記事・インタビュー

2020.04.01

ヨーロッパで心臓外科医やってます(6)

3月16日現在、ヨーロッパもコロナ騒ぎが加熱してきています。ドイツは国境を閉鎖し、学校は全て休み、レストランは18時まで、と矢継ぎ早に対策が講じられていきます。

こうした情報は『たびレジ』に登録をしたり、外務省へ在留届を提出したりすると、自動的にメールが送られてきます。送られてくる情報は極めて重要なものばかりで、場合によっては「〜といった噂も流れております。これらのトラブルがあった場合は〇〇〇などの対応をしてください」というものまで含まれることもあります。何というか、「全力で力になろうとしてくれている」感じがすごく伝わってきます。

ドイツに来たばかりの頃は難民の流入と被っていたし、しばらくするとテロ騒ぎがあったりして、不安なこともありましたが、このようなツールで入手する「正確な情報」で随分助けられたものです。

なんて書いていたら、今まさに記者会見でEU全域の入国制限を行うことが決定したみたいです。エライ騒ぎになっちゃったな・・・・・・

※たびレジ:https://www.ezairyu.mofa.go.jp/

ドイツ語のリスニング勉強法

さて、『たびレジ』が非常に有用な情報ツールであることは間違いないのですが、リアルタイムで情報を得るに越したことはありません。そのためにはどうしてもリスニングの強化が必要になってきます。もちろんドイツ語のテストの際にも重要な項目でして、おそらく大半の日本人受験者にとっては最大の壁となってくると思われます。

今は日本に居ながらでもドイツ語が楽しめるコンテンツが沢山あります。

例えばドイツに来る外国人たちから最も評価されている教材は『Deutsch Welle』です。スマホアプリもあります。ドイツのニュースをゆっくり流したり、ニュース全文を掲載しています。それだけに留まらず、重要単語をまとめていたり、何なら内容がちゃんと理解できているかの確認テストまで用意してくれていたりします。しかも無料で!

こんな素晴らしい教材を使わない手はないのですが、私はほとんど使うことはありませんでした。理由は「内容が固い」からです。何度も何度もチャレンジしたのですが、一向に頭に入ってこない。きっと合っていなかったんだと今は諦めています。

代わりによく視聴したのは『Easy German』というYouTubeチャンネルです。ポッチャリ眼鏡のお姉さんとヒゲモジャの旦那が、毎週それはそれは楽しそうに街角インタビューする番組です。

番組開始初期の頃は「日常生活で使うドイツ語」として小芝居をやっていた時期もあり、「街角での口喧嘩のやり方」とかいってヒゲモジャの旦那とエキストラの若い兄ちゃんが駅のホームで怒鳴り合ったりしていました。教科書には載っていないドイツ語が飛び交ってちょっと面白いです。インタビューの題材も「高速道路でどのくらいスピード出したことある?」から「ぶっちゃけ、フランスのことどう思う?」に至るまで、いきなり質問されたドイツ人が苦笑いして「何て答えればいいんだ…・・・」となることもしばしばの、リアルなドイツ語に触れることができます。

あと個人的に活用したのはジブリアニメのドイツ語DVDですねー。内容はけっこう知っていたし丁寧な言葉を使っていることもあって、繰り返し観ていました。音声だけ抽出してスマホに入れて、暗唱できるくらい聴いていました。

ドイツ語DVDは日本でも取り扱っているお店があって、ネットで購入しました。ちなみにドイツではちょっと大きな電気屋に行けば、大抵「日本アニメ」のコーナーがあります。『コナン』、『ワンピース』や『君の名は。』などの有名どころから、観たこともない作品まで、かなりの数が販売されています。

他国から来ている連中も、割と日本のアニメを教材に使っています。『ワンピース』や『ナルト』は世界中で放送されていてファンも多いせいか、語学学校時代も病院で働き始めてからも、いつも誰かしらがやってきて、ドイツ語の勉強ついでに覚えた日本語を披露してくれます。「オレタチ ハ ナカマ ダ」とか「キサマ ダケハ ユルサネエ」とか「カメハメハ」とか。もっと他に覚えるセリフはないのか? いや、むしろ掴みとしてはオッケーなのか?

ちょうど先日も手術中に麻酔科医から「“だってばよ”ってどういう意味?」と真顔で聞かれました。出典に心当たりもあったのですが、とりあえず「それは忍者の言葉だ」とだけ言っておきました。「ニンジャとはなんだ?」と食いついてきた上司には、「日本のCIAだ」と答えておきました。

私自身、ドイツ語の勉強開始時は、どうしても「教科書読まなくちゃ」とか「文法を正確に使うんだ」といった受験的な勉強法に固執していたような気がしますが、ドイツに来て周りの外国人たちを見ていると、もっと楽しく勉強しているなーと感じることがよくあります。で、結局そんな連中の方がペラペラとドイツ語を話しているのが現実です。

せっかく有給を取ったのにコロナ騒ぎでどこにも出かけることができず、家でおとなしくしています。だから、こんな時こそドイツ語を勉強しようと思い、Netflixに加入しました。とにかく楽しくドイツ語の勉強ができるように心がけようと思っています。

ドイツの電気屋の「日本アニメコーナー」を撮影しようかと思ったら、電気屋が休みになっていました。というか、ショッピングモールが食料品を扱う店以外は全部お休みになっています。

<プロフィール>

安 健太(あん・けんた)
カールスブルグ心臓糖尿病センター
心臓血管外科 医師

2004年滋賀医科大学卒業。現在ドイツで医師免許取得し、心臓外科医として働いています。空手三段。学生時代に世界大会・アジア大会に出場経験あり。東京五輪で空手が正式種目となりました。あと16年早かったらな…と思いつつ、遠くドイツからオリンピックの成功を願っています。

安 健太

ヨーロッパで心臓外科医やってます(6)

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