アンケート記事

2024.10.03

医療DXへの関心や成果への期待は大きいものの、取り組みが進むのはまだこれから 〜医療DXアンケート〜

さまざまな業界で推進されているDX。医療業界も例外ではありませんが、実際にはどの程度進んでいるのでしょうか。民間医局コネクトでは、医療DXをテーマに、医師・初期研修医・医学生へアンケートを実施し、医師1,600名、初期研修医224名、医学生285名の合計2,109名から回答を得ることができました。
アンケートの結果からは、DX推進はこれからだと感じながらも、医療DXに対して高い関心や期待を抱いている医療関係者たちの心情が見えてきました。
※グラフや文章内の「%」表記は、小数点第二位以下の端数処理のため数値がずれることがあります。

 

[ 目 次 ]
・医療DXについて理解しているのは32.2%、理解していないは50.1%
・医療DXの進捗状況(進んでいるか、進んでいないか)は、勤務先は「どちらともいえない」が、医療業界全体は「あまり進んでいない」が最多
・勤務先で医療DXが進んでいると答えた理由は、「導入したツール・システムを現場が使えている」がトップ
・勤務先で医療DXが進んでいないと答えた理由は、「コストがかかる」がトップ
・勤務先で導入しているツール・システムで最も多かったのは「電子カルテシステム」
・医師・初期研修医が今後利用したいツール・システムは、「AI画像診断支援ソフトウェア」
・勤務先で導入しているツール・システムがあげている成果は、「時間短縮」「情報共有の円滑化」「便利」「医療品質向上」「患者満足度向上」など
・医療DX推進について、勤務先に対しては44.2%、医療業界全体に対しては49.5%の人が、「もっと推進すべき」と考えている
・勤務先のDX推進に必要なことは、「医師やスタッフのリテラシー向上」、「セキュリティ対策の強化」がトップ2
・ICTやAIを活用した医療DXを推進により実現に期待することは、「医師の働き方改革への順応(効率的な業務管理・時間の削減など)」がトップ

医療DXが進んでいない要因はコストと、受け入れ体制の不足

医療DXについて、理解している人は32.2%、理解していない人は50.1%で、理解していないほうが多数派となりました。また、自身の勤務先や医療業界全体での医療DXに取り組む姿勢や、進捗状況について聞くと、いずれも業界全体より、自身の勤務先の方が取り組みに積極的で、導入が進んでいると回答した人が多くいました。医療DXが進んでいると回答した理由としては、「ツールやシステムを使えている」ことを挙げる人が最も多く、逆に進んでいないと回答した理由としては、コストの高さや、医療DX推進に対応する体制の不備などが、多くの票を集めました。

Q:「医療DX」と聞いて、ご自身はどの程度理解していますか(回答数2,109)

最初に、医療DXについて、どの程度理解をしているのか質問しました。すると、「なんとなく理解している」が27.3%で最多、次が「あまり理解していない」25.4%で、3番目が「まったく理解していない」24.8%。「よく理解している」は最下位の4.9%という結果に。

理解している、理解していない、それぞれの数値を合計して比較すると、理解しているのは32.2%(なんとなく27.3%、よく4.9%)、理解していないは50.1%(あまり25.3%、まったく24.8%)で、理解していないほうが多数派となりました。

Q:「(医師・初期研修医のみ)①勤務先※」「②日本の医療業界全体」について、医療DX推進に取り組む姿勢を、それぞれ教えてください。(単一回答マトリクス)
※「①勤務先」は現在の勤め先で、ご自身が経営する医療機関を含みます。以降の質問もこちらに準じます

次に、医療DX推進に取り組む姿勢について聞きました。①勤務先については、医師・初期研修医に、②日本の医療業界全体については、医学生も含めた全員に質問しています。

勤務先・医療業界全体ともに、医療DXに取り組む姿勢に対しては、「どちらともいえない」が最多で、それぞれ3割強を占めました。次いで多かったのは、勤務先では「やや積極的」の18.6%、医療業界全体では「やや消極的」21.8%となりました。勤務先、医療業界全体、それぞれで「どちらともいえない」「わからない」の合計値が過半数を超えていますが、勤務先の方が、医療DXにやや積極的であるという傾向が見られました。

Q:「(医師・初期研修医のみ)①勤務先」「②日本の医療業界全体」について、医療DXがどの程度進んでいるか、それぞれ教えてください。(単一回答マトリクス)

