記事・インタビュー

2016.06.08

女性医師の復職 ―院内保育のポイント―

column15_1

平成26年の厚生労働省の報告では、医師全体の20.4%を女性医師が占めています。
女性医師が出産後も継続して働くためには、大事な子どもを安心して預けられる保育施設の充実が必要です。
今回は、女性医師が復職の際に考えるべき院内保育のポイントについてまとめます。

復職しやすい院内保育のポイント

1. 認可保育施設と認可外保育施設

認可保育施設とは厚生労働省が定めている一定の基準を満たし、都道府県知事が認可した保育施設です。
認可の基準は「設備」や「保育士の人数」などであり、具体的には「8時間保育を実施できる」「アルバイト職員が2割以下である」「調理場や遊戯室がある」「避難経路がある」ことなどです。
認可を受けると国や自治体から運営費に対して助成を受けられます。
認可外保育施設は名前の通り、認可を受けていない保育施設のことです。
院内保育や利便性の高い駅前の保育施設は無認可がほとんどです。とはいえ、「認可外は保育の質が悪い」とは一概に言えません。
規模は小さくても、手作りのおやつや食事を提供したり、延長保育などの保育時間にも柔軟に対応したりする施設もあります。また、国の認可基準は満たしていなくても「東京都の認証保育施設」などのように自治体が定める基準を満たし、自治体から助成金を給付されている保育施設もあります。

2. 費用について

認可保育施設は国から運営費の助成を受けているので、認可外保育施設に比べて保育料が低く抑えられる傾向があります。
認可・認可外とも保育料は子どもの年齢で変わります。また、認可の場合、世帯収入でも変わります。
院内保育所のほとんどが認可外ですので、認可保育施設よりは割高になることが多いですが、職場に近くて安心なことや医師の不規則な勤務時間にも対応してくれる点で利用しやすいといえます。

3. 保育時間

医師の就業時間は早朝から夜遅くに及ぶこともあり、当直が必要になる可能性もあります。また、土日や祝日も患者の状態を確認するために出勤することもあるでしょう。このような状況に柔軟に対応できることが院内保育の強みです。
具体的には、延長保育、夜間保育、24時間保育、休日保育などに対応してくれるところが多いでしょう。
当日の依頼でも可能など、幼少の子どもをもつ医師の強い味方です。

4. 病児保育の有無

小さい子どもは、急な発熱や下痢などを起こすことが多くあります。
できれば具合が悪い時くらい「子どもと一緒にいたい」と思うことが普通ですが、医師の仕事の特性から、それが難しい場合も。
院内外で病児保育を実施する施設や事業者を探しておくと安心です。

今後期待される院内保育所の役割

column15_2

政府の公的支援により、保育施設を新たに院内に設置するための補助金などが助成された影響で、院内保育所は平成20年以降増加傾向にあります。
総務省による「医師などの確保対策に対する行政評価・監視」の報告では、調査対象となった112の院内にある保育施設のうち、24時間保育に対応しているのは全体の約60%、休日保育に対応しているのは約50%、緊急一時保育に対応しているのは約40%、病児保育に対応しているのは約25%という結果でした。
医療従事者の不規則な勤務時間にも対応できる施設が増えていると考えられます。
厚生労働省が行っている「女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会」の報告書において、今後の院内保育所に対する取り組みの方向性が挙げられていたのでいくつか紹介します。
・院内保育所は早朝からの保育や延長保育、24時間保育を行い、食事の提供や駐車場の優先利用など柔軟な対応が必要である。
・子供が急に発熱した時にも対応できるような病児保育を行える院内の保育施設の確保は、育児をしながら仕事を継続するために必要である。
・規模の小さい医療機関などで、延長保育や病児保育の対応ができない場合には民間のベビーシッターサービスなどを利用しやすいような対策が必要である。
医師は、院内のカンファレンスや家族への病状説明、ましてや患者の急変などが起きると定時に帰ることができない環境で働いています。
また、子どもが熱を出していても、患者を置いて仕事を抜けることは難しい場合が多いでしょう。なかには、産後や育児中は当直が免除になる医療機関もありますが、医師数が少ないためまだまだ不可能な施設のほうが多いのが現状です。
今後は、復職後の女性医師が安心して働けるよう、医師の職業特性に合わせて細かいニーズに対応した院内保育所の整備が求められるでしょう。

最終更新(2016/06/08)

女性医師の復職 ―院内保育のポイント―

一覧へ戻る