アンケート記事
2004年の臨床研修必修化以降、医師のキャリア選択の幅が広がり、これまでメインであった大学医局でのキャリア形成のみならず、様々な選択肢を選べるようになりました。また、医療機関への調査でも、約4割の施設が医師を採用する手段として、「エージェントを利用」と回答がある(※2020年病院3団体調べ)ように、一般の職業同様に、雇用主である医療機関も含め、医師の皆様が転職を検討する際には「エージェントを利用する」ことが1つの選択肢として広く浸透してきました。
転職を考えるきっかけは様々ですが、「転職を成功させたい」「ベストな選択をしたい」という想いを叶えるためにご支援するのが「転職エージェント」ですが、医師の皆様が「転職エージェントに望むこと」は具体的にどういうものなのか、民間医局コネクトでは今回、会員医師に計4回のWebアンケートを実施しました。
[ 目 次 ]
転職エージェントについて
・現在までの利用状況
・求める要素と理由
・面談方法の希望
・連絡手段と時間帯
・関わり方と理想像
Q. これまで、転職やアルバイト探しにおいて、医師向けのエージェントサービスを利用したことはありますか。(回答数: 1,048)
全体の4割超の医師が、現在エージェントを利用中
医師全体のうち、42.2%が「現在エージェントサービスを利用中」と回答しており、最も多い割合でした。年代別に見ると、50代以上では「現在利用している」が53.0%と最も高く、他年代を上回っています。一方、30代以下では「これまでに利用したことはない」が34.5%と他年代よりも高く、医師としてのキャリア・研鑽を積んでいる途中の若年層は、やはりエージェント利用未経験の傾向が見られました。
40代・50代で自身の専門スキルや資格を取得した後にキャリアの方向性を選び始める方が多いということがわかり、医師の皆様もキャリアを検討するタイミングでは、エージェントを利用することを検討する方が年々増加しているといえるでしょう。
Q. 医師向けのエージェントサービスにおいて、ご自身がエージェントに求めることをすべてお選びください。 (回答数: 778・複数回答)
求人の提案精度と情報の正確さを重視
「希望条件に合った求人の提案」は530人が回答し、最も重視された項目でした。次いで「情報の正確さ・詳しさ」(445人)、「対応スピード」(418人)が多く、全体的に実務面でのサポートを求める傾向が強く出ています。30代以下では「強引な提案をしないこと」(115人)が比較的多く、自身のキャリア形成のため慎重に転職活動を進めたいという姿勢が見て取れます。50代以上では「継続的なフォロー」(81人)への回答が他年代よりも多く見られました。医師としての充分な経験・人脈・専門性をもとに多様な選択肢が広がる中での、将来設計への支援を期待する様子がうかがえます。
Q.勤務形態の違いによって、エージェントに求めることが変わると感じますか。
勤務形態によって求める内容は変わると感じている医師が多い。
これまでエージェントを利用した事がある574名の回答のうち、「はっきり変わる」「少し変わる」と答えた医師は68.6%に上り、勤務形態の違いにより、エージェントに対する期待が変化すると考えている医師が多数いることがわかります。
年代別に見ると、30代以下は「変わる」との回答が74.1%と最も高く、特に「少し変わる」が47.7%と他の年代より多いのが特徴です。40代では66.7%、50代以上では64.2%が変わると感じており、年代が上がるにつれてその傾向はやや緩やかになります。特に50代以上では「あまり変わらない」「まったく変わらない」が全体より多く、勤務形態に関係なく、エージェントには一貫性を求めているともいえるかと思われます。
Q.前問で「求めることが変わる」とお答えいただいた理由を教えてください。
<自由回答>
・常勤先への転職は、勤務先の募集背景や人間関係、離職率など詳細情報まで把握するような気遣いの出来る方が嬉しい。逆にスポット勤務は条件のみで選択するので、それ以外はあまり拘らない。(内科系・40代)
・「常勤」や「定期非常勤」は永く勤めたいと思うので、勤務内容だけでなく、福利厚生や保険の有無、勤務体系の柔軟性はもちろん、その医療機関の将来性や業界の評判等総合的な情報をもとに勤務の可否を決めていくことになり、勤務内容重視のスポット求人とは踏み込み方が多少異なると思います。(内科系・50代)
・常勤側には詳細な医療機関の情報提示、スポット側には良い報酬の提示を期待します。(他科系・50代)
・スポットや非常勤では迅速性を求めるが、常勤の提案はスピードではなく、質を求めたい
(外科系・40代)
Q. エージェントとの面談について、ご自身はどのようにお感じになりますか。「常勤」「定期非常勤」「スポット勤務」それぞれの働き方について、あてはまるものをお選びください。 (回答数: 778)
<雇用形態別>
雇用形態が柔軟になるにつれ、面談を希望されないケースがやや多めに
常勤では対面であってもオンラインでも面談自体を前向きに受け入れている様子がうかがえます。定期非常勤でも45.0%が同様の回答ですが、「面談を望まない」という回答が29.7%でした。スポット勤務では「面談を望まない」が41.5%と最も多く、スポットアルバイトの紹介においては、面談を希望しないという意見が増えており、
手厚い支援を望む「常勤」と効率性・スピードを望む「スポット」で傾向に違いがでています。
<年代別>
全年代で「対面・オンラインとも可」が最多、40代は特に高率
