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2025.03.21

書評『研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-』

民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。

医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。

レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)

書評『研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-』

医師として初期研修医や専攻医の道を歩むなかで、突然やってくる数々の“モヤモヤ”や壁。

誰に相談すればいいのか

どのように乗り越えればいいのか

不安を抱える方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する『研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-』は、先輩医師が実体験を交えながら、研修で必ず直面する“裏国家試験”とも言える暗黙のルールやコミュニケーションの要点を解き明かす一冊です。

薄っぺらい精神論ではなく、現場のリアルな失敗や成功エピソードが満載で、読むたびに新たな気づきが得られます。

これから臨床に踏み出す医学生や研修直前の方はもちろん、指導医や専攻医として後輩を支える立場の方にもおすすめ。

医療現場で繰り返し起こる葛藤を、一緒に整理し、明日の自分に繋げていくヒントを見つけてみませんか?

本記事では、この書籍の魅力や読み方のコツを徹底的にレビューします。

研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-
研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-
水野 篤 (著)/ メディカルサイエンスインターナショナル 発行
価格:3,300円(税込)
発刊:2017/5/1
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書評『研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-』
    1. 1.本書のターゲット層と読了時間
    2. 2.本書の特徴
    3. 3.個人的総評
    4. 4.おすすめの使い方・読み進め方
    5. 5.まとめ
    6. 6.医書レビュー

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】
初期研修医・専攻医・指導医はもちろん、研修直前の医学生にもおすすめです。
実際の現場で遭遇する「暗黙のルール」や臨床場面における悩み事を深く掘り下げているため、後輩を指導する立場の方にとっても、初心を思い出しつつ学び直すいい機会になるでしょう。

【推定読了時間】
ページ数は約232ページとボリュームがあり、しかも内容が深いため、1週間ほどかけてじっくり読み解くのが理想です。
一気に通読しようとすると、やや難解に感じるかもしれません。

2.本書の特徴

【本書の特徴】
●「裏国家試験」とも呼べる、研修生活で遭遇する暗黙のルールを解説
●著者の豊富な実体験を交え、「研修医のアタマ・心・からだ」に関わるテーマを縦横無尽に語る
●EBMや臨床推論だけでなく、仕事の効率・プライベートの過ごし方・将来プランまで広く網羅
●ちょっと難解な表現もあるが、天才的な思考回路を追体験できる面白さ

本書では、卒後研修の「Hidden curriculum(隠れたカリキュラム)」が大きなテーマとなっています。

コミュニケーションやコンサルテーションにおける病院ローカルルールと、社会人としての一般的なルールをどう見分けるのかといった“本質的な部分”が散りばめられており、著者自身の失敗や葛藤もリアルに描かれています。

3.個人的総評

まず、本書の最大の魅力は「天才的な臨床センスを持つ著者が、いかに悩み・つまずき・乗り越えたか」を赤裸々に知れる点です。

一方で表現はやや難解なところがあり、一読しただけではすべてを理解しきれないかもしれません。その分、何度も読み返すことで“新たな気づき”が得られる一冊といえます。

特に、暗黙のルールや裏試験という言葉を用いて、臨床現場でのコミュニケーション術やローカルルールを深掘りするくだりは、誰しもが研修中にモヤモヤしがちなポイントを鮮明に解説してくださっています。

「そもそもそれ、社会人として当たり前のこと? 病院ローカルの暗黙ルール?」といった視点で問題提起をしてくれるので、研修スタート前に読むと大きなヒントが得られるはずです。

個人的には、勉強会でもご一緒することのあった聡明な水野先生のマインドを直接注ぎ込んでもらえている感覚がして、とても読むのが心地よかったです◎

4.おすすめの使い方・読み進め方

【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●ゆっくり1週間ほどかけて通読する
●大事な場面や壁にぶつかったタイミングで「拾い読み」してモチベーションを上げる
●気になる章だけ先に読んでみてもOK
●何度も繰り返し読んで“思考回路”を味わうとより理解が深まる

読みやすい“啓発本”のように一気に読むというよりは、時々立ち止まりながら理解を深めるスタイルが合っている印象です。

天才肌の著者がどんな風に壁を乗り越えたのか、その思考プロセスを追体験するように読めば、イメージがつきやすいでしょう。

また、「今日はちょっと辛いな…」「ミスをしてしまった…」という時に本書を開くと、背中を押してくれるメッセージが見つかるはずです。

5.まとめ

研修生活に潜む“裏国家試験”を可視化し、勇気を与えてくれる指南書です。

著者である水野先生が「暗黙のルール」を含めたリアルな初期研修の実態を惜しげもなく披露しているため、「こんな優秀な先生でも、悩みや失敗を経験していたのか!」という点で強い励みになる作品です。

『研修医の羅針盤』という、初期研修でぶつかる壁についてまとめた一冊があります。漫画形式や具体例でわかりやすく学べるこの本と併せて読むと、さらに理解が深まりそうです。

手に取りやすい一冊なのでよかったら是非ご一読を▼
https://dancing-doctor.com/compass-for-resident/

臨床の世界は決して単純ではありませんが、本書を通じて「壁にぶつかった時にどう考え、どう乗り越えるか」のヒントを得ることで、一歩ずつ着実に前進できるはずです。

6.医書レビュー

基本情報 研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-
著者:水野 篤
出版社:メディカル・サイエンス・インターナショナル
発行年月日:2017/5/1
ページ数:232ページ
ターゲット層

初期研修医・専攻医・指導医・研修直前の医学生

推定読了時間

約1週間かけてじっくり

本書の特徴

●天才的思考回路による研修生活の“裏試験”体験記
●暗黙のルールやローカルルールを可視化し、“モヤモヤ”に向き合う
●EBM・臨床推論の基礎から将来のキャリアプランまで広くカバー

評価
購入先 研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-

本書のまとめ 気づきと勇気を得られる、現実的な“研修生活ガイド”です

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この本を読んで、「あの時のモヤモヤはこういうことだったのか!」と気づく方も多いと思います。
キャリアの壁に直面した時、本書を手に取ってページをめくれば、明日からの研修に少し気持ちが軽くなるかもしれません。
何度も読み返すうちに得られる発見がきっとあるはず。

また、「研修医の羅針盤」など、他の研修医向け書籍と併せて読むことで、より多角的に暗黙のルールや壁の乗り越え方を学べるでしょう。
臨床の現場は大変ですが、先輩たちの成功や失敗の共有があなたの一歩を力強く後押ししてくれます。
この書籍が、みなさんの研修生活を明るく、前向きにしてくれることを願っています!

この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は今後も定期的に記事を更新していきますので応援の程よろしくお願いいたします!

みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります。

★今回の書籍以外にも、踊る救急医先生の医学書レビューはこちらのページで読むことができます!
想定読者や各診療科ごとにわかりやすくまとめられているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてくださいね。
詳細はこちら≫https://dancing-doctor.com/2021/03/31/review-reader/

<プロフィール>

三谷 雄己先生

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター

立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。


【踊る救急医】
X https://x.com/houseloveryuki
ブログ https://dancing-doctor.com/

三谷 雄己【踊る救急医】

書評『研修医のアタマと心とからだ -モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?-』

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