アンケート記事

2026.03.06

保険診療と自由診療の広がりがもたらす医療の多様化とは ~医療サービスの多様化に関するアンケート~

近年、医療を取り巻く環境は大きく変化しており、保険診療を中心とした従来の医療提供体制に加え、自由診療や予防医療、オンライン診療、企業・自治体との連携など、医療のあり方は多様化が進んでいます。

患者ニーズの変化や医療技術の進歩、制度・報酬構造の変化などを背景に、医師の働き方やキャリアの選択肢も広がりつつあり、保険診療と自由診療の関わり方やバランスについて、現場での捉え方は一様ではないと考えられます。

さらに自由診療に対する意識や、導入の実態、今後の可能性や課題については、施設形態や専門領域、世代などによっても温度差があると推察され、医療の多様化は今まさに過渡期にあると言えるでしょう。

本アンケートでは、医師の皆様が現在どのように保険診療・自由診療に関わっているのか、また医療の多様化をどのように捉えているのかを明らかにすることを目的に調査を実施しました。

[ 目 次 ]
医療サービスの多様化について
・保険診療体制について感じること
・現在の保険診療体制が続いた際の変化
・医療提供形態の変化/変化について感じること
・医療業界に起きている変化
・自由診療経験/意向
・経験した/経験したい自由診療
・今後、医療制度・現場に必要な取り組み
・将来の働き方

Q.現在の保険診療体制について、どのようにお感じになりますか。(単数回答)

  • 保険診療体制への課題認識は約8割、40代で最も強い危機感

現在の保険診療体制について、「大きな課題」が40%、「やや課題」が38%となり、全体の約8割が何らかの課題を感じている結果となりました。現場では、現行の保険診療体制に対して一定の課題意識が広く認識されている様子がうかがえます。40代では「大きな課題」が48%と最も高く、課題認識は85%に達しました。診療現場の中核を担いながらマネジメントや制度対応にも関わる世代であり、現行制度の制約や運用面での課題を強く実感している可能性が考えられます。

保険診療を基盤とした医療提供体制は維持されている一方で、現場では人員・報酬・制度運用など複合的な課題が意識されており、こうした背景が医療の多様化や自由診療への関心の高まりとも関係している可能性が考えられます。

Q. 現在の保険診療体制が続いた場合、医療業界で起きると思う変化(もしくはすでに起こっていること)を教えてください。(複数回答)

  • 経営悪化への懸念が最多、現場の声からも制度の持続性への不安が浮き彫りに

現在の保険診療体制が続いた場合に挙がった主な懸念は、経営悪化、地域医療の維持困難、自由診療への移行で、いずれも保険診療中心の体制が持続しにくいという不安を示していました。年代別では、40代は経営面への危機感が強く、30代以下は自由診療を現実的な選択肢として捉える傾向があり、50代以上は地域医療全体への影響を重視していました。

保険診療の改善点では、診療報酬の引き上げや物価・人件費上昇への対応策が中心で、給付範囲や自己負担、混合診療など制度の根幹に踏み込む意見も多く寄せられました。自由診療については人材流出への懸念と、保険診療を補完する現実的な手段とみる見方が併存。全体として、保険診療を基盤としながら、制度の持続性と医療の多様化の両立を求める認識が広がっていました。

Q. ①医療提供の形態について、現在と過去と比べてどの程度変化していますか。(単数回答) ②医療提供の変化が医療業界に起こることについて、どのようにお感じになりますか。(単数回答)

  • 医療提供の変化は実感が過半数、評価は中立が最多で割れる

医療提供の形態については、「大きく変化(12%)」+「多少変化(39%)」で51%が変化を実感していました。一方で「どちらともいえない(32%)」も多く、捉え方には幅があります。年代別では、50代以上は「大きく変化」が相対的に高く、30代以下では中立・変化なしがやや多く、若年層はデジタル前提の体験から“まだ追いついていない”と見えやすいのに対し、年配層は制度・運用の累積的な変化を捉えやすいという構図が示唆されました。

変化の評価は「どちらともいえない」が54%で最多、肯定38%、否定8%となりました。50代以上では肯定が少ないなど、同じ“変化”でも評価には年代差が見られます。

変化の評価の記述理由では、肯定側からは「患者の事前情報で説明が進めやすい」「オンライン活用でアクセスが広がる」「予約制・トリアージで受診が適正化する」など、効率化につながる点が評価されていました。
一方で、否定や慎重な声としては、SNSなどによる誤った情報をそのまま信じて来院するケースの増加や、サービス的な対応を求められる場面の増加、複数の医療機関を次々受診する行動が増えること(いわゆる“受診の渡り歩き”)など、現場負担の拡大が挙げられました。また、人件費や資材高騰に制度が追いつかない「受け皿不足」への不安も多く見られます。

