記事・インタビュー

2018.04.05

新専門医制度「サブスペシャルティ領域」の仕組みと課題

新専門医制度「サブスペシャルティ領域」の仕組みと課題

2018年4月よりスタートした新専門医制度は、基本領域のほかサブスペシャルティ領域が存在します。サブスペシャルティ領域とは何なのか、制度の課題を含めて、現在までの論点を整理します。

基本領域とサブスペシャルティ領域

既存の専門医制度は各学会が制度設計と認定プログラムの構築する、というものでした。
しかし、認定の裁量が完全に各学会に任されるため、専門医が乱立し質が低下している、という指摘がありました。
そのため、2011年から「専門医の在り方に関する検討会」が発足し、新しい専門医制度を構築することになりました。
新専門医制度では、精度設計とプログラム認定を行うのは各学会ではなく、中立的な第三者機関である「一般社団法人日本専門医機構」です。
そのため、中立性と専門医の質が保証されることが期待されています。
また新専門医制度では、基本領域とサブスペシャルティ領域の二段階制が採択されています。サブスペシャルティ領域はより専門性が高く、取得にはまず基本領域で専門医を取得する必要があります。基本領域は全19あります。

<基本領域>
1 2 3 4 5
総合内科 小児科 皮膚科 精神科 外科科
6 7 8 9 10
整形外科 産婦人科 眼科 耳鼻咽喉科 泌尿器科
11 12 13 14 15
脳神経外科 放射線科 麻酔科 病理 臨床検査
16 17 18 19
救急科 形成外科 リハビリテーション科 総合診療科

 

より専門性の高いサブスペシャルティ領域の専門医は以下の29が存在します(変更の可能性あり)。

<サブスペシャルティ領域>
1 2 3 4 5
消化器 循環器 呼吸器 血液 神経内科
6 7 8 9 10
老年病 腎臓病 肝臓病 糖尿病 内分泌代謝
11 12 13 14 15
リウマチ アレルギー 感染症 消化器外科 心臓血管外科
16 17 18 19 20
小児外科 呼吸器外科 小児循環器 小児神経 小児血液、がん科
21 22 23 24 25
周産期 婦人科腫瘍 生殖医療 脊椎脊髄外科 手外科
26 27 28 29
頭頸部がん 放射線治療 放射線診断 集中治療

 

サブスペシャルティ領域の専門医を取得するには、まずは関連性のある基本領域において専門医を取得していることが要件となります。
基本領域で「内科専門医」を取得した医師はサブスペシャルティの「腎臓専門医」「消化器専門医」を取得できますが、「放射線診断」「呼吸器外科」の専門医取得は難しいとされ、さまざまな分野の経験を持つ医師のキャリア形成がしにくいと指摘されています。
また新専門医制度の設立に伴い、「総合診療科専門医」が新しく認定されました。地域医療とプライマリ・ケアを担い、総合的な診断能力を持って適切な診察と治療を行い、必要に応じて専門の検査設備や専門医が存在する病院を紹介する、というのがその役割のイメージです。
しかし、基本領域で総合診療科専門医を取得すると、現在のところサブスペシャルティ領域に進むことができません。取得する基本領域の専門医によって進路の幅が狭まってしまう可能性があることも懸念点です。

新専門医制度は、本来2017年からスタートし、2020年に新専門医が誕生する予定でした。
しかし、研修施設の認定基準、エリア偏在の問題、総合診療科の位置づけ、サブスペシャルティのあり方、指導医や資格更新の定義などに、各方面から疑問が提示され、1年間の開始延期が決定しました。
今後の議論で制度のかたちが一つずつ作られてくるでしょうが、研修医がキャリア形成につまずかないよう、建設的な議論が望まれます。
※このコラムは、2016年9月の状況をベースとしています。

サブスペシャルティ領域の専門医はより専門性が高く、医師としての技能とキャリアを積み上げていくために重要な要素になります。
新専門医制度はまだ内容が完全に決定しておらず、その動向を注視する必要があります。

最終更新(2018/4/5)

新専門医制度「サブスペシャルティ領域」の仕組みと課題

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