続いて、医療DXの進捗状況について聞きました。①勤務先については、医師・初期研修医に、②日本の医療業界全体については、医学生も含めた全員に質問しています。

勤務先は「どちらともいえない」29.7%が、医療業界全体は「あまり進んでいない」32.6%が最多となりました。「進んでいる」に着目すると、勤務先は「かなり進んでいる」2.9%、「やや進んでいる」14.7%で、2割弱が進んでいると回答。医療業界全体では「かなり進んでいる」1.7%、「やや進んでいる」8.7%で1割にとどまりました。全体としては「どちらともいえない」「あまり進んでいない」が多くの票を集めましたが、進んでいると回答した人の中では、医療業界全体よりも自身の勤務先の方が進んでいると考えている人が多いことがわかりました。

Q:「①勤務先」で、医療DXが「かなり進んでいる」「やや進んでいる」とお答えになった理由について、あてはまるものをいくつでもお選びください(複数回答可、回答数320)

医師・初期研修医のうち、勤務先で医療DXが「かなり進んでいる」「やや進んでいる」と答えた320人に、その理由を選んでいただきました。

最も多くの票を集めたのは、「導入したツール・システムを現場が使えている」の89票。次いで「余計な時間を短縮できている」74票、「医療データが活用できている」72票、「労働環境が改善」69票などが続きます。第一にツールやシステムを使えていること、その上でさまざまな成果が得られていることから、医療DXが進んでいると回答したことがわかりました。

Q:「①勤務先」で、医療DXが「あまり進んでいない」「まったく進んでいない」とお答えになった理由について、あてはまるものをいくつでもお選びください(複数回答可、回答数1,248)

また、勤務先で医療DXが「あまり進んでいない」「まったく進んでいない」と答えた医師・初期研修医1,248人に、その理由を選んでいただきました。

進んでいない理由のトップは「コストがかかる」503票、「医療DX推進部署・プロジェクトチームが存在しない」385票、「DXに伴うシステム・ツールを扱える人材が不足」360票、「現場がデジタル技術に理解不足」344票などが続きました。医療DXが進んでいないと回答した人の中では、コストの高さを理由に挙げる人が多く、それに次いで医療DX推進に対応する体制の不備(人材不足や理解不足)も大きな理由となっていることがわかりました。

最も導入されているのは「電子カルテシステム」、今後使ってみたいのは「AI画像診断支援ソフトウェア」

医師・初期研修医に対し、医療DXのツールやシステムの導入状況について質問したところ、主に「電子カルテシステム」「医療用画像補完システム」「診療予約システム」「電子処方システム」といったものが、実際に導入して役立っているということがわかりました。医学生に今後利用してみたいツールやシステムを聞いたところ、既に導入が進んでいる「電子カルテシステム」が票を集める一方、まだ普及が進んでいない「AI画像診断支援ソフトウェア」も人気となりました。「AI画像診断支援ソフトウェア」は医師・初期研修医へのアンケートでも、利用したいツールとしてトップとなっています。導入済みのツール・システムから得られた成果について聞くと、主に「便利」「時間短縮」「情報共有の円滑化」「医療品質の向上」「患者満足度の向上」といった回答が票を多く獲得しました。

Q:次のツールやシステムについて、「①勤務先で導入しているもの」「②現在ご自身が利用しているもの」「③(ご自身の利用に関わらず)勤務先で役立っているもの」「④今後ご自身が利用したいもの」にわけて、それぞれお知らせください(複数回答マトリクス、回答数1,824)

医療DXのツールやシステムについて、複数の項目で「①勤務先で導入しているもの」「②現在ご自身が利用しているもの」「③(ご自身の利用に関わらず)勤務先で役立っているもの」「④今後ご自身が利用したいもの」、それぞれにあてはあるものを選んでいただきました。質問は医師・初期研修医に対して行っています。

まず、「導入している」で最も多かったのは「電子カルテシステム」の1,047票。「診療予約システム」655票、「医療用画像保管システム」626票、「電子処方システム」622票、「順番受付システム」608票が続きます。
「現在ご自身が利用している」で最も多かったのは「特になし/わからない」767票。次いで「電子カルテシステム」700票、「電子処方システム」400票、「診療予約システム」397票、「医療用画像保管システム」381票の順番となりました。
「勤務先で役立っている」では、「特になし/わからない」が701票でトップに。続いて「電子カルテシステム」646票、「医療用画像保管システム」392票、「診療予約システム」387票、「電子処方システム」371票となりました。
「今後ご自身が利用したい」で最も多かったのは「AI画像診断支援ソフトウェア」942票。「医療データ分析ツール」805票、「オンライン診療システム」781票、「医療ロボティクス」724票、「医療教育支援システム」721票が続きます。

