アンケート記事
1年に1回の受診が推奨されている健康診断。医師の皆さんはどれくらいの頻度で受診し、健診結果を受け取ることでどんなメリットを感じているのでしょう。今回、民間医局コネクトでは、「健康診断」をテーマにアンケートを実施し、医師1,660名、初期研修医183名、医学生505名より回答を得られました。健康診断には「時間がかかる」というデメリットを感じている一方で、1年に1回以上受診している医師が9割にのぼり、疾病の早期発見や、健康状態の把握などさまざまなメリットを感じているようです。主な調査結果は下記のとおりです。
[ 目 次 ]
❶ 医師の9割が1年に1回以上健康診断を受診。オプション検査は年代が上がるごとに受診率も増加
❷ 7割以上の医師が診断結果を詳細に確認し、診断結果の指示に基づき行動
❸ 健康診断のメリットは、疾病の早期発見や将来リスク回避、健康状態の把握、健康意識の向上。デメリットは時間が取られること
❹ 今後はメンタルヘルスに関する検査も取り入れるべき。また、AI・デジタルヘルス技術を活用への期待値は高い
❺ 8割以上の医師が一般の方の健康診断受診を推奨。オプション検査で特に推奨したいのは「胃・十二指腸検査」
医師の9割が1年に1回以上健康診断を受診。オプション検査は年代が上がるごとに受診率も増加
健康診断の受診状況を聞いたところ、医師の9割が1年に1回以上受診していると回答しました。2.5割は半年に1回以上受けており、健康意識の高さがうかがえます。
受診理由として最多だったのは「勤務先・学校で必須とされている」で1,409票。回答した医師・初期研修医・医学生の6割以上を占める数でした。他の回答として、「自分の健康状態を把握するため」645票、「定期的に受けているから」417票、「疾病の早期発見のため」411票が続き、義務や習慣として受診する以外にも、健康状態の把握や疾病の早期発見、病気予防など、健康のために受診していることがわかります。
一方で、年1回健康診断を受けていない方にはどんな理由があるのでしょう。上位3つは「忙しくて時間が取れない」48票、「健診のスケジュールが合わない」36票、「費用がかかる」28票となり、健診の優先順位が低いことが推察されます。
次に医師が健康診断を受けた場所を聞いたところ、「勤務先の医療機関」が68.9%で最多でした。続いて「勤務先とは関係ない医療機関」15.8%、「勤務先が提携している医療機関」14.0%となっており、8割以上が勤務先または勤務先が提携している医療機関で受診していることがわかりました。
また、医師にオプション検査の受診状況を聞いた設問では、「オプション検査を受けたことはない」は、20-30代では75.8%、40-50代では51.9%、60代以上では37.6%となりました。「毎回必ず受けている」「数回に1回/数年に1回など定期的に受けている」「気になる自覚症状があった時に受けている」「思いついた時に受けている」は、すべての項目で年代が上がるごとに回答率も増加し、加齢と共にオプション検査を受ける医師が増える傾向が読み取れます。
では、具体的にどのようなオプション検査を受けたことがあるのでしょう。年代別で見ると、すべての年代で1位は「胃・十二指腸検査」。2位以降は年代によって異なり、20-30代では「婦人科検査」が2位、「乳房超音波」が4位にランクインしています。20-30代は回答者の女性比率が他の年代よりも高いことも影響しているでしょう。「腫瘍マーカー」は20-30代ではランクインせず、40-50代で5位、60代以上で2位と年代が上がるにつれて上位にランクされています。
Q ご自身は健康診断を、どのくらいの頻度で受けていますか(回答数1,660、医師の回答のみを抽出)
Q ご自身が健康診断を受ける理由について、あてはまるものをいくつでもお選びください(複数回答可、回答数2,301)
Q年1回健康診断を受けていない理由を教えてください(複数回答可、n=200)
Q ご自身が「直近で受けた健康診断」について、どちらで受診しましたか(n=1,646、医師の回答のみを抽出)
Q ご自身が健康診断を受ける際、基本の検査項目以外のオプション検査を受けていますか(医師の回答のみを抽出)
Q これまでにご自身が受けたことがあるオプション検査を教えてください(複数回答可、医師の回答のみを抽出し、年代ごとに上位5位までを記載)
7割以上の医師が診断結果を詳細に確認し、診断結果の指示に基づき行動
健診を受けたあとの診断結果について、専門知識を持つ医師の皆さんはどう確認しているのでしょう。結果をどの程度見るかを聞いた質問に対して、45.5%が「一つずつの数値を自分の見識に基づいて吟味する」と回答。「検査ごとの数値や基準範囲を詳細に確認する」が26.5%で続き、7割以上の医師が、検査結果をしっかり確認し、吟味していることが読み取れます。
診断結果を受けた際のアドバイスで重要だと感じることについては、「定期的な検診の実施」が25.2%、「生活習慣の改善」が22.5%、「異常を感じたら、すぐに受診する」が10.9%、「精密検査の実施」が11.1%という結果になりました。定期的に健康状態を把握するとともに、生活習慣の見直しや受診を躊躇わないことの重要性を認識しているようです。
