公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協札幌病院の「家庭医療」

当院は無差別・平等の医療実践をめざす北海道勤労者医療協会が展開する医療機関として、1949年11月、前身である白石診療所として白石区菊水の地に誕生しました。当時の菊水は、中小の鉄工所や鋳物工場が散在する労働者の街であり、低所得者、生活保護受給者が多く住んでいる地域でした。その名残りは現代においてもあって、当院に通院する生活保護受給者および無料低額診療制度を利用する患者さん（2006年より経済的困難により医療を受けられない方に対し無料または低額で医療を提供）は全体で2割を超えています。

当院の医療機能は、2021年11月現在、9科（内科、外科、整形外科、小児科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、神経科、労働衛生科）の外来を有し、患者さんを疾病だけではなく、社会的な背景や家族背景から総合的に診ていく視点を大切にしています。とりわけ、総合診療医が担当する総合外来では、高齢者のmulti-morbidity（多疾患併存状態）や不定愁訴など病気の原因が特定できない患者さんの診療を適切な専門科とも連携しながらすすめています。入院機能は、急性期病床と地域包括ケア病床の複数科混合病棟、回復期リハビリ病棟、産婦人科病棟の3病棟を有しています。当院のスローガンは赤ちゃんから高齢者までやさしい病院をめざすことです。産婦人科では、分娩直後から小児科医による新生児ケアが可能になるなどワンストップで継続的に患者さんを診ています。終末期医療では、白石区内唯一の在宅療養支援病院として、24時間365日断らない在宅医療を展開しており、患者さんや地域事業所からの期待に応えています。また、外国人の妊婦さんの増加に対して医療英語通訳者を採用、聴覚障がい者が安心して受診できるよう手話通訳者を複数配置するなど、かかりやすさについても追求しています。

当院は法人の中で総合診療医を育てる研修施設としての役割を担っており、毎年5～7名の専攻医の研修を行っています。特徴的なことは、医師の関わりだけではなく、多職種や健康友の会（各院所の拠点を中心に存在しており、白石区は2万人を超える組織で健康増進活動をすすめている）が関わって医師を育てているところです。研修の手厚さは当法人への入職を決意していただける大きな要素となっています。
さらに、当法人の特徴として、母性保護の観点から、法を超えた産休・育休制度など子育てしながら長く働き続けられるよう育児のための制度が充実しており、短時間勤務制度を利用して勤務されている女性医師がたくさんいます。あわせて、学会参加のサポートや夏期・秋期休暇や有給休暇等の福利厚生は、きっと満足いただける内容です。

現在の社会は、社会的勾配が急峻になる、すなわち貧富の格差拡大にともなって、国内、あるいは国家間の健康の勾配、すなわち健康格差が放置できない悲惨なレベルに達しており、社会格差が健康の社会的決定要因（以下、SDH）を媒介因子として、健康格差を生み出しています。そして、SDHの実在を証明しながら、これがはっきりとした因果関係であり、逆の因果関係ではないことが多くの有識者からも主張されています。決して自己責任ではありません。ロンドン大学の疫学と公衆衛生学の教授であるマイケル・マーモット氏は、著書「健康格差」の中で述べています。「せっかく治療した患者を、なぜ病気の原因となった環境に戻すのか？」。私たち医療従事者は社会的背景にも目を配りながら、患者さんの健康権にいかに寄り添うことができるかを考えなければなりません。そのような視点を養いながら、ともに育ちあうことが大切です。
当院はオタワ憲章に基づいて組織された国際HPH（Health promoting Hospitals and Health Services）ネットワークにも加盟し、職員・利用者・地域を対象にヘルスプロモーションにも取り組んでいます。当院の理念に賛同いただき、ともに働いていただける方を心よりお待ちしております。

ドクターズボイスより