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2026.01.20

書評『終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える』

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

書評『終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える』

「このまま延命処置を継続すべきなのか…。それとも患者さんの生活の質(QOL)を優先して治療を控えるべきなのか…。

実際に終末期の場面に直面すると、若手医師だけでなく多くの医療者が必ずぶつかる問いです。
DNAR(心肺蘇生を行わない指示)や人工呼吸器の導入、誰が意思決定をリードするのか――議論すべき論点は想像以上に多岐にわたります。
私自身も救急医1〜2年目の頃は強い迷いが常にあり、いまも学び続けています。

今回は、その「モヤモヤ」をほどき、明日の現場で一歩前へ進む支えになる一冊をご紹介します。 それが『終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える』です。
豊富な事例と実践的なフレームワークで、臨床の最前線で求められるエッセンスを丁寧に示してくれます。
大切な人を前に苦しい決断を迫られる時間が、少しでも穏やかで意味のある対話になりますように。迷いがちな若手医師・研修医こそ、一読をおすすめします。

これからご覧いただく医学書レビューは、
研修医時代に100冊以上の医学書を読み、その中から毎月5冊以上レビューしている救急科専門医によるものです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、
是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!

終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える
終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える
平岡栄治 (著), 則末泰博 (著)/ メディカルサイエンスインターナショナル 発行
価格:4,070円(税込)
発刊:2021/10/15
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書評『終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

ターゲットは、後期研修医からスタッフ医まで幅広い層です。
実習中の医学生や初期研修医にとっても示唆は多いですが、実際に終末期ディスカッションの場に立つ機会が増える中堅以上の医師が最も活用しやすいと思います。

分量は全284ページ。
1日30分ほどの読書で約1週間、集中すれば週末2日でも読み切れるボリュームです。専門的テーマですが、ケーススタディが豊富で想像以上に読みやすい構成でした。

2.本書の特徴

ひと言で表すなら、「難しいシチュエーションの意思決定のモヤモヤを解きほぐす指南書」です。
実例と対話形式で、患者・家族とのコミュニケーション、DNARのすり合わせ、臨床倫理の基本をやさしく噛み砕いて解説しています。終末期に限らず、日常の方針共有にも直結する実践知が詰まっています。

【本書の強み】
● ケースを通して具体的に学べる
● 外来・病棟・ICUまで幅広いシーンをカバー
● 「4分割表」などのフレームワークで思考を整理できる
● 対話形式で読みやすい
● 巻末の「患者さん・ご家族へのメッセージ」が示唆に富む
【本書で学べること】
● 臨床倫理の基本(医学的要素/患者要素/QOL要素/環境要素)
● DNARを含む治療方針のすり合わせの実践手順
● 「医師が提示すべき情報」と「患者が選ぶ意思」の調整
● ICU・救急で予後が厳しい症例にどう向き合うか
● 終末期に限らない、広義の意思決定支援のヒント

3.個人的総評

救急・集中治療の現場で、心停止後で神経学的予後が厳しい患者さんを担当したとき、家族・多職種とDNARを話し合う場面で本書の示す視点が非常に役立ちました。

「患者ファースト」を空語にせず、実践へ落とし込むために、医師が提示すべき事項や、どのように意思を尊重するかが具体例とともに整理されています。
特に印象に残ったのは、「医療資源に制限がない状況では、自己決定の尊重が最上位にくる」という指摘です。
また「4分割表」を実例に当てはめる章は秀逸で、抽象的な不安が構造化された論点に変わります。DNARを巡って違和感や悩みを抱えてきた方ほど、腑に落ちる体験が得られるはずです。
後期研修医以上の先生方はもちろん、一般の方にも届いてほしい内容で、日本の終末期医療の前進に寄与する一冊だと感じました。

4.おすすめの使い方・読み進め方

時間があればじっくりストーリーを味わいながら通読するのもオススメですが、シチュエーションに分けて活用する方法を紹介しておきます。

● Part1 → Part3の順で流れを追う:臨床倫理の基本→コミュニケーション例→ACPの実践へ。
● 印象に残った事例は自分の経験と重ね合わせる:ICU・救急外来での意思決定をシミュレーション。
● 各パート末の「患者・家族へのメッセージ」を重点チェック:一般の視点を理解し、患者ファーストの解像度が上がります。
● 院内カンファレンスで共有する:共通言語が増えることで多職種連携がスムーズに。

5.まとめ

本書は、終末期に限られた専門書ではありません。日常診療で頻出する価値観と医療の接点を、具体的手法と事例で解きほぐす一冊です。

曖昧な倫理観や「なんとなくの方針決定」を放置しないために、現場で使える知恵が凝縮されています。研修医からベテラン医師まで、手元に置いて繰り返し参照したい内容です。
購入前に出版社サイトのサンプルページを確認するのも良いと思います。いのちに関わるすべての医療者へ、おすすめします。

6.医書レビュー

基本情報 終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える
著者:平岡 栄治/則末 泰博
出版社:メディカルサイエンスインターナショナル
発行日:2021/10/15
ページ数:284ページ
ターゲット層 研修医・専攻医・スタッフ医など終末期医療に携わる医師全般/看護師・コメディカル・医療ソーシャルワーカーなど多職種
推定読了期間 1日30〜60分の読書で約1週間(集中すれば週末2日でも可)
本書の特徴 ● 終末期を軸に、医療現場の倫理的ジレンマを事例で解説
● 患者中心の意思決定支援のステップが具体的
● 「4分割表」で議論を構造化
● DNARや予後予測の考え方など急性期にも直結
● 巻末「患者・家族へのメッセージ」で一般向け視点もカバー
購入先 終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える

評価

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<プロフィール>

三谷 雄己先生

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
X https://x.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

書評『終末期ディスカッション 外来から急性期医療まで 現場でともに考える』

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