アンケート記事

2024.06.27

医師の8割がふるさと納税を経験、少数派ながら制度に疑問を持つ人も 〜ふるさと納税アンケート〜

ふるさと納税は自分で選んだ自治体に寄付(納税)を行った場合、寄付額が所得税などから控除される仕組みです。税金の控除や自治体への貢献、返礼品を目当てにするなどの理由で多くの人が行っています。では、医師や初期研修医、医学生はどのくらい行っているのでしょうか? 民間医局コネクトでは、ふるさと納税についてアンケートを実施し、2,576名から回答を得ることができました。アンケートからは、総じてふるさと納税に対する認知度や利用率は高いものの、制度に対して疑問を抱く人も少なからずいることがわかってきました。

[ 目 次 ]
・ふるさと納税について「よく知っている」「なんとなく知っている」と回答した人は約9割
・ふるさと納税の経験者は約8割、かつ約7割が「ほとんど毎年行っている」
・節税対策や返礼品に魅力を感じてふるさと納税を行う人が多数だが、自治体への応援や、社会貢献を動機にする人も少なからずいる
・ふるさと納税を行わない主な理由は、仕組みについての知識不足、金銭的余裕のなさ、手間の面倒さ
・自治体への貢献を理由にふるさと納税をする方は、出身地であるとか、居住経験の有無が、納税先の選定基準となっている
・上記の方々に人気の納税先は北海道がダントツ。令和6年能登半島地震の影響か、例年と比べ石川県を納税先に選ぶ方も多かった
・ふるさと納税を行うタイミングは、「年末」と「魅力的な返礼品がある時」が多数
・最も人気のあるふるさと納税サイトは「楽天ふるさと納税」
・1回あたりの平均納税額は1位が「20,001円以上」38.5%、2位が「10,001〜15,000円」37.4%
・自身のふるさと納税の控除上限額は、「だいたいの額を把握している」「詳細の額を把握している」で100%近くを占める
・返礼品で人気の品は、肉類、魚介類、果物類、米穀類など
・返礼品は自分で決めるか、夫婦で話し合って決めることが多い
・ふるさと納税の納税先は返礼品の魅力で選ばれる傾向にあるが、支援や応援をしたい自治体だからという理由で選ぶ人も一定数いる
・ふるさと納税は納税者にとっては良い制度だが、自治体にとっては悪い面もあるととらえられている
・個人としてはふるさと納税を続けていきたいと考えつつも、制度としてはやや疑問を感じているという傾向がある

ふるさと納税の認知している人は約9割、利用率は約8割!

まず、医師や初期研修医、医学生の方々に「ふるさと納税」は、どれくらい認知されているのでしょうか。質問をしたところ、「よく知っている」62.3%、「なんとなく知っている」27.6%と、9割近くがふるさと納税について知っていることがわかりました。逆に、ふるさと納税を知らない人は、「あまり知らない」5.0%、「まったく知らない」0.8%と、少数派であるという結果になりました。

Q:ご自身は「ふるさと納税」について、どの程度ご存じですか(回答数2,576)

では実際にふるさと納税を行ったことのある人は、どれくらいいらっしゃるのでしょうか。質問をしてみると、「ほとんど毎年行っている」と答えた人が72.7%。これに「毎年ではないが、時々/たまに行っている」3.8%、「これまでに1〜2回行ったことがある」5.2%を加えると、8割近くの人がふるさと納税を行ったことがあるということになります。

参考までに、株式会社インテージが年収300万円以上の生活者5万人を対象に実施した「ふるさと納税実態調査」(※)の結果を参照すると、2022年のふるさと納税の利用率は28.0%。この数値と比べても、約8割という数値がいかに高いものかが、おわかりいただけると思います。

※出典:インテージ「知るギャラリー」これからどうなる?ふるさと納税〜ふるさと納税実態調査①〜2023年10月10日公開記事
https://gallery.intage.co.jp/furusato-nozei2023/

Q:ご自身は、「ふるさと納税」を行ったことはありますか。※配偶者名義で行った場合も含めてください(回答数2,576)

ふるさと納税を行ったこともある人に、その理由を伺ってみると、「節税対策」1528票、「返礼品が魅力的」1,544票の2つに、票が集中しました。その他の理由では、「自治体への貢献」477票と回答した人が多く、次いで「周りで行っている人が多い」320票、「社会貢献ができる」308票が同じくらいの票数で並びました。

Q:ご自身が「ふるさと納税」を行った理由を教えてください(複数回答可、回答数2,107)

ふるさと納税を行ったことがないと回答した人も、少数ながらいます。行ったことがない理由は、「制度についてよくわからない」129票、「寄付をするほど金銭的な余裕がない」102票、「税金の還付・控除の仕組みがよくわからない」101票、「控除の対象にならない」95票、「手続きに手間がかかる」83票の順に多くなりました。

