アンケート記事
人の健康や命にかかわり、重圧の大きい医師の仕事。患者様やその家族、看護師や医療事務などのコメディカル、先輩や後輩医師など多くの人とのコミュニケーションも欠かせません。仕事を円滑に進める上で、大事になる良好な人間関係。医師の皆さんは職場の人間関係にどんな悩みを持っているのでしょうか。民間医局コネクトは会員医師を対象に「職場の人間関係」についてオンラインでアンケートを実施し、1139人から回答を得ました。
6割の医師が、働くうえで「人間関係」を重視
そもそも、医師の皆さんは、働くうえで「人間関係」をどれほど重視しているのでしょうか。
Q:働くうえで重視する点を教えてください。(複数回答可、回答数1139)
働くうえでどんなことを重視するかを聞いたアンケートでは、「給与」「勤務地」「勤務時間」などの条件面が上位を占めています。4番目に入っているのが「人間関係」でした。複数選択ではありますが、半数以上の58.6%の人が人間関係を重視すると答えています。
Q:現在の職場における満足度を項目ごとに教えてください。(回答数1139)
続いて、前の質問で聞いた各項目の満足度を聞きました。働くうえで重視すると答えた人が多かった「給与」や「勤務時間・日数」「勤務地」「人間関係」などの項目について、半数以上の人が「大変満足」「満足」と答えています。
人間関係だけを見ると、62.6%は「大変満足」または「満足」と答える一方で、「不満」または「大変不満」と答える人も13.8%いることがわかりました。
ほかの特徴として、「経営方針」や「経営状態」については、「どちらともいえない」とする人が多いことが読み取れます。
では、人間関係の満足度は、職場の総合満足度にどれくらい影響を与えているのでしょうか。
Q:現在の職場における以下項目について、満足度をそれぞれ教えてください。
人間関係の満足度において「大変満足」とした人は、職場の総合的な満足度においても、92.9%が「大変満足」「満足」と回答しています。一方、人間関係の満足度が「大変不満」だと答えている人は、職場の満足度においても、61.8%が「不満」「大変不満」と回答。
人間関係の満足度が、職場への総合的な満足度を高めるうえで大事な要素の一つであることがうかがえます。
6割の医師が、現在または過去に「人間関係」の悩みを抱えている
職場での悩みの有無を聞いたところ、次のような結果になりました。
Q:現在の職場について、自身の気持ちにあてはまるものをそれぞれ教えてください。(回答数1139)
「現在悩みを抱えている」と答えた人が最も多かったのは、「給与」について(37.5%)でした。「過去に悩みを抱えていたが、現在は解決している」という人も含めると、6割以上の63.5%が給与の面で悩みを抱えた経験があることがわかります。
「勤務時間・日数など勤務形態」についても、6割弱の58.2%が、現在または過去に悩みを抱えていたと回答しています。
「人間関係」について現在悩みを抱えていると答えた人は、24.9%に留まりましたが、過去に悩みを抱えていた人を含めると、60.4%になり、半数以上の人が人間関係で悩んだ経験があることがわかりました。
では、過去に持っていた人間関係の悩みを、医師の皆さんはどう解決させてきたのでしょうか。アンケートでは、「過去、悩みを抱えていたが現在は解決している」と答えた429人に対して、人間関係を解決するために具体的にどんな解決策を講じたのかを聞きました。
もっとも多かったのは、「自分が退職・転職した」で23.1%(99人)でした。続いて、「気にしない・割り切る・受け流す・慣れ」が9.8%(42人)、「自分が異動・転勤した」が9.6%(41人)、「対象者と話す」が9.6%(41人)という結果になりました。
人間関係で悩みが多いのは上司 「困難な業務」に悩む
職場の人間関係といっても、関係を築く対象はさまざまです。アンケートでは、上司や同