では、診断結果で「要経過観察」の項目があった場合、医師の皆さんはどう対処しているのでしょう。トップは「治療・検査はせず経過を見て終了した」で332票。次いで、「時を見て検査してもらった」207票、「すぐに検査してもらった」116票が続きました。
「要精密検査」の項目については、「すぐに検査してもらった」が178票でトップに。「時を見て検査してもらった」が115票、「治療・検査はせず経過を見て終了した」が70票でした。
「要治療」の項目については、「すぐに治療開始してもらった」が64票でトップでした。続いて「時を見て治療開始してもらった」が51票、「すぐに検査してもらった」が33票となりました。医師の多くが、診断結果の指示内容に基づいた行動をとっていることがわかりました。
Q 健康診断の結果が出た際、ご自身はその結果をどの程度ご覧になりますか。最もあてはまるものをお選びください(回答数1,646、医師の回答のみを抽出)
Qご自身が健康診断を受けた際のアドバイスで、最も重要だと感じることを1つだけ教えてください(回答数1,646、医師の回答のみを抽出 )
Q「要経過観察」「要精密検査」「要治療」と判定された際、どのような流れとなりましたか
健康診断のメリットは、疾病の早期発見や将来リスク回避、健康状態の把握、健康意識の向上。デメリットは時間が取られること
医師や初期研修医、医学生の皆さんは、健康診断のメリット・デメリットをどう捉えているのでしょうか。メリットのトップ5は、「疾病の早期発見ができる」971票、「健康状態の経年変化を把握できる」794票、「疾病の早期治療ができる」721票、「生活習慣病の兆候を把握できる」710票、「健康意識が高まる」659票となりました。そのほか、「自分が安心できる」「様々な疾病のリスクが把握できる」「がんの早期発見ができる」「予防処置が促進される」などにも多くの票が投じられ、様々なメリットがあると考えていることがわかりました。
一方デメリットは、「時間が取られる」が894票でダントツでした。次いで「費用がかかる」が、トップとやや差が開き、544票となっています。そのほか、「不必要な検査・治療が増える可能性がある」「過剰診断のリスクがある」「偽陽性による不安が生じる」にも300票前後が集まりました。
Q健康診断を行うことで、ご自身がお考えになるメリットを教えてください(複数回答可、回答数2,348)
Q 健康診断を行うことで、ご自身がお考えになるデメリットを教えてください(複数回答可、回答数2,348)
今後はメンタルヘルスに関する検査も取り入れるべき。また、AI・デジタルヘルス技術を活用への期待値は高い
健康診断の今後のトレンドや新たに取り入れるべき検査を聞いたところ、「メンタルヘルス評価」が556票でトップとなりました。2位以下は、「遺伝子検査」471票、「睡眠解析検査」461票、「バイオマーカー検査」376票、「腸内マイクロバイオーム検査」291票、「リキッドバイオプシー」183票となり、さまざまな検査を取り入れるべきだと考えていることがうかがえます。
また、AIやデジタルヘルス技術の健康診断への導入については、診断精度の向上や診断結果の迅速化、個人に特化した医療の実現、コスト削減、遠隔での健康診断実施など5つの項目で「期待できる」が過半数になりました。導入の容易さについては、「どちらともいえない」が過半数となり、最先端技術への期待は大きい一方、導入へのハードルはまだまだ高いと考えているようです。
Q ご自身がお考えになる、健康診断の今後の医療トレンドや、新たな検査項目として取り入れるべき分野を教えてください(複数回答可、n=2,348)
Q AIやデジタルヘルス技術を活用した健康診断について、ご自身はどのようにお感じになりますか。次に挙げるそれぞれの項目で、ご自身のお気持ちに近いものをお選びください(単一回答マトリクス、n=2,348)
8割以上の医師が一般の方の健康診断受診を推奨。オプション検査で特に推奨したいのは「胃・十二指腸検査」
医師として、一般の方の健康診断受診についてどの程度推奨するか聞いたところ、「推奨する」48.9%、「とても推奨する」34.4%となり、8割強が推奨すると答えています。
また、一般の方のオプション検査受診については、約4割(推奨する31.1%、とても推奨する8.0%)が推奨すると回答。最多は「どちらともいえない」の47.8%で、「あまり推奨しない」も10.8%で1割を占めるなど、オプション検査については意見がわかれる結果になりました。
一般の方にオプション検査を推奨すると答えた医師の皆さんは、具体的に何を勧めたいと考えているのでしょう。トップは「胃・十二指腸検査」が262票でトップに。次いで、「大腸検査」241票、「上腹部検査(肝・胆・膵・腎・脾)」202票となりました。「胃・十二指腸検査」は医師自身が受けたことのある検査項目でも1位であり、一般の方にも強く勧めたいと考えていることがわかります。