制度や還付などの仕組みについての知識不足、金銭的余裕のなさ、手間の面倒さから行っていない人が多いことがわかります。

Q:ご自身がこれまでに「ふるさと納税」を行ったことがない理由を教えてください(複数回答可、回答数469)

自分にとってゆかりのある地域を応援したいという傾向

ふるさと納税を行った理由として「自治体への貢献」を選んだ方に、その理由に最もあてはまる納税先の都道府県を答えていただきました。その結果、上位5位は、1位「北海道」21.6%、2位「石川県」6.5%、3位「宮崎県」4.2%、4位「宮城県」4.3%、5位「山形県」3.4%(答えたくない、無回答を除く)となりました。

北海道が圧倒的に人気で、その傾向は総務省が毎年実施している「ふるさと納税に関する現況調査」(※)の結果とも一致します。また今回の民間医局によるアンケートで石川県が2位(答えたくないを除く)となっていますが、令和4年度の「ふるさと納税に関する現況調査」では、石川県は47都道府県の受入額ランキングで41位と高い順位ではありません。今回の結果は、令和6(2024)年元日に発生した能登半島地震に起因するものではないかと推測されます。

※出典:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果 令和5年度実施」(令和5年8月1日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000897129.pdf

Q:ふるさと納税を行った理由に「自治体への貢献」をお選びいただきましたが、この理由に最もあてはまる納税先を、都道府県で1つだけお答えください(回答数477)

続いて、前問でなぜその都道府県を選んだのか、理由を聞いてみました。すると、「応援したい」248票がトップで、次いで「ご自身の出身地」124票、「災害などの理由で支援したい」83票、「ご自身が過去暮らしたことがある」76票という結果になりました。

自治体を応援したいという思いが大前提としてありながら、出身地であるとか、居住経験の有無など、何かしらのゆかりがあるというのも、選定基準として大きいことがわかります。

Q:前問でお答えいただいた納税先について、あてはまるものをすべてお選びください(複数回答可、回答数477)

一件あたりの平均寄付額では「10,001~20,000円」がトップ

ふるさと納税を行うタイミングについての質問では、「年末」の33.2%が最も回答として多く、僅差で「魅力的な返礼品がある時」32.0%が続きました。また、「特に決めていない」も25.3%を占めました。節税対策の関係で、年末に駆け込みで行うことが多いようですが、時期を選ばずに思い立ったタイミングで行うケースも、同じくらい多いということがわかりました。

Q:ご自身が「ふるさと納税」を行うのは、どのようなタイミングでしょうか。最もあてはまるものを1つだけお選びください(回答数2,107)

ふるさと納税に関する情報はどこから得ているのでしょうか。ふるさと納税を行ったことがあると回答した方に、利用しているふるさと納税サイトを聞いてみると、「楽天ふるさと納税」がダントツで多く(1,106票)、続いて「さとふる」595票、「ふるなび」543票、「ふるさとチョイス」480票が続きました。さまざまなふるさと納税サイトが存在していますが、その中には定番となる人気サイトがあるということが見えてきます。

Q:「ふるさと納税」を行う際、ご自身はどのサイトを利用していますか(複回答数可、回答数2,107)

次に、1回あたりのふるさと納税の平均納税額を聞いてみました。「20,001円以上」が38.5%でトップ。続いて「10,001〜15,000円」37.4%、「15,001〜20,000円」14.9%、「5,001〜10,000円」8.1%、「5,000円以下」1.1%という結果になりました。

20,001円以上という納税額は高いのでしょうか、低いのでしょうか。参考までにフリマアプリの「楽天ラクマ」がユーザーを対象に実施した「『ふるさと納税の利用実態』調査(2022)」(※)では、1件あたりの寄付額は「10,001~20,000円」が最多(56.6%)、次いで「5,001円~10,000円」36.4%という結果が出ています。

※出典:楽天グループ「ふるさと納税の利用実態」(2022年10月実施)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001839.000005889.html

Q:これまでに行った「ふるさと納税」について、1回あたりの平均納税額を教えてください(回答数2,107)

先にご紹介した「ふるさと納税を行った理由」という質問では、「返礼品が魅力的」と並んで、「節税対策」という回答が多くの票を集めました。では、実際にふるさと納税を行った人は、ご自身の控除上限額を把握しているのでしょうか。

回答で最も多かったのは「だいたいの額を把握している」62.5%で、「詳細の額を把握している」という人も34.0%にのぼりました。この結果から、返礼品を目当てにしつつも、やはり節税意識も高いと言えるのではないでしょうか。

Q:「ふるさと納税」について、ご自身の控除上限額がどのくらいかご存じでしょうか(回答数2,107)