以上の結果を踏まえて、勤務先に導入されていて、かつ自分が利用し、役立っているものでは、「電子カルテシステム」「医療用画像補完システム」「診療予約システム」「電子処方システム」といったものであることがわかりました。また、今後利用したいものとしては、医療の質を向上させたり、患者の利便性を向上させたりするツールやシステムが希望されていることがわかりました。

Q:次のツールやシステムについて、今後ご自身が利用したいものをそれぞれお知らせください(複数回答可、回答数285)

医学生には、「今後利用したいと考えるツール・システム」を選んでいただきました。その結果、「電子カルテシステム」191票、「AI画像診断支援ソフトウェア」151票、「診療予約システム」143票がトップ3となりました。

前の医師・初期研修医に対する質問からは、「電子カルテシステム」や「診療予約システム」が、すでに多くの医療機関で導入されていることがわかっています。医学生もその利便性を知識として理解していて、使ってみたいと思う方が多いのかもしれません。また、「AI画像診断支援ソフトウェア」は、医師・初期研修医からも利用してみたいという回答が多いツールでした。回答結果からは、まだ普及は先のことと考えられているようですが、医師・初期研修医に加えて医学生からの期待が高いことからも、注目度の高さがうかがえます。

Q:勤務先で導入しているツール・システムについて、どのような成果があげられていますか(複数回答マトリクス)

次に、医師・初期研修医のうち、各ツールを勤務先で導入していると答えた人に、どのような成果があげられているか聞いてみました。各ツールで得られた成果のトップ3は下記になります。

総じて、便利であり、時間が短縮され、情報共有もスムーズであり、医療品質の向上や患者満足度の向上につながっているという結果となりました。

Q:ご自身が利用したいツール・システムについて、どのような成果があると思いますか(複数回答マトリクス)

また医学生にも、利用したいツール・システムで得られるであろうと思う成果について聞いてみたところ、医師・初期研修医の回答と概ね同じ傾向となりました。

回答者の8割弱が、医療業界全体でDXを推進すべきと考えている

医療業界のDX推進について、勤務先に対しては44.2%、医療業界全体に対しては49.5%の人が「もっと推進すべきだと思う」と考えていることがわかりました。「少しだけ推進すべきだと思う」の26.3%を合わせると、8割弱が推進すべきであると答えました。また、医療DX推進に対して何が必要か医師・初期研修医に質問したところ、「医師やスタッフのリテラシー向上」634票、「セキュリティ対策の強化」590票が多くの票を集めました。医学生に対する同様の質問でも回答結果は同じ傾向を示し、DX推進にあたって医療関係者は、まず医療従事者自身のリテラシーを高めること、患者のプライバシー情報を守ることに最も重きを置いていることがわかりました。

Q:ICT(情報通信技術)について、ご自身にあてはまるものをお選びください。(複数回答可、回答数2,109)
※アイデアソン:参加者が集まり、アイデアを出し合い、議論し合うイベント
※ハッカソン:ソフトウェア開発者やエンジニア等の参加者が集まり、プロトタイプを開発するイベント

ICT(情報通信技術)について、いくつかの項目で自分に当てはまるものを選んでいただきました。

最も多くの票を集めたのは「特に何もしていない」で1,098票となり、他の項目の票数を大きく引き離しました。次いで多かったのは「インターネットで情報収集している」584票です。「特に何もしていない」が回答者の半数という結果となりましたが、「セミナーや勉強会へ参加している」218票、「書籍等で専門知識を勉強している」196票など、ICTで知識を得ようと活動している人もそれぞれ1割程度おり、インターネットで情報収集をしている人が4分の1いるという結果も踏まえ、ICTを積極的に活用しようと考えている方が一定数いることがわかりました。

Q:「(医師・初期研修医のみ)①勤務先」「②日本の医療業界全体」について、医療DXを今後どの程度推進すべきだと思いますか(単一回答マトリクス)

①勤務先、②医療業界全体で、医療DXをどの程度推進するべきか聞いてみました。①は医師・初期研修医に、②は医学生も含めた全員に質問しています。

勤務先に対しては、「もっと推進すべきだと思う」44.2%、「少しだけ推進すべきだと思う」28.2%で、72.4%が推進すべきと回答。「現状で充分だと思う」は10.6%、「わからない」は16.0%となりました。医療業界全体に対しては、「もっと推進すべきだと思う」49.5%、「少しだけ推進すべきだと思う」26.3%で、75.8%が推進すべきと回答。「現状で充分だと思う」は7.7%、「わからない」は15.8%でした。勤務先も医療業界全体も、7割以上が推進すべきと考えていて、医療業界全体に対しては、よりそのように思っていることがわかりました。

