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2025.11.20

それ、ChatGPTが代わりにやります! “01 患者説明の質と効率を劇的に上げる

それ、ChatGPTが代わりにやります! “01 患者説明の質と効率を劇的に上げる

今、なぜ「伝わる説明」が重要なのか

日々の診療で、私たち医師が最も心を砕く場面の一つが「患者さんへの説明」です。しかし、私たちの言葉は本当に患者さんに届いているのでしょうか。

患者の良好な理解が治療アドヒアランスなどと関連していることが示されています1)。一方で複数の研究が、医師と患者の間に存在する「理解の壁」を指摘しています。例えば、ある調査では、医師の77%が「患者は自分の診断名を理解している」と信じていたのに対し、実際に正しく理解していた患者は57%だったという報告があります2)

このように、医師側が「十分に説明した」と感じていても、患者側は理解・納得できていないという「認識のギャップ」が存在している実態があります。この理解の壁を乗り越え、「伝わる説明」を実現するために、生成AI「ChatGPT」は強力な武器となり得ます。生成AIは複雑な医療用語を平易な言葉に翻訳し、患者個々のリテラシーレベルに合わせて説明を調整する能力に長けています。2023年にJAMAInternal Medicine誌に掲載された研究では、患者の質問に対するAIチャットボットの回答が、医師の回答よりも「質が高く、共感的であった」と評価されるケースが多く見られました。これは、AIが情報の正確性だけでなく、患者の感情に寄り添うようなコミュニケーションがとれる可能性を示唆しています。

今回は、ChatGPTを「医療専門用語の翻訳家」として、臨床シーンで説明の質の改善に活かす方法をご紹介します。

【 一般外来 】
生活習慣病の長期的な治療方針を説明する

【 状 況 】
健康診断で高血圧を指摘された40代の男性。自覚症状はなく、治療にあまり乗り気でない。

【 説明のポイント 】
なぜ無症状でも治療が必要なのか(将来の合併症リスク)。高血圧や糖尿病などの生活習慣病では、患者さん自身が病態を理解し、治療の必要性を納得することが長期的な管理の鍵となります。

Prompt ープロンプト例

あなたは循環器内科の専門医です。患者は健康診断で初めて高血圧を指摘された40代の男性、自覚症状はなく、治療にあまり乗り気ではないです。なぜ治療が必要なのか、またどのような場合に薬が必要か、薬が一生必要かどうかなどについてわかりやすくて、強く納得ができる・治療を受けようという気になれる説明文を作ってください。

生成AI ー生成される説明文の例

健康診断で「血圧が高い」と言われても、自覚症状がないとピンとこないかもしれません。ですが、高血圧は「サイレント・キラー」とも呼ばれ、痛みなどがないまま静かに血管を傷つけ、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中といった深刻な事態を引き起こすことがあります。
放置して硬くなった血管は、残念ながら元には戻りません。だからこそ、症状がない“今”が、未来の健康を守るための大切なタイミングなのです。
まずは生活習慣の見直しから始めますが、必要な場合にはお薬の力を借りることも重要です。薬は一生飲み続けるとは限りません。むしろ、未来のあなたを守るための有効な「お守り」だと考えて、一緒に治療を始めてみませんか。

  • 高血圧は症状がなくても血管を傷める“サイレント・キラー”
  • 放置は、将来の命や生活の質に大きく影響
  • 生活改善+必要なら薬で、早く・確実に血圧を下げる
  • 薬は一生ではなく、“必要な期間だけ”頼ることも可能
  • 今のあなたの選択が、未来のあなたを守ります。
  • 「症状がない今こそ」行動することが、一番の予防です。

【+α】 もし希望があれば、この説明を患者さん向けのパンフレット記事や感情に訴える口頭説明用台本にアレンジできます。

今回のポイント

改めて何を説明すべきかをざっくりまとめてもらい、さらに相手にどのように訴えかけるかの構成まで簡単に出力してもらうことが可能です。さらに「わかりやすく資料にまとめて」と頼めば、簡単に文章レベルでの説明資料を作ってくれます。

 

東日本橋内科クリニック 院長
白石 達也

2013年京都大学卒業。田附興風会医学研究所北野病院で研修後、社会福祉法人仁生社江戸川病院で循環器内科医として勤務。2019年よりUbie社で生成AIチームに所属。循環器専門医、日本心血管インターベンション治療認定医

※ドクターズマガジン2025年10月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。

白石 達也

それ、ChatGPTが代わりにやります! “01 患者説明の質と効率を劇的に上げる

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