記事・インタビュー
外科医ならば一度は「いつまで現場の第一線でメスを握り続けることができるのだろうか」と考えることがあるはずです。そこで今回は、医師のキャリアチェンジをテーマに、外科医の転科について解説していきたいと思います。
「その先のキャリア」を考える
外科医には、最新の知識と高度な技術を維持、研鑽し続けることが難しくなる時が訪れます。年齢を重ねるごとに意欲の低下や将来に不安を覚える方もいるでしょう。そうした、いつか必ずやってくる「メスを置かなければならないとき」を見据え、今現在の外科医としてのスキルやキャリアを高めていくことと並行して、早い時期から、その先のキャリアを考えておくことも大切です。
実際には、手術件数を減らして後進教育の時間を増やしたり、臨床以外への対応も求められる医療機関に転職をする、あるいは、まったく新たな領域に挑戦するといった形があります。そして、このあとご紹介する「他科に転科をする」キャリアチェンジも選択肢の一つです。
外科系がキャリアチェンジしやすい分野と診療科
外科医としての専門性を活かせるキャリアチェンジの例をいくつか挙げてみます。
一般外科医
外科処置も求められる一般内科(総合診療医)や在宅医療など。一般外科医は解剖に熟知しているため、内科医としても有利。
消化器外科医
専門臓器が変わらない消化器内科領域。
脳神経外科医
専門臓器が変わらない脳神経内科。また、リハビリテーション科や健診施設(脳ドック)の健診医としてもニーズが高い。
整形外科医
リハビリテーション科。特に回復期リハビリテーション科は、老年人口が多くなるため需要が高い。
心臓血管外科医
専門臓器が変わらない循環器内科。あるいは、循環器系疾患を得意とする内科医になる。周術期の全身管理にも携わっているため内科系にも優位。
呼吸器外科医
専門臓器が変わらない呼吸器内科。老年人口が多くなるため呼吸器疾患が増加し、需要は高い。
泌尿器外科医
腎臓内科と密接な関係にあるため、腎臓内科や透析管理、透析の専門外来などの分野。
徐々に診療の幅を広げてキャリアチェンジ
外科医が転科しやすい診療科があるとはいえ、そこですぐに活躍することは難しいでしょう。市中病院に勤務する外科医は、日頃から幅広い領域の診療に携わることもあるため比較的転科しやすい傾向にありますが、専門領域に特化した大学医局に所属している外科医は、求められることの違いに戸惑うかもしれません。トレーニングとして、キャリアチェンジをする前から診療の幅を徐々に広げ、経験を積んでおくことをオススメします。
方法として、キャリアチェンジの準備を目的とする「内科系のアルバイト」をすることも一つです。内科系のアルバイトは求人も豊富なことから、外科医でもアルバイトを探しやすいことが特徴。そこで経験を積んでから転科をすれば着実と言えるでしょう。
外科系にも需要が高い「在宅医療(訪問診療)」
外科医として培ってきた「術後の全身管理能力」や「緊急対応能力」は、さまざまな医療機関で必要とされています。
高齢化社会に突入した近年は特に「在宅医療(訪問診療)」のニーズが高く、求人数も全国的に増加。しかも、一般的な内科診療ができれば科目不問であることが多いことが特徴。また、在宅医療の経験がない医師へのサポートはもちろん、教育制度が充実した医療機関も多くあるため、実地訓練を積むことで十分対応できるようになります。
整形外科医の内科系への転科にはそれなりのトレーニングが必要となりますが、訪問リハビリテーションを実施している医療機関では、その活躍が期待されます。
在宅医療(訪問診療)で働くことは、自身の親が要介護になった際にも活かすことができるなど、外科系医師のキャリアチェンジの一つとして注目されています。
››› キャリアチェンジ:救急医から在宅医へ(コールメディカルクリニック福岡 岩野院長)
この他、「患者対応力」や「精神的ケア」、そして「マネジメント能力」と「人柄」が求められる施設長・病院長を広く募集しているのが、老人保健施設や介護老人保健(福祉)施設、介護療養型医療施設、また介護施設を併設している病院などです。
とはいえ、フィジカルアセスメントやプライマリケアの診療能力は必要とされます。そうした内科系の知識や技術もアルバイトで学びながら、将来の可能性に備えてはいかがでしょうか。
<参考>
››› 厚生労働省職業安定局 「人材サービス総合サイト」
››› 厚生労働省 職業安定法の改正職業紹介事業者の皆様へ~事業運営のルールが変わります~<職業安定法の改正>
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