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2025.10.16

書評『薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 | こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック』

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

書評『薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 | こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック』

「薬剤について学びたいけれど、専門書は難しそう……」
「研修医になったけれど、薬をざっと学べる本が見当たらない……」

こうした声は、私が後輩と仕事をするたびに耳にします。急性期領域で SNS 発信を続けている縁で、メディカ出版様から “看護師さん向けの薬の教科書” として紹介されたのが、本書『薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック』です。

この一冊は〈看護師が最初に読みたい薬の本〉を掲げ、イラストを豊富に盛り込みながら新人看護師さんでもすぐに理解できるよう構成されています。

この医学書LABOで、看護師さん向けの書籍をなぜ紹介するのだろう?と不思議に思ったそこのあなた。侮るなかれ。臨床現場の新人が最初にぶつかる壁は、医師も看護師も似通ったところが多いのです。

私自身、初期研修医時代はこういった看護師さん向けの書籍に助けてもらった経験がたくさんあります。

臨床現場で薬剤名や概要を手早く覚えたい初期研修医にも最適で、読み終えれば薬剤取り扱いのストレスが大幅に軽減されるはずです。

薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック
薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 | こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック
はっしー (著), 木元 貴祥 (著)/ メディカ出版 発行
価格:1,980円(税込)
発刊:2023/9/5
Amazon

書評『薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 | こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
臨床現場でよく使う薬剤を素早く学びたい研修医・新人看護師

【推定読了時間】
通読:約3〜4時間

本書は、臨床現場で頻繁に使用される薬剤を効率良く学びたいと考えている研修医や新人看護師の方々に最適な内容になっています。現場に立った瞬間から「この薬剤で合っているのか」「投与量の目安はどうか」といった不安は常につきまとうものですが、本書を読むことでそうした迷いが確実に減少します。
通読に必要な時間はおおむね3〜4時間。休日の午前中や夜勤明けの落ち着いた時間帯を活用すれば、その日のうちに全体像を把握できるでしょう。短時間で理解できる一方、再読するたびに新しい気づきが得られるため、時間を有効に使いたい初学者にとって非常に実用的な教材であるといえます。

2.本書の特徴

【本書の特徴】
●二つの薬剤を左右見開きで比較
●看護師と薬剤師、二つの視点で解説
【本書で学べること】
●新人ナースがまず押さえたい薬剤基礎情報
●後輩指導にも使えるわかりやすい薬剤の使い分け
●128 種類の薬剤をイラストと表で整理

最大の特徴として、二つの薬剤を左右の見開きで並列しながら比較するレイアウトを採用している点が挙げられます。看護師と薬剤師という異なる専門職の視点から情報が整理されているため、読者は処方だけでなく、投薬管理や患者指導に必要なポイントを自然に理解できます。
例えば、新人ナースがまず押さえておきたい薬剤基礎情報がわかりやすく提示されているだけでなく、先輩が後輩を指導する際にそのまま使用できる説明例やイラストが豊富に収載されています。掲載されている薬剤は一二八種類にも及び、それぞれの作用機序や副作用、臨床での位置づけが表と図によって視覚的に整理されているため、ページを開いた瞬間に重要事項が目に飛び込んできます。
各見開きが独立して完結しているので、興味のある薬剤から読み進めても全体の理解を妨げることがなく、どのページを開いてもすぐに臨床に直結する知識が得られる構成になっています。

3.個人的総評

見開き比較で合計128種類もの薬剤を勉強できるため、途中で挫折しにくく、保湿剤やカテコラミン受容体など他書で手薄になりがちな領域も丁寧に解説されています。
とにかくわかりやすく、読み進められるのに振り切っているのに好感を持てますね。

また、臓器をモチーフにした可愛らしいイラストやシェーマが随所に差し込まれているため、文字情報だけでは記憶に残りづらい部分も視覚的に定着しやすいと感じました。

多職種連携を強く意識したコラムは、チーム医療を推進する現場でそのままレクチャー資料に流用できる実用性を備えています。一方で、薬理機序を深く掘り下げたい中級者以上には物足りなさが残る点、そして頻用薬以外の薬剤は扱われていないため、深く学んでいくにはやはり自力で補完が必要な点は、弱点といえるでしょう。

4.おすすめの使い方・読み進め方

【本書のおすすめの読み方・活用方法】
1.時間がある方はまず通読し、全体像をつかむ
2.苦手分野を目次からつまみ食いし、二剤の違いに注目して復習
3.症例を経験したら該当ページを読み返し、知識を定着

まず時間に余裕のある方は、本書全体を通読して薬剤比較の流れやレイアウトの使い方に慣れることを推奨します。通読後は自分の苦手意識が強い領域を中心に、目次を手がかりとして再読すると理解が飛躍的に深まります。

二剤が並置されている構造上、それぞれの薬剤の違いに注目しながら読み返すことで、臨床判断の精度が向上します。実際に患者と向き合った後で該当薬剤のページを開き直すと、自分の経験がテキストと結びつき、高い定着効果が期待できます。さらに、こうしたサイクルを繰り返すことで、紙面上の知識が臨床現場のリアルな実践知に変換され、学習効率が大幅に向上するでしょう。

5.まとめ

本書は、臨床現場で頻度の高い薬剤を短時間でマスターしたい新人ナースや初期研修医が最初に読むべき一冊です。読後には薬剤選択の不安が減り、日々の診療がスムーズになります。もし薬剤に対する漠然とした不安や疑問を抱えているなら、まず本書を手に取ってみてください。読み終えた瞬間から、薬剤選択の判断根拠が自分の中にしっかりと根づいたことを実感できるはずです。

6.医書レビュー

基本情報 薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳
こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック
著者:はっしー,木元貴祥
出版社:メディカ出版
発行年月日:2023/9/5
ターゲット層

臨床現場でよく使う薬剤を素早く学びたい研修医・看護師

推定読了時間

3〜4時間

本書の特徴

●二つの薬剤を左右見開きで比較
●看護師と薬剤師、二つの視点で解説

本書で学べること

●新人ナースがまず押さえたい薬剤基礎情報
●後輩指導にも使えるわかりやすい使い分け
●128種類の薬剤をイラストと表で整理

本書のおすすめの読み方・活用方法

●時間がある方はまず通読し、全体像をつかむ
●苦手分野を目次からつまみ食いし、二剤の違いに注目して復習
●症例を経験したら該当ページを読み返し、知識を定着

評価
購入先 薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳 こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック

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より多くの医学書レビューをご覧になりたい方、医学書の読み進め方を学びたい方は、私がこの4月から運営しているウェブメディア、医学書LABOも是非覗きに来てもらえると嬉しいです!
https://medicalbooklabo.com/

<プロフィール>

三谷 雄己先生

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
X https://x.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

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