こうした状況から、医療の変化そのものよりも、運用や環境が整っているかで評価が分かれるという見方が、中立回答につながっていると考えられます。

Q.医療業界にどのような変化が起きていると感じるか、あてはまる項目をお選びください。(複数回答)

  • 生活者行動の変化が先行し、情報化・自費・オンラインが並走

最も多かったのは「医療情報を事前に調べて来院」で、患者の情報収集行動の変化が中心に捉えられていました。続いて「医療機関の情報発信」が挙がり、受診前の接点がSNSや検索など院外へ広がっている様子がうかがえます。そのほか、「自由診療への関心・利用の増加」「オンライン診療の活用」「予約制・トリアージの浸透」「予防医療ニーズの増加」など、診療の選択肢拡大や受診行動の最適化を示す項目も挙げられました。

年代別では、50代以上は患者の情報収集の増加を最も強く感じ、30代以下は自由診療への関心の高さが特徴的でした。40代は情報発信・予約制・予防ニーズなど複数の変化を幅広く捉える傾向があり、変化を実感する層ほど複数の項目を挙げるなど、より多面的に認識している様子が示されました。

Q.①自由診療について、ご自身にあてはまるものをお選びください。(単数回答) ②自由診療への関りについて、今後のご自身のご意向を教えてください。(単数回答)

  • 自由診療は「未経験が多数」だが、意向は機会があればが最多

全体では未経験者が多く、経験者は少数でした。年代差は小さいものの、勤務先では差が明確で、大学・公的病院は未経験が大半、クリニックは経験者が多く、自由診療がより身近な環境であることがうかがえます。
意向については「機会があれば関わってもよい」が最多で、30〜40代は前向き寄り、50代以上は「関わりたくない」「わからない」が比較的多く慎重でした。勤務先別では、クリニックで「積極的に関わりたい」が突出していました。

記述では、“機会があれば”が多い理由として、保険診療だけでは限界がある場合の現実的な選択肢というトーンが目立ちました。一方、慎重派は、質の担保や線引き(保険とのすみ分け・混合診療)、価格・トラブル対応、責任範囲の不明確さなどを懸念しています。総じて、ルールと責任の枠組みが見えない限り、前向きにも否定にも振り切れないという感覚が評価の割れ方につながっていました。

Q.①自由診療について、これまでに関わったことがある分野を教えてください。(複数回答) ②自由診療について、今後関わりたい分野を教えてください。(複数回答)

  • 自由診療で関与経験がある領域は「美容・AGA」が中心、今後は「予防医療」への関心が伸びる

自由診療の経験がある人(n=335)では、美容医療(50%)とAGA/男性医療(41%)が中心で、予防医療(30%)が続き、不妊治療(6%)は少数でした。一方、今後関わりたい領域(n=558)では、予防医療(64%)が最も高く、美容医療(50%)、AGA/男性医療(46%)、不妊治療(13%)も一定の伸びが見られました。

これらから、現状の自由診療は「美容・AGA」が入口になりやすい一方で、今後の意向は “治療中心” から “未病・健康管理(予防・ウェルネス)” へ軸足が移りつつある と読み取れます。自由診療を考える際の焦点が、収益性の高い領域だけでなく、継続的な健康支援や生活習慣への介入といった分野にも広がっていることが示唆されます。

Q.今後、医療制度・現場に必要な取り組みや仕組みを教えてください。(複数回答)

  • 医療制度・現場に必要な取り組みは「診療報酬」と「負担軽減」が二本柱

全体では「診療報酬の適正化/財源拡充」が最も多く、次いで「医師の業務負担軽減」が続きました。以降はほぼ同程度に分散しており、まず“報酬・財源”と“負担軽減”が中心軸となり、その先の課題が多方面に広がっている構図でした。

年代別では、40代は「診療報酬の適正化/財源拡充」が相対的に高く、制度側の手当てをより強く求める傾向が見られます。50代以上は「地域医療体制の見直し」が比較的多く、医療提供体制そのものの再設計への関心が特徴的でした。一方で30代以下は「保険診療と自由診療のすみ分け・ルール整備」がやや高く、制度運用の“線引き”を明確にしたい意識が表れています。

