アンケート記事
2004年の臨床研修必修化前に大学を卒業された医師は「大学医局に所属してキャリア形成」することが当たり前となっていました。研修必修化から20年以上経ち、1度も大学医局に所属せずにキャリア形成されてきた医師の方もいらっしゃる現状です。
「医師のキャリア形成の選択肢が増えた」と言われる一方で、この20年間で、医師の働き方改革、専門医制度の変更などの仕組みや制度自体の見直し、そして世代間で仕事やプライベートに対しての優先度に対する価値観のギャップなど、医療業界のみならず、様々な変化も出てきつつある昨今、医師の皆様にとって「大学医局」の位置づけは変化しつつあるのでしょうか?民間医局コネクトでは今回、会員医師に計2回のWebアンケートを実施しました。
[ 目 次 ]
医局について
・現在の所属歴
・やめる予定の時期
・やめる、やめた時期と理由
・メリットと理由
・デメリットと理由
Q. ご自身の医局所属歴について、あてはまるものを1つだけお選びください。(回答数: 902)
現在所属している医師は全体の約45%
医局に現在所属している医師は全体の45.0%で、うち33.9%が「今後も継続して所属予定」と回答しています。
30代以下ではその割合が44.7%で、現在、医局に在籍している若手医師の約半数が「医局での研鑽が医師のキャリア形成・成長に役立っている」と前向きにとらえられていることがわかります。
一方、50代以降では63.6%が「以前は所属していたが、現在は所属していない」と回答しており、経験豊富となるキャリアの中盤以降で、ライフステージの変化や人生の節目で「医局を離れる」という選択をされる医師が半数以上いらっしゃる結果となりました。
Q. 「医局をやめる予定」とお答えいただきましたが、いつごろやめる予定ですか。(回答数: 100)
2~3年以内を見据える方が最多
医局を「やめる予定」と回答された方のうち、最も多かったのは「2~3年以内」(37.0%)でした。30代以下の若手層では「半年以内」が7.9%とやや高めであり、キャリアの選択肢を早い段階から検討している医師が多くなっている印象です。
40代では「まだ考えていない」が44.0%と最も多く、世代的にも周辺環境、プライベートなど、今後の状況を見ながら慎重に判断を進める方が多いようです。
Q. ご自身が医局をやめたのは、医師何年目の頃でしたか。(回答数: 350)
一定の経験を積んだ、医師6〜10年目が中心
医局を離れた時期として最も多かったのは「医師6〜10年目」で、全体の37.4%を占めました。特に30代以下では62.5%がこの時期にあたっており、一定の経験を積んだタイミングで新たな道を模索する傾向が見られます。
50代以降では「医師21年目以降」が24.1%となっており、長年医局に在籍した上で医局を離れる選択をされた方が一定数いらっしゃいました。
Q. 医局をやめる・やめた理由として、ご自身にあてはまるものをすべてお選びください。(回答数:1,219・複数回答)
働き方に対する前向きな意思決定
医局を離れた理由として多かったのは、「給与と働き方のバランス」(191件)、「プライベートや家庭との両立難」(187件)、「勤務地、勤務内容の自由度」(168件)などでした。30代以下では「キャリアの方向性の違い」(53件)との声もあり、自身の進路を主体的に考える姿勢が反映されています。これらはいずれも、働き方や価値観の多様化に伴う前向きな意思決定と捉えることができます。
Q. 医局に所属するメリットについて、ご自身のお考えにあてはまるものをすべてお選びください。(回答数: 902・複数回答)
多様な経験・人脈・学術支援が高評価
医局の魅力として最も多く挙げられたのは「医師同士のネットワークが広がる」(409件)でした。続いて「教育・研究のサポート」(363件)や、「症例・設備が整った環境での臨床経験」(354件)、「学会発表や論文執筆の機会」(322件)など、成長機会を評価する声が多く寄せられました。
特に30代以下では各項目の選択数が多く、若手の先生方にとってやはり、医局が医師として成長するうえで貴重な場であることがうかがえます。
<自由回答>
・いろいろな臨床研究に参加でき、その結果発表に国際学会にも出席できた。(他科系・60代)
・医局に所属しているおかげで学会での役職などが回ってくると思う。(他科系・40代)
・他では経験できない症例を経験できたり、医局に在籍していないと出会えなかった高名な先生からレクチャーや診断困難症例についてアドバイスをもらえたりしたこと。(内科系・40代)
・地方なので医局人事でないと大きな病院での勤務は難しく、その分在籍し大病院で勤務することで十分なスキルが得られた。(内科系・40代)
・自分のキャリアパスを考慮して次の病院などを、斡旋してもらえる点。(内科系・40代)
Q. 医局に所属するデメリットについて、ご自身のお考えにあてはまるものをすべてお選びください。(回答数:1,234・複数回答)
より良い環境づくりに向けた声と今後の期待
デメリットとして挙げられたのは、「給与とのバランス」(201件)、「勤務に自由がききにくい」(196件)、「業務負担の多さ」(181件)などでした。30代以下では「派遣先が希望と異なる」(107件)という声も多く、必ずしも希望に沿った赴任先での勤務が叶わないなど、柔軟性の低さが背景にあると考えられます。
ただし、こうした点は医局の制度や運営方法の見直しによって改善が進む可能性もあり、今後の変化に期待が寄せられます。
<自由回答>
・人数が多すぎるし、各個人が診療と研究と教育と管理のどれを重視しているかが異なるため、人間関係が複雑になりやすい。(内科系・30代)
・いつ、どこへ回されそうになっても絶対服従。しかもそれが、3月末日の2週前に発表だから大変。(内科系・60代)
・その病院でしか通用しないルールの遵守を医局内で強いられた。また、疑問に思うこともありながら、後輩にも強いなければならなかった。(他科系・60代)
・専門化しすぎて総合的な診察力が付かなかった。(内科系・60代)
・以前所属していた医局では実務を担う若手が少なく、何日も病院に泊まり込むことが普通にあった。(他科系・40代)
以上のアンケート結果から、大学医局については、その役割である臨床・教育・研究の3つの柱はもちろん、医師間のネットワークの広さ、複数の関連病院を経験することでの医師としてのスキルアップなど、様々な面で価値があると感じている医師が多数いらっしゃることが明らかになりました。
一方で、昨今では医師に限らず勤務の柔軟性やワークライフバランスを重視する声が若手世代からも多くなり、医局へ期待することや要望も変化が見受けられます。今後は、各大学や各医局でこうした多様なニーズに応えるための柔軟な体制づくりや、仕組みづくりなどがより一層求められてくると思われます。
【アンケート概要】
対象:「民間医局」会員の医師
回答方法:Webによる回答
調査期間・回答者数:
第1回 2025年6月19日 実施・ 902人
第2回 2025年6月26日 実施・ 892人