記事・インタビュー

2017.10.26

【Doctor’s Opinion】地域の実情に合わせた医療提供体制を目指して

市立三次中央病院 院長
中西 敏夫

 医療計画は時代の変化に応じて作成され、直近では平成24年3月厚労省医政局長から各都道府県知事宛てに通達が出されている。基本方針は、我が国の「社会保障・税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)」に基づき、急性期をはじめとする医療機能の強化、病院・病床機能の役割分担・連携の推進、在宅医療の充実等を内容とする医療サービス提供体制の制度改革に取り組むこととされた。「医療提供体制は国民の健康を確保するための重要な基盤」と位置づけられており、「都道府県が中心となって、医療計画に基づき施策を企画立案・実行し、国はこれを支援することが必要」と基本方針に明記されている。

このような指針の中で都道府県は医療計画を作成したばかりである。ところで厚労省のホームページ、平成24年516日付、社会保障と税の一体改革の中で社会保障制度改革国民会議における議論(医療・介護分野)、基本的な考え方を少し抜粋してみる。

● 「いつでも、好きなところで、お金の心配をせずに、求める医療を受けることができる」医療から、「必要なときに適切な療を適切な場所で最小の費用で受ける」医療に転換すべき。
● 「病院で治す」医療から超高齢社会に合った「地域全体で、治し・支える医療」へ転換することが必要。
● 医療資源を国民の財産と考え、個人のすべての要求に応えることは不可能であることを前提に制度を再編すべき。
● 社会保障と人口動態、経済、産業、雇用の関係性と今後の方向は、地域ごとに異なっており、そのあり方は地域毎に考えていく必要がある。

等々であり、計画実践のためもっと踏み込んで都道府県の役割を拡大すべき。

● 診療報酬や医療計画など、全国一律の規制等をどこまで緩和するか、地域ごとの医療政策の柔軟性を検討する必要がある。
● 地域の実情を踏まえた診療報酬の決定ができる仕組みを積極的に活用すべき。

かなり大胆な意見が出されている。
我が国の医療提供体制は都道府県が設定した二次医療圏域内で医療計画が実施されることを目指している。現在、全国に349の二次医療圏が設置されているが面積、人口、医療機関数、病床数、医師数は異なっており最近話題になっている一票の格差どころではない。ただ病床数は圏域内で人口、アクセス等を考慮して配分されているため大きな差はない。

大都市圏の一部を除けば医療は地域密着型であり、医療機関の多くは地域住民を対象に診療を行っている。もちろん病院の機能に応じてであり、二次医療圏内でどのような医療が行われているか、地域で何が不十分であるかなどを調査するべきであろう。その上で医療機関の役割分担/連携やアクセスなどを考慮すべきである。

また二次医療圏内の生活圏では地域包括ケア、在宅医療を担う医療機関、医師が不足している過疎地域が多く存在している。地域医療を担う医師の育成はこれまで自治医大中心で少人数であったが、各大学は地域枠定員を大幅に増やし、また専門医制度の中で総合医を巡る議論は「総合診療医」として一定の結論を得た。

 これからは人材育成の研修プログラムや研修医療機関を通じ各圏域の実情に合った医師派遣制度の構築が望まれる。これらは地域医療再生計画の資金が投入されているが各県でどのような成果が出るか楽しみなところである。

それでは医療計画や提供体制は、二次医療圏、またいわゆる生活圏で地域住民はどのような医療を求めているのか、医療機関はどのような医療が提供できるのか、行政は医療費の負担をどのように考えているのか等について理念の共有が必要となっている。

がん対策基本法は議員立法で平成18年6月に制定されているが全文を読んでも良く整理されている。目的、基本理念、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等の責務が明記されており理解しやすい。基本理念/施策により予算措置も執られ各県にがん拠点病院が設置された。

国民皆保険制度を発足させ50年を経たいま、外国から高い評価を受けているこの制度は高齢化、財政状況の悪化の中で、フリーアクセスの制限、在宅医療などが討議されている。しかし医療は地域に根ざしており、地域医療崩壊が叫ばれる中、医療提供体制の再構築は、利用者、医療提供者、行政の相互の理解の中で、地域から医療提供体制を見直していくべきである。

※ドクターズマガジン2013年7月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

中西 敏夫

【Doctor’s Opinion】地域の実情に合わせた医療提供体制を目指して

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