

北原 大翔先生北原 大翔先生

 北原 先生 
カッコいい心臓外科医になりたくて、症例に多く携わることができるアメリカ留学を志し、5年前からアメリカで心臓外科医として働いています。アメリカで働いてわかったことは、確かに日本にいるよりもアメリカのほうが、自分の理想とする心臓外科の仕事がたくさんあるのですが、同時に私がいなくなってもすぐ誰かが代わりになれる仕事なんだという現実が見えてきました。
その時に、何か別のことをやってみたいと思い、Team WADAを立ち上げ、海外留学情報を発信するためのYouTubeを始めました。

想像以上に狭い、医師の世界

Q:情報発信や自分自身のブランディングは大変だと思いますが、今やってみていかがですか。

 北原 先生 
楽しいですよ。人って偉くなれば偉くなるほど他者から直接的に批評されなくなると思うのですが、YouTubeはたくさんの人が良くも悪くも匿名で自由に評価してくれます。知らない人が見てくれて、フィードバックまでもらえるなんて本当にありがたいです。

 瀬嵜 先生 
医療の世界って、どうしてもお医者さんがリーダーにならざるを得ないし、若い頃から「先生。先生。」と言われると自分の本当の価値や実力を見誤ってしまいがちだと思います。一方で、「医師」という肩書だけでは勝負できない世界は非常にシビアです。もちろん、ビジネスの世界でも「医師」というブランドを使って戦うのですが、それ以上に実力が如実に反映される世界なので、それは面白さでもあり恐ろしさでもあるなと思っています。

 北原 先生 
学会なんか特にそうですよね。偉い先生の発表とか、感想を聞かれたらみんないいことしか言わない。いつか感覚が麻痺してしまうと思います。

Q:現在お二人の仕事のベースは、医師、医師以外どちらなのでしょうか?

 瀬嵜 先生 
ベースは自営業のほうです。つまり、コンサルト業がメインです。ただ、臨床医を続けることでそれがコンサルトや予備校講師の仕事にもいい影響があるので続けています。特に精神科の講師としては、最低限の臨床を継続していないと感覚が鈍ってしまうので意識的にやるようにしています。

 北原 先生 
私は心臓外科医がメインです。それでお金を稼いでいますので。

医師だけど、医師以外の活動にも力を入れる二人。そのきっかけとこれから

Q:今の悩みなどありますでしょうか?

 瀬嵜 先生 
「悩む」という言葉を使うと思考が制止しがちなので、あまり使わないようにしているのですが、敢えていうなら色々な意味で「不安定」なことでしょうか。給料はなく、自分で考えて稼がないと食べていけないので日々歩みを止めないようにしています。現状維持は衰退なので、常に変化をしていかないといけません。1年後はまだ想像できますが、10年後の自分がどうなっているか全く想像できません。安定を好むか、不安定を楽しむか。仕事はこの二択だと思うんです。僕は後者を選択したので、歩み続けていくつもりです。

 北原 先生 
新しいものを作り出す、つまりコンテンツ制作は遊びでやっているとものすごく楽しいけれど、それを仕事にするのは大変ですよね。だからずっとクリエイター1本で仕事をしている人って本当にすごいと思います。
あ、今の悩みですか?YouTubeの登録者がもっと増えて欲しいですね。

「これから」をどう考える?

Q:10年後のビジョンを教えてください。

 北原 先生 
具体的には特に考えてないです。理想としては、週3日くらい心臓外科医として仕事をして、あとはやりたいことをする、みたいな夢を見てます。Team WADAは団体としても大きくしたいですね。そのためにも、今後5年くらいはしっかりと心臓外科医としての仕事をしないといけないかなとも思います。おそらく、10年後もアメリカがベースになっていると思うけれど、日本に戻ることも選択肢としてはあります。

 瀬嵜 先生 
今一番力を入れているのはオンラインサロンなのですが、ここをHUBみたいにしていきたいです。勉強するだけの場所ではなく、皆に居場所になれるような場所にして、そこから留学のコネを作ったり、バイトを紹介し合ったりと縁を繋げるような場所にしたいです。これ以外には、USMLE専門の予備校や英語で診療するクリニックにも興味があります。全く方向性が違いますが、飲食店もやってみたいです。

ベースは「楽しく!」

Q:最後に、『民間医局コネクト』の読者へメッセージをいただけますか。

 瀬嵜 先生 
こういう活動をしていると、常識にとらわれない医師が周囲から集まってくることがとてもおもしろいです。実は臨床以外に興味のある医師・医学生って沢山いるんです。もし臨床以外のことに挑戦したいなら、「自分は医師だから」とか、「お金がない」とか、「時間がない」とか、そういう思い込みを一度取っ払ってとりあえずチャレンジしてみることです。正直、医師はバイトだけでも生活できるのでお飯食い上げになることはほぼありえません。挑戦しないと損なんです。勉強も留学も仕事もどんどん挑戦して沢山失敗していきましょう!

 北原 先生 
YouTubeのチャンネル登録よろしくお願いします!(笑)

Team WADA YouTubeはこちら≫

医師だけど、医師以外の活動にも力を入れる二人。そのきっかけとこれから

北原 大翔、瀬嵜 智之

パラレルキャリア~臨床しながら、第二のキャリアを築く~

一覧へ戻る