Q:勤務先で、新たなツールやシステムなどを導入した際、勤務先からどのような対応や提供がありますか(複数回答可、回答数1,824)

勤務先で新ツール・システムを導入した際、勤務先からどのような対応や提供があるか、医師・初期研修医に聞いてみました。

勤務先で新ツール・システム導入をした際の対応等は、得票数の高い順に「説明会実施」823票、「マニュアルの配布」754票、「講習実施」514票の順となりました。「教育プログラム提供」221票、「ワークショップ・勉強会実施」199票、「専門家のサポート体制整備」183票、「相談窓口の設置」173票も、1割程度が回答。「特になし(使いながら覚える)」は210票で1割強が回答しました。マニュアル配布や説明会、講習の実施が行われることが多く、その他に手厚いサポートが行われていることもわかりました。

Q:勤務先の医療DX推進にあたり、どのようなことが必要だと思いますか。あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答可、回答数1,824)
※ユーザーインターフェース(UI):ユーザーがデジタルデバイスを使用する際の手段や操作方法

医師・初期研修医に、勤務先の医療DX推進にあたり、どのようなことが必要となるか、あてはまるものを選んでいただきました。

勤務先がDXを推進するために必要なことは、「医師やスタッフのリテラシー向上」634票、「セキュリティ対策の強化」590票がトップ2で、その他の項目よりも100票以上多く票を獲得しました。しかし、「専門チームの設置」433票、「教育プログラムの拡充」390票、「現在よりさらにDX推進の意識を高める」387票、「医療DXに関するスペシャリストの登用」371票など、さまざまな項目にも投票されました。現場のリテラシーを向上させるとともに、セキュリティを強化すること、またその他にもさまざまなことが医療DX推進には必要であると考えていることがうかがえる結果となりました。

Q:医療機関の医療DX推進にあたり、どのようなことが必要だと思いますか。あてはまるものをすべてお選びください。(複数回答可、回答数285)
※ユーザーインターフェース(UI):ユーザーがデジタルデバイスを使用する際の手段や操作方法

医学生にも、医療機関が医療DXを推進するためにどのようなことが必要となるか、聞いたところ、「医師やスタッフのリテラシー向上」144票、「セキュリティ対策の強化」120票がトップ2となりました。

医師・初期研修医と同様に、現場のリテラシーを向上させるとともに、セキュリティを強化すること、またその他にもさまざまなことが医療DX推進には必要であると考えていることがうかがえます。

約4割の人が医療DXに「医師の働き方改革への順応」を期待

ICTやAIを活用した医療DXを推進することで、医療関係者は「医師の働き方改革への順応」、「医療データの統合と共有」、「医療品質の向上」を特に強く期待していることがわかりました。

Q:ICTやAIを活用した医療DXを推進することで、ご自身が実現に期待することを教えてください(複数回答可、回答数2,109)

ICTやAIを活用した医療DXを推進することで何を期待したいか、最後に質問をしてみました。

トップ3は、「医師の働き方改革への順応(効率的な業務管理・時間の削減など)」890票、「医療データの統合と共有(医療機関間での情報共有を促進など)」832票、「医療品質の向上(エビデンスに基づいた医療、患者の安全を確保など)」790票となりました。「その他」「特になし」を除いたすべての項目で500票以上を獲得していて、業務効率化、情報共有の効率化・簡便化、医療品質の向上、患者満足の向上など、医療DXによるさまざまな成果への期待が大きいことがわかりました。

今回のアンケートから見えてきたのは、医療関係者の医療DXに対する関心の高さ。自身の勤務先や医療業界全体で見ると、まだまだDX推進はこれからだと感じているようですが、業務の効率化や医療品質の向上などを目指し、今後積極的に推進していくべきと多くの人が考えており、そのための課題もしっかりと把握している印象が見受けられました。

【アンケート概要】
調査期間:2024年4月18日~20日
対象:「民間医局」会員の医師・初期研修医・医学生
回答者数:2,109人(男性1,460人、女性544人、答えたくない105人)

医療DXへの関心や成果への期待は大きいものの、取り組みが進むのはまだこれから 〜医療DXアンケート〜

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