記事・インタビュー

2019.08.15

メディカルドクターの本音(2)

ヒューマンダイナミックス社の堤と申します。弊社は、約20年にわたり製薬会社へ多くの先生方を紹介している会社です。
多くの医師が臨床の道に進む中、創薬・育薬の世界で活躍している医師がいることをご存知でしょうか? 今回も、メディカルドクターの本音と題して、現在製薬会社で勤務されている医師から匿名でご寄稿いただきました。

臨床から離れ、製薬企業で医師として勤務することについて

私は製薬企業勤務歴2年弱の医師です。医学部医学科を卒業後、大学院での研究や市中病院での診療をしながら15年ほど経た時に、製薬企業への転職を決意いたしました。その動機については、また別の機会をいただけましたらご紹介したいと思いますが、ここでは、医師にとって「臨床を離れることの恐怖や不安」について記したいと思います。

この記事を読まれる先生方は、製薬企業への転職に興味を抱くと同時に、その転職に大きな不安を覚えておられることと推察いたします。その不安の本質について、私なりに考えてみましたので、参考としていただければ幸いです。

まず、医学部医学科の学生およびその卒業生の特殊性について確認しておきたいと思います。といっても、その人間性や能力のことではありません。大学入学後の人生における選択する機会の少なさについてです。

医学部医学科の学生は入学時点で、そのほぼすべてが医師を志しており、専門科目の履修においては、すべての学生が同じ授業を受けて同じ試験を受けて進級していきます。また、実習は、基礎系、臨床系を問わず、職業体験に近いものであり、自分と同じような教育背景を持った教官(多くの場合は先輩)から、その道の面白さを説かれ、その道に進んだ場合の自分の姿を多少なりとも具体的に想像できるようになっていくと思われます。そのような学生生活を送った人物が、学生の間に提示されなかった選択肢を選ぶことに躊躇いを覚えるのは当然のことと思います。

その結果、内科系外科系に代表される、患者への直接の診療および治療行為を主とする科目へ進む人物が多数となり、同窓生を見回しても、それ以外のやや“変わった”進路というのは、病理や画像診断、アカデミアでの基礎系研究といったものがちらほらという程度ではないでしょうか。

大学医学部の使命が、臨床医師の供給であるという観点では、これは十分に正義であるといえるでしょう。しかし、医学部の卒業生は、自身が気づかないうちに、選択の自由を大幅に狭められているのも事実だと思います。

他学部に目を向けると、歯学部は医学部と同じような状況でありますが、医学部と同じように国家資格取得を目指す薬学部や獣医学部においては、国家資格がそのまま職業となるような道に進む卒業生の割合は、医学部に比するとかなり低いのが事実です(高い大学でも半数をわずかに超える程度のようです)。他の学部においては言うまでもないでしょう。

つまり、皆さんが抱いている不安というのは、「身近に、キャリアのモデルになる人物がいない」ということが本質であるのだと思います。その不安は「自信の可能性を狭めている」ということになります。学生時代に自身の中に築かれた「医師としてのモデル」を打ち破るのはたやすいことではないでしょう。しかし、他の学部の出身者にとっては、進む道での自分のキャリアパスを十分に知る機会もないうちに、「えいやっ」と社会に身を投げ出すことなど、ごくごく当たり前のことなのです。しかも、医師は、医師免許という最強のセーフティネットがあります。何が起きても、免許と頭脳と倫理観さえ維持できれば、所得や社会的地位を大きく落とす可能性はほぼゼロという、非常に恵まれた挑戦者なのです。

企業医師としてのキャリアパス

製薬業界で専門業務や管理業務を担う医師はまだまだごく少数です。医師の働き方としても認知されているものではありません。しかし、間違いなくそこには、臨床医の知識と経験がないと果たせない役割が数多く存在します。日本における新薬の上市に向けた開発業務を時間的にも経済的にも効率よく進めるためには、より多くの医師の参画が必要です。そして、ここに参画する医師の数が増えれば、それだけ医師の働き方として認知される機会が増え、今後の若い医師たちにも、新たな選択肢として示すことが難しくなくなるのではないでしょうか。

製薬企業においても企業医師としてのキャリアパスは存在します。一専門家として、専門業務に携わり続ける医師も一定数存在しますが、管理業務やさらには役員業務へとキャリアアップしていく医師も多く存在します。つまり、臨床現場と同じように、専門性を持って活躍し、ステップアップしていく機会は、製薬企業にも間違いなく存在します。

臨床から製薬会社へ転職されました現役MDから本音を述べていただきましたが、ご感想はいかがでしたでしょうか。決断に迷われておられましたら、ご相談にお伺いしますので、ご連絡をお待ちしております。

<プロフィール>

堤 康行(つつみ・やすゆき)
株式会社ヒューマンダイナミックス
代表取締役社長

ノバルティス、イーライリリーおよびCROのパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門の企業医師と業務を共にする。製薬企業およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬企業動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。

株式会社ヒューマンダイナミックスの具体的な求人を知りたい先生や、ご質問のある先生は「民間医局」がお手伝いをさせていただきます。お気軽にお問い合せください。

エージェントへ相談する

 

›››ヒューマンダイナミックス社の求人一例を見る

堤 康行

メディカルドクターの本音(2)

一覧へ戻る