記事・インタビュー
Vol.3 勤務医から、自力で独立開業される方の資金計画~「資産形成」
この度『民間医局』で、医師の皆さまに「無料でライフプランを作成」するサービスを始めたのを機に、開始したこの連載。前回までで、1.医師の人生にとって「ライフプランを作成することがいかに重要か」、2.医師という専門性の高い職業だからこそ「それを失う/発揮できなくなる事態に備える“守り”のライフプランが必要」…といった点を、ライフ・コンサルタントの方(以下LCと表記)に、私(『民間医局』保険新企画担当:金井)から詳しくお伺いしました。これを受け今回と次回では、開業に伴って追加で考えるべき点を伺います。まず今回は表題の通り「自力で開業する方」を想定して話を伺います。テーマは「資産形成」~開業予定のない方もどうぞ。
金井 :資産を受け継がず、ご自身で開業する場合は、多額の資金が必要になりますね。
LC :はい。今回のポイントは、開業のタイミングと、お子様の教育資金が必要となる時期が重なることが多いという点です。一般的には、開業までに1,000万円貯めておいてください…なんて話はよく聞きますが、それでは足りないケースが多いのです。
金井 :なるほど。教育資金については、前回グラフで見ましたね。では、相当前から準備しないといけません。
LC :ただ、いつ開業したいのか…を予め計画しておけば、対応できるかと思います。準備が早ければ早いほど、負担も少なく済みますので、早目に取り掛かるのが得策です。
金井 :わかりました。では、それぞれについて教えてください。
LC :教育資金については、第5回の記事で詳しく述べさせて頂きますが、私立大学の平均的な学費は、国立大学の5倍以上になることもあり、最低でも約2,000万円、最高で約4,700万円、医学部となるとそれ以上です。仮に2,000万円を18年で貯めたとすると、月々92,600円の貯蓄が必要となります。
金井 :開業資金はいかがでしょう?
LC :必要資金を5,000万円とし、10年後に独立開業を目標とされる方の場合を考えましょう。自己資金を1,000万円とすると、毎年の貯蓄額は1,000万円÷10年÷12ヶ月≒83,000円となります。そして、残りの4,000万円を借入れるとなると、その返済についても考えなくてはいけません。
以下のグラフは収入920万円、生活費600万円(住居費含)、開業頭金1,000万円、開業借入4,000万円、家族4人という例です。まずは単年度の収支を時系列で示したグラフです。
上記の通り、収入と生活費は、教育資金+開業資金1,000万円のタイミングで、収支が悪くなります。
次のグラフは、貯蓄残高を時系列で示したものです。
貯蓄残高でも、開業時は負債超過となります。老後生活資金はクリニック経営が順調に進めば潤沢ですので、やはりポイントは、教育資金と開業資金です。
金井 :さてここで今回のテーマ「その必要資産をどう形成してゆくのか?」ですね。
LC :もちろん、少しでも金利の良いものをお薦めしますが、割と皆さん、不動産投資やオフショア投資に手を出されておられるように感じます。そこまでハイリスクな投資に手を出さなくても、国が認めた優遇税制を活用するだけで、十分に資産形成はできるかと思います。まずは積立NISAやイデコを検討してみましょう。
金井 :それは意外でした!そのやり方で、十分な資産形成ができるのですね。
LC :これにはもう一つ理由があります。開業資金の借入には当然、審査があって、不動産投資等で過度な借入があり、経営が上手くいっていないと、自身の信用情報に傷が付き、借入自体が難しくなる可能性もあります。だから投資は、慎重に進めるべきだと思います。
金井 :他に、勤務医から開業を考える際に、考慮すべきポイントがあればお願いします。
LC :そうですね。前回ご説明した就労不能のリスク(医師として働けなくなった場合)については、ご自身が経営側に回り、医師を雇えば問題解決できるので勤務医の方と比べると低いと言えるでしょう。ただそれでも、自身で働く場合と比べると、他人に給与を支払う必要が生じますし、開業資金の借入返済も考えると、やはりある程度備えておくことは必要かと思います。
金井 :開業される方は、出来る限り早期に、計画を立てた方がよさそうですね。
LC :重ねて強調しますが、今のキャリアビジョンとキャッシュフローを分析し、早期にギャップを確認することが大事です。そしてそのギャップを、どのように埋めていくか…を考える、きっかけとして頂ければ嬉しいです。
金井 :次回は、同じく開業について、今度は資産を承継する場合に生じる課題を伺います。
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