勤務形態別の回答を全て総計し年代別で見ると、40代は「対面でもオンラインでも構わない」が68.1%と他年代よりも高く、コロナ禍を経て、多くの世代にWEB面談の活用が広く浸透していることがわかります。
一方、30代以下では「オンラインのみ希望」が28.3%と高く、多忙な中時間を効率的に使う事ができるデジタル対応を望む声が目立ちました。一方、50代以上では「対面のみ希望」が20.7%と他の世代と比較し多い傾向となり、担当エージェントとの直接の面談による密なコミュニケーションを重視した支援を望んでいる傾向が見られます。
Q.エージェントとの連絡手段として、主に利用しているものを教えてください。(回答数 常勤: 440 定期非常勤: 500 スポット勤務: 524)
雇用形態にかかわらず、メール・SMSが主流。スポット勤務では電話・LINEが少数派。
勤務形態を問わず「メール・SMS」が圧倒的に多く利用されていることが分かります。特にスポット勤務では88.7%、定期非常勤では86.4%、常勤でも81.1%がメール・SMSを選択しており、非対面かつ自分のペースでやり取りできる手段が医師に好まれている傾向がうかがえます。
一方で、電話やLINE、オンライン通話といったリアルタイムのコミュニケーション手段の利用率は低く、特にスポット勤務ではその傾向が顕著です。スポット勤務では即時性よりも、効率的な連絡や確認が重視されている可能性があります。
Q.エージェントから来るメールを、確認しやすい時間帯を教えてください。
「18~24時」が最多。30代以下では早朝や夜間の柔軟な対応も目立つ。
全体で最も多かったのは「18~24時」(252件)で、「通知が来たら確認」(115件)、「12~18時」(128件)と続きました。勤務後の時間帯や個別対応が好まれていることが示唆されます。
30代以下では「6~9時」(33件)や「24時~6時」(8件)など、他年代に比べて早朝・深夜の回答が多く、時間の柔軟性が求められている傾向があります。50代以上では「12~18時」や「18~24時」が中心で、比較的日中~夜の安定した時間帯を重視する傾向が見られました。
Q.エージェントサービスにおいて、担当者(エージェント)が変わることについて、ご自身はどのように感じますか。
条件付きでの担当変更許容が約半数
「内容やタイミングによる」が52.7%で最多となりましたが、それぞれの転職活動の進行度合いや勤務形態でのサポートの深さの違いもある事をふまえ、多くの医師が担当変更を一概に良し悪しでは判断していないことが分かります。また「変わっても問題ない」とする回答は39.5%と一定数ありましたが、一方で、「変わったら困る」との声も7.7%存在しました。
医師側はニーズへの応対に支障がなければ担当者の交代を受け入れる柔軟な姿勢を示していますが、やはり、
「常勤」での支援については担当者との関係性も重視して転職活動を進めたいと考える方が多いようです。
Q.ご自身が思い描く理想のエージェント像がありましたら、教えてください。
年代によりエージェントに求める価値観に違いが見られる。
年代別に見ると、30代以下では他の年代と比較し「レスポンスの迅速さ」や「交渉力」など、スピード感と実務的なサポートを重視する傾向が強く出ています。特に「レスポンス・対応の迅速さ」は18.9%と他の年代より高く、キャリア形成中である若手層ほど、転職活動の効率性を重要視しているようです。
40代では「希望条件の的確な把握・マッチング力」が31.1%と最も高く、自身のキャリアと生活環境に適した提案を求める傾向が顕著です。また、「情報の質・透明性」も 16.7%と関心が高く、入職の決め手となる質の高い情報を重視していることが見て取れます。
50代以上では「親身な対応・誠実さ」が37.5%と圧倒的に多く、長年の経験を持つ医師ほど、信頼関係を基にしたエージェントの支援を重視しているようです。
以上、常勤・定期非常勤は「募集の背景」や「職場の人間関係」など求人票以上の情報量や質を重視し、スポット勤務は報酬優先の傾向が明らかになりました。年代別では、若い世代は効率性やスピード感、ベテラン層は適合性や信頼関係を重視される結果となりました。
面談方法は若い世代ほどオンライン、ベテラン層ほど対面志向が強く、スポット勤務では工程短縮を求める声もあります。連絡手段は年代問わず「メール・SMS」が支持されているという結果となりました。
これらの結果から、エージェントは、医師それぞれの年代や勤務形態に応じたきめ細かな対応を提供することが望まれており、エージェントの支援を望まれる医師によって異なる、バックボーンや置かれている環境も踏まえながら、連絡手段も柔軟に対応しつつ誠実なご支援をすることで、信頼関係の構築や満足度向上につながることがわかりました。
多くの医師がエージェントを利用する機会も増えているなかだからこそ、単なる求人紹介ではなく、医師一人一人の声に寄り添い、個々の背景や価値観に寄り添った臨機応変で柔軟な支援が望まれているといえるでしょう。
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【アンケート概要】
対象:「民間医局」会員の医師
回答方法:Webによる回答
調査期間・回答者数:
第1回 2025年7月 4日 実施・ 1,048人
第2回 2025年7月10日 実施・ 831人
第3回 2025年7月18日 実施・ 721人
第4回 2025年7月24日 実施・ 705人