アンケート記事

「医師の働き方改革」、「地域医療崩壊の危機」、「医療機関の厳しい経営状況」など医療業界を取り巻く環境は引き続き、厳しい状況であるなか、実際に現場の先頭に立ち、日々、奮闘されている医師の皆様にもキャリアのどこかで必ず訪れるライフイベント(子育て・教育・介護など)がおありかと思います。
本アンケートは、医師のライフイベントが働き方やキャリアにどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的として実施しました。
[ 目 次 ]
医師のライフイベントと働き方
・現在の状況
・働き方への影響度
・働き方の変更
・高校生以下のお子様の進路選択
・お子様の教育費
・お子様の実際の進路選択
・仕事とプライベートの優先度
・プライベート時間の確保
Q. 現在のご自身の状況について、あてはまるものを教えてください(回答数: 1085・複数回答)

子育て中の医師が最も多いのは「30代」
回答者のうち「子育て中(小学生以下)」が421名と最も多く、全体の約3分の1を占めました。
これは医師に限らず、現在、日本社会全体の傾向と同様に、30代以下では半数近く(207名)が小学生以下の子を持つ状況であり、ライフイベントの中心が子育て期にあることがうかがえます。
一方で50代以上では「子どもは独立済み」(108名)が増加し、明確なライフステージの変化があらわれています。「介護中」は20名と少数ですが、50代以上で増加傾向が見られました。
Q. 現在のご自身の状況は、働き方にどの程度影響していますか

子育て期はやはり働き方への影響が大きい
「子育て中(小学生以下)」では「影響している」「やや影響している」を合わせると90%を超え、生活環境が働き方に大きく影響しています。一方、「既婚(子どもなし)」では「影響している・やや影響している」が約59%とやや低下し、家庭状況による差が見られました。
子どもの成長に伴い「子育て中(中学生以上)」では影響度が減少(72%)しており、育児期の負担が最も大きいことが明らかです。
Q. 現在のご自身の状況によって、働き方を変えた(または変える予定がある)ことはありますか。

子育て世代では転職の検討・勤務調整などが進む
「子育て中(小学生以下)」では「転職を考えた/転職した」が109人と多く、子育てと仕事の両立を模索する動きが見られました。
また「常勤から非常勤に切り替えた」も59人と、柔軟な働き方へのシフトが進んでいます。「子育て中(中学生以上)」では「スポット勤務を増やした」(54人)が多く、家庭環境に応じて働き方を調整していることが示唆されます。
Q. 高校生以下のお子さまの将来について、あてはまるものを教えてください。(回答数: 534・単数回答)

多くが「子どもの意思を尊重」
全体の約8割(78.5%)が「子どもの意思に任せたい」と回答し、親の職業にかかわらず自主性を重んじる傾向が強いようです。「医師になってほしい」は1割前後にとどまり、いずれの年代でも大きな差はありませんが、40代が13.7%とやや高くなっています。世代を問わず、医師家庭においても進路選択は本人の希望を優先する姿勢が一般的であるようです。
Q. 高校生以下のお子さまの教育費に対して、どのようにお考えですか。(回答数: 534・単数回答)

約3割が教育投資に積極的
「できるだけお金をかけたい」と回答したのは全体の29.4%で、7割は「特に意識していない」と回答がありました。一見すると積極層は3割と限定的ですが、医師層では収入水準が高く“意識しなくとも教育への投資が可能な世帯”が一定数存在する点も背景にあると考えられます。
40代では31.2%と最も高く、子どもの教育費が増える時期にあたることが影響していると考えられます。
一方で50代以上では「できるだけお金をかけたい」が24.7%と減少し、教育支出のピークを過ぎた世代の特徴が見られました。
Q. 大学・専門・社会人のお子さまの進路について、あてはまるものを教えてください(回答数: 187・単数回答)

約3人に1人が医師も含めた医療関連の進路を選ばれている。
回答の内訳をみると、医師または医学部在学中が34.8%、医療系職種が14.4%で、合わせると約半数が医療関連の進路を選択しています。残る50.8%はそれ以外の進路であり、医師のご子息であっても多様なキャリアを選択されているものの、やはりその家庭環境から、医療関連に進む方が多い様子がうかがえました。
Q. 仕事とプライベートの優先度について、ご自身にあてはまるものをお選びください(回答数: 1180・単数回答)

プライベート重視がやや優勢
「どちらかといえばプライベートを優先」が38.0%で最も多く、「どちらかといえば仕事を優先」(35.7%)をわずかに上回りました。「プライベート最優先」で最も高いのは30代以下で(20.0%)、家庭との両立を意識する傾向が強いようです。一方、50代以上では「どちらかといえば仕事を優先している」(41.6%)が増加し、年代による価値観の違いが表れています。
Q. 現在の勤務環境で、休暇やプライベートの時間をどの程度確保できているか教えてください(回答数: 1180・単数回答)

半数以上が一定の時間を確保
「しっかり確保できている」「ある程度確保できている」が全体の73.7%を占め、多くが一定の私生活時間を確保しています。
「ある程度確保できている」が最も高いのは40代の62.0%で、比較的バランスの取れた勤務環境がうかがえます。
一方、30代以下では「あまり確保できていない」「まったく確保できていない」を合わせると、30.5%と高い割合となっています。育児・家庭との両立に課題が残ると考えられます。
やはり医師の皆様も世代により働き方や意識には明確な違いが見られました。30代では子育て期にあたる人が多く、働き方への影響が最も大きい一方で、プライベート重視の傾向も強く、世代ならではの価値観も影響していると思われます。
40代は子育てと仕事のバランスをとりながら、勤務環境にも一定の満足が見られる層が多く、50代以上では子どもの独立や介護など新たなライフイベントが加わるものの、仕事優先での日常が保たれている割合が高いようです。
全体を通して、医師はライフステージに応じて柔軟に勤務形態を調整し、私生活との両立を模索していることが明らかになりました。
また、子どもの進路については本人の意思を尊重する傾向が強く、次世代への価値観も変化していることがうかがえます。
医師の皆様は一般の職業とは異なり、その社会的な使命や、患者様やそのご家族からの期待等々、就業環境もとても大変な状況でありながらも、「子育てと仕事の両立」や「子供の教育費」「親の介護」などは、医師の皆様であっても避けては通れない道であることがわかりました。
「医師の働き方改革」だけで解決するものではなく、医療業界全体の課題解決も含めて、医療機関や医師の皆様が安心して勤務を継続したり、ライフイベントを迎えたりすることができるような改革や取り組みはまだまだ必要であることが浮き彫りになった結果となりました。
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【アンケート概要】
対象:「民間医局」会員の医師
回答方法:Webによる回答
調査期間・回答者数:
第1回 2025年9月 4日 実施・ 1,085人
第2回 2025年9月11日 実施・ 1,108人
第3回 2025年9月19日 実施・ 1,180人
第4回 2025年9月25日 実施・ 1,124人