Q.将来的にご自身は、どのような働き方をしたいと思いますか。(単数回答)

  • 保険診療志向が過半数、クリニックは「複線化」「他領域中心」が相対的に厚い

全体では「保険診療を中心」が最も多く、「保険を軸にしながら他の領域」が続き、将来像としては“保険を基盤にする”姿勢が大勢を占めていました。属性別では、女性は男性より「保険中心」がやや少なく「他領域」に目を向ける割合が高めでした。勤務先別では差が大きく、大学・公的病院は保険診療を主軸とする意向が強い一方、クリニックは「保険中心」と「保険+他領域」が同程度で、「他領域中心」も比較的多く、働き方の複線化がより現実的な選択肢になっていることがうかがえます。

医師の将来像は「保険診療を軸にしつつ、必要に応じて他領域も組み合わせる」という方向性が中心で、勤務先によってその複線化の度合いが変わる構図となっていました。

「保険診療を中心」とする理由は、国民皆保険の公共性や標準治療に基づく“正統性”、制度としてのルールの明確さなど、“安心できる土台”としての信頼が中心でした。自由診療については、質や安全性、価格、トラブル対応の不確実性への警戒が多く挙がっています。一方、「保険中心+他領域」を選ぶ層は、保険診療の価値は重視しつつ、報酬や提供体制の限界から「保険だけでは難しい場面がある」という現実的な感覚を背景にしています。ただし、多くは保険を置き換える意図ではなく、保険でカバーしきれない部分を補う補完的な“複線化”として他領域を位置づけていました。

まとめ:医療の多様化の進行

本調査からは、医療の多様化が“すでに現場で起きている変化”として認識されつつ、その評価は運用や環境次第で大きく揺れる状況にあることが明らかになりました。背景には、保険診療体制の課題や、経営・地域医療・人材流出への不安があり、制度の補修(報酬・財源)と現場の負担軽減がまず必要とされています。

一方で、変化を生んでいる主な力は、生活者側の行動変化であり、受診前の情報収集、医療機関の発信、オンライン、予約・トリアージ、予防ニーズなどが重なって“受診の入口”が大きく組み替わっています。肯定的な声は効率化や意思決定の前進を評価し、否定的な声は誤情報や過剰要求、説明コスト、受け皿不足を懸念しており、評価の割れは「変化そのもの」ではなく「支える条件の不足」に由来していました。

働き方の将来像は「保険診療を軸にする」姿勢が中心で、公共性や標準治療に基づく確実さへの信頼が根強くありました。一方で、制度や経営環境の制約を踏まえ、保険だけでは補いきれない領域を組み合わせる“複線化”も広がりつつあり、特にクリニックでは現実的な選択肢として浸透しています。自由診療はその補完領域として位置づけられており、関与の判断は賛否よりも、線引きや質担保、責任のあり方が明確かどうかが重視されていました。領域別では、美容・AGAが経験の入口になりやすい一方、今後の意向は予防・ウェルネスへとシフトしており、医療の多様化が治療の外側(未病・生活支援)へ広がっている兆しが見られました。

総じて現場が求めているのは、多様化そのものの推進ではなく、保険診療の基盤価値を守りながら、新しい選択肢を安全に運用できる制度設計と現場実装(報酬・人員・ルール・患者側の理解)であり、過渡期の医療を“混乱”ではなく“持続的な移行”へとつなげるための条件整備が大きな論点として浮かび上がりました。

民間医局では、専任のエージェントが医師の皆さまのステージにあったキャリア形成をサポートしています。
お一人おひとりの希望に沿った柔軟なサポートで、ご希望に合う案件をご案内します。
ご要望やご状況を踏まえた臨機応変なサポートをさせて頂きますので、是非、ご相談ください。

~「民間医局とは」~
エージェントサービスのご案内、はじめての転職ガイドなど

 

【アンケート概要】
対象:「民間医局」会員の医師
回答方法:Webによる回答
調査期間・回答者数:
第1回 2025年11月  6日 実施・ 1,181人
第2回 2025年11月13日 実施・ 1,118人
第3回 2025年11月20日 実施・ 1,120人
第4回 2025年11月27日 実施・ 1,096人

 

保険診療と自由診療の広がりがもたらす医療の多様化とは ~医療サービスの多様化に関するアンケート~

< 前の記事へ

その他のアンケート記事を見る

一覧を見る