記事・インタビュー

2018.05.08

メディカルドクターに聞いた製薬企業・CROで働くやりがいとキャリアパス

バイオジェン・ジャパン株式会社 戸田康夫さん

ヒューマンダイナミックス社では、約20年に亘り製薬企業やCROへ多くの先生方を紹介し、転職を成功に導いています。今回は、現在、製薬企業で勤務されているメディカルドクターから、医師が製薬企業・CROに勤務するために必要な資質やスキル、メディカルドクターとしてのやりがいやキャリアパスなどについてお話を伺いました。

<お話を伺った先生>

戸田 康夫さん
バイオジェン・ジャパン株式会社
クリニカル・ディベロップメント部

慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院などで脳神経外科医として勤務。その後、エーザイ株式会社とブリストル・マイヤーズ株式会社において、臨床開発医師およびメディカルディレクターなどを務める。MSD株式会社ではメディカルアフェアーズのシニアメディカルアドバイザーとして活躍し、2017年にバイオジェン・ジャパンに入社。クリニカル・ディベロップメント部に所属し、神経疾患領域の難病に対する治療薬の開発に取り組んでいる。

Q:バイオジェン・ジャパンの特徴と、御社における戸田さんの役割について教えてください。

A:バイオジェンはアメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置くバイオ製薬会社であり、1978年に4人の科学者(うち2名は後にノーベル賞を受賞)によって創業されました。
バイオジェンは創業以来、神経疾患、自己免疫疾患、希少疾患の治療法開発に重点を置き、これまで世界で最も広範な多発性硬化症治療法のポートフォリオや難病への革新的な治療法を開発してきました。

近年はニューロサイエンス領域のパイプラインを充実させ、重篤で治療が困難なアルツハイマー病、脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における新たな治療法開発に向けた最先端の研究プログラムを推進しています。直近の実績としては、2017年に発売された脊髄性筋萎縮症(SMA)の薬剤、「スピンラザ®」が、アメリカ、ヨーロッパ、日本を始めとする各国で順次承認されています。

このように、開発の難しい領域にも果敢に挑戦し、患者数の少ない疾患であってもしっかりと向き合い、必要とされている治療を世に出すという姿勢や文化に魅かれバイオジェンに入社しました。

私はメディカルドクターとして、バイオジェン・ジャパンのクリニカル・ディベロップメント部(臨床開発部門)に所属しています。この部署の大きな役割は、日本で新薬の承認を取得して上市することであり、私はメディカルドクターという医学的な専門家としての立場で、治験の企画から試験の実行、進捗管理、安全管理、さらに承認申請やそれに伴う様々な交渉などに携わっています。

Q:臨床医にはないメディカルドクターとしてのやりがいは何ですか?

A:臨床医と異なり目の前の患者さん一人一人を直接治療するわけではありませんが、メディカルドクターはまだ世に出ていない新たな治療法を実際に臨床の場で実用化させ、一人の患者さんだけではなく、多くの患者さんの治療に貢献できる仕事です。

新たな医薬品や治療法を世に出し、多くの患者さんを助け、医療の発展に大きく貢献できるのは、臨床医にはないメディカルドクターならではのやりがいです。

Q:メディカルドクターに必要な資質やスキルはありますか?

A:多くの場合臨床医は、自身が責任を持って治療方針を決定し、その決定にしたがって周りのスタッフが動いてくれます。一方、メディカルドクターは専門分野の異なる様々なエキスパートたちと協同して一つのプロジェクトを進めていくチームの一員であり、物事を進めるにあたって、多様な価値観や意見を受け入れつつ合意を形成していく協調性がメディカルドクターにとって必要な資質だと思います。

さらに、メディカルドクターは臨床の知識だけでその役割を全うすることはできません。薬剤の開発や医薬品の規制など幅広い知識が必要であり、常に意欲的に学び、新たな知識を吸収していく姿勢も大切です。

また、多くの製薬企業やCROではグローバル試験を行っており、外資系はもちろん内資系企業においても英語力は必要となります。特に英語での交渉力は重要であり、海外とのやりとりでは日本の状況を説明したり、説得したりと、積極的にアピールする姿勢も求められます。

ただし、多くのメディカルドクターは最初から高い英語力をもっていたわけではなく、日常の業務のなかで英語力を高めています。海外とのメールや電話会議など日常的に英語を使う機会が多いため、英語に不安がある方でも必然と高い英語力を身に付けることができるでしょう。医師のみなさんはそれなりの英語力をもっているので、メディカルドクターを目指すにあたって特別に英語を学ぶ必要はないと思います。

Q:海外勤務は可能ですか?

A:バイオジェン・ジャパンでは実際に海外勤務をしている方もいますし、逆に本社のあるアメリカで採用され日本に戻って来る方もいます。

製薬企業やCROのほとんどの会社がダイバーシティ(多様性)を重要視しており、日本企業が海外から人材を求めたり、逆に日本人から海外の企業に求められたりするなど、国籍のダイバーシティは進んでいます。バイオジェン・ジャパンでも、今後、人材交流に力を入れていく予定であり、海外勤務の可能性も大きく広がっていくと思います。

また、最近ではグローバル治験が増えてきたことにより、実際に海外で勤務しなくとも日本にいながら世界を舞台に仕事をすることができます。メディカルドクターはグローバルに活躍できることも大きな魅力だと思います。

Q:メディカルドクターにしかできない“強み”は何だと思われますか?

A:やはり実際に患者さんを診て治療をしてきたという臨床経験は大きな強みであり、そうした経験を持つメディカルドクターの役割や貢献度は非常に大きいと思っています。

病気や標準的な治療などの知識に関しては文献やガイドラインを読めば誰でも得ることができますが、実際の臨床現場では教科書通りの典型的な症例はあまりなく、治療においても教科書通りにいくとは限りません。患者さん、そして患者さんのご家族には様々な背景や考え方があり、それらも考慮して治療方針が決まります。

このように臨床現場では不確実性が多くあるなかで診療が行われており、それを経験してきたメディカルドクターは、試験データや患者さんの様々な情報の背景を読み取り医学的判断を下すことができますし、病院に出向いて新薬の説明をする際にも臨床医の視点に立った細やかな説明をすることができます。こうしたことはメディカルドクターの大きな強みであると思います。
また、製薬企業にとってペイシェントファーストの視点は非常に大切であり、患者さんに直接向き合ってきた臨床医の視点から、新薬や新たな治療法の開発に関わっていく意義はとても大きいと思っています。

Q:メディカルドクターのキャリアプランや将来性について教えてください。

A:メディカルドクターが主に活躍しているのは、臨床開発部門、安全対策部門、メディカルアフェアーズの3部門で、なかにはマーケティング分野で活躍されている方もいます。さらにはビジネス全体を率いる人も出てきています。メディカルドクターの可能性は大きく、自ら積極的に手を挙げていけば様々な場で活躍することができると感じていますし、キャリアパスはとても幅広いと思っています。

医師にとって、企業で働くということにまだまだ壁あるとは思いますが、近年、日本でもメディカルドクターの重要性は高まっており、海外のようにもっと身近な職種となっていくでしょう。

メディカルドクターとして企業に入ることで、臨床試験のノウハウを始め多くの事を勉強することができますし、再び臨床の場に戻っても企業にいたことは決して無駄にはなりません。むしろメディカルドクターとしての経験は、臨床研究の場などで大きく役立つはずです。また社会人としての学びや、視野が広がることにより、人としても成長できるように思います。

企業に入っても、人々の健康の向上に寄与するという医師としての本分を果たすことに変わりはないと思います。医師のみなさんには、身近なキャリアの選択肢の一つとしてぜひメディカルドクターを考えてほしいですし、メディカルドクターというキャリアを考えるということだけでも、医師としての視野と可能性は大きく広がるのではないかと思います。

※この記事は平成30年3月にお話を伺ったものです。

<プロフィール>

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堤 康行(つつみ・やすゆき)
株式会社ヒューマンダイナミックス
代表取締役社長

 

ノバルティス、イーライリリーおよびCROのパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門の企業医師と業務を共にする。製薬企業およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬企業動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。

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