返礼品は食品が一番人気、選び方は自分が欲しいものを優先

返礼品として人気の品はどのようなものでしょうか。これまでにもらったことのある返礼品について答えていただくと、「肉類(加工品含む)」1,423票、「魚介類(エビ・カニ・加工品含む)」1,203票、「果物類(加工品含む)」1,078票、「米穀類(米・パン等。加工品含む)」1,010票がトップ4となりました。一方で「伝統工芸品」204票、「イベント・体験チケット」115票、「感謝状」74票などは票が伸びませんでした。

お菓子、野菜類、お酒なども票を集めたことから、返礼品としては食品・飲料がメジャーであり、実際にもらったことのある人も多いということがわかりました。

Q:ご自身が「ふるさと納税」でもらったことがある返礼品を、すべてお選びください(複数回答可、回答数2,107)

また、ふるさと納税の返礼品を選ぶ際に誰と相談するか、という質問もしてみました。圧倒的に多かったのが「ご自身だけで決める」1,055票で、続いて「配偶者」834票。「両親」や「子ども」、「家族全員で決める」はいずれも200票以下となりました。返礼品は自分で決めるか、夫婦で話し合って決めるケースが多いようです。

Q:「ふるさと納税」の返礼品を選ぶ際、どなたと相談することが多いですか(複数回答可、回答数2,107)

ふるさと納税の納税先は、どのような基準で選ばれているのでしょうか。最も多かった回答が「ご自身が欲しい返礼品がある」で1,388票。その後に、「コストパフォーマンスが良い」959票、「人気の返礼品がある」671票が続き、魅力的な返礼品のある自治体を納税先として選びがち、ということがわかります。

一方で、「応援したい自治体」394票、「支援したい自治体」326票、「ご自身や家族にゆかりのある自治体」305票などの回答も一定の票を集めており、先の「ふるさと納税を行った理由」という質問で「自治体への応援」「社会貢献ができる」などの回答が多かったこととも、連動した結果となりました。

Q:ご自身が「ふるさと納税の納税先」を選ぶ際の重視点を、すべて教えてください(複数回答可、回答数2,107)

ふるさと納税制度をおおむね好意的にとらえながらも、疑問を持つ人もいる

納税者・自治体にとって、ふるさと納税は良い制度だと思うか、その評価を聞いてみました。その結果、納税者にとって「そう思う」「ややそう思う」と回答した人が約9割、自治体にとって「そう思う」「ややそう思う」と回答した人が約8割にのぼりました。また、「あまりそう思わない」「そう思わない」という回答を見ると、僅差ではありますが、いずれも「自治体にとって良い制度」の方が、そう答えた方が多い結果になりました。

ふるさと納税は、おおむね「良い制度」であると評価されているものの、納税者・自治体という視点では、どちらかというと自治体にとっては悪い面もあると、とらえられているようです。

Q:「ふるさと納税」に関する次の項目で、ご自身のお気持ちに近いものをそれぞれお選びください(単一回答マトリクス、回答数2,576)

ふるさと納税は「地域貢献につながっている」のか、「今後も続けたほうが良い制度」なのか、「ふるさと納税を行っていきたい」か、それぞれの項目について、ご自身のお気持ちを聞いてみました。

まず、「地域貢献につながっている」という項目については、「そう思う」「ややそう思う」で84.1%となり、生まれ育った地域や、自分の意思で選んだ自治体を応援できる制度、というふるさと納税の本来の趣旨が実現できているという評価が与えられているようです。「今後も続けたほうが良い制度」の項目に関しても、「そう思う」「ややそう思う」で85.9%、「ふるさと納税を行っていきたい」に至っては、「そう思う」「ややそう思う」で91.3%を占め、いずれも項目でもやはり肯定的な評価が多くなっています。

しかし、「そう思う」という選択肢のみに着目すると、「地域貢献につながっている」より「ふるさと納税を行っていきたい」の方が30%近く回答者が多く、個人としてはふるさと納税を利用していきたいと考えつつも、制度としてはどこかで疑問を抱いているという人も少なからずいるということが、今回のアンケート結果から読み取れます。

Q:「ふるさと納税」に関する次の項目で、ご自身のお気持ちに近いものをそれぞれお選びください(単一回答マトリクス、回答数2,576)

ふるさと納税に対する微妙な意識が見え隠れする結果に

医師や初期研修医、医学生の大多数がふるさと納税を利用しているという実態が見えた今回のアンケート。節税したい、返礼品が欲しいという欲求がありながらも、制度を通じて自治体を応援したいという、純粋な思いもあるということがわかりました。一方で、個人としてはふるさと納税を実際に利用した上で、この制度に対して疑問を抱く人も少なからずいそうだという点は、留意したほうがいいかもしれません。

【アンケート概要】
調査期間:2024年3月7日~9日
対象:「民間医局」会員の医師・初期研修医・医学生
回答者数:2,576人(男性1,814人、女性673人、答えたくない89人)

医師の8割がふるさと納税を経験、少数派ながら制度に疑問を持つ人も 〜ふるさと納税アンケート〜

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