アンケート記事
世間一般にはまだ認知度が低い「人生会議」、医師や医学生はどのように考えているのでしょうか。民間医局コネクトは会員医師・医学生を対象にオンラインでアンケートを実施。 2,633人から回答が寄せられました。
人生会議(アドバンス・ケア・プランニング<ACP>)は、人生の最終段階(末期がん、もしくは重い病気、脳血管疾患の後遺症、老衰等により、回復の見込みがなく、死期が近い場合)における医療・ケアについて、意思に沿った医療・ケアを受けるために、ご家族等や医療・介護従事者とあらかじめ話し合い、また繰り返し話し合うことです。
Q:人生会議(アドバンス・ケア・プランニング<ACP>)を行うことは、どの程度必要だと思いますか。(回答数: 2,633)
Q:「尊厳死」「安楽死」について、ご自身のお気持ちに近いものをそれぞれお選びください。(回答数: 2,633)
※端数処理のため合計値が100.0%になりません
Q:人生の最終段階における医療について、ご自身がお感じになることをどのようなことでも大丈夫ですので、教えてください。(自由記述:全文・原文のまま記載)
・在宅で看取りの場面に遭遇することは日常的ですが、ご家族の理解が伴っていないことが多いと感じます。事前にどれだけ説明したとしても、肝心な決心に関しては我々が計り知ることはできず、結局はご家族の問題であり限界を感じる点でもあります。「覚悟している」とことばで表現することは簡単ですが、いざ亡くなった家族を前にすると「こんなはずではなかった」などのお言葉をいただくことがあり、いかにACPが重要なのかと日々痛感しております。(内科 40代)
・終末期に救急車を呼んでしまい、本人も家族も望んでいない延命処置がされてしまう現場に、救急医として度々居合わせたことがあるため、事前によく話し合っておくこと(救急車を呼ばない判断も含め)は大切だと思います。 安楽死は、本人が自分の意思のみで選ぶのであれば認められても良いのかなと思う一方、周囲が少しでもその判断に関与するのは、自殺幇助と紙一重となり、安易に制度化すべきではないようにも思います。(救命救急科 30代)
・患者本人の痛みや苦痛は医療者側が定量的に測ることはできない。聞けても「0~10でどれくらいの辛さ/痛さですか」くらいである。尊厳死や安楽死に関しては選択肢として存在することが重要だと思う。もちろん、辛いから安楽死、と言うことではなく、患者に「今が辛いのか」それとも「病状が悪化していく/治らないことが苦痛なのか」「自分が死んだ後が怖いのか」などを聞いて、尊厳死等を望む理由を聞くべきだろう。日本の制度上、尊厳死が認められていないために上記のような気持ちをケアするような専門職がいないことが、この尊厳死問題をややこしくしているのだと思う。緩和ケアなどの、緩やかな死に向かう段階に最も苦痛を感じる人もいるだろう。嘱託殺人の件についても、子の死を親が嘆き、医師を責めるのは、結局親と子の対話不足のせいであり果たして医師が完全に悪なのかと言われると疑問である。(医学生 20代)
・苦痛から解放されるという意味で死が救いになる可能性がある一方で、現在の日本では死ぬ権利が同調圧力による死ぬ義務になりうる可能性も否定できず慎重な議論が必要だと考えます。(眼科 30代)
・以前勤務していた急性期病院で、中国で医師をされていたかたがおられました。そのかたは、日本では高齢者や人生の最終段階と言えるような患者さんにも検査や積極的治療などをたくさんしていると大変驚いておられました。たしかに、その患者さんから求められて検査や治療をする、というよりかは患者家族の要望に沿ってしていることも多く、患者さんを蔑ろにしていた自分が恥ずかしくなりました。ですが、患者家族がそれを求めるのはACPの実施が不十分なことも要因としてはあるのかなと感じています。医療を受ける患者さんの幸せを考えると、もっとACPをポジティブに世間に浸透させる必要があるのではないかと感じています。(内科 30代)
・医療は発達し過ぎたため、人類は生を克服するあまり死を身近に感じることができず、死を極端に恐れるようになってしまった。そのおかげか死に際を決めるのを逸し、自分の最期を決めることなく、自分の意思のないところで終焉を迎えることとなった。自分の死に方を決める権利とともに、質の高い医療及び徳の高い坊さんが必要だと感じています。(小児科 30代)
・特に終末期がん患者など実際に積極的安楽死を望む患者がいることを目の当たりにしており、必要性を実感している。認められることになったとしても、悪用されない仕組みづくりを慎重に行うべき。(泌尿器科 30代)
・現在は終末期において過剰な医療が行われていることは明らかである。ACPにより意思を明確にしておくことや助かる見込みのない患者への過剰な医療は保険適応外とするなどの対応が必要であると考える。死を拒否する死生観を見直すきっかけ作りとなるような啓発活動も有効なのではないかと思う。(麻酔科 30代)
・自分を含め世の中の大多数の人が漠然と想像している「死の形」よりも、実際の死の状況はもっと具体的で想像の範疇を超えることも多いと思います。また、その状況に置かれた時にすぐに自分の気持ちを決められないことも多いと思います。 ですので、一度あらかじめ簡単に話し合いをしておき、その後自分が想像していなかった状況になった時でも、いつでも意見を変更できるようにすることが大事なのかなと思います。 しかし、私の家族もそうなのですが、「自分が死ぬときの話なんてしたくない」「縁起でもない」と言って話し合いを拒否する方もおり、どのように話を持っていくかが難しいなと感じています。(医学生 20代)
・目の前の患者の希望を沿うことは重要だと思うが、その決定が社会福祉のためになるかということも考慮すべき。 また、安楽死における患者本人の意思決定が本人の心からの希望なのか、周りの圧力や周りのためのことを考えたことなのかしっかり判別すべき。(医学生 20代)
【アンケート概要】
調査期間:2024年3月21日 ~ 2024年3月23日
対象:「民間医局」会員の医師・医学生
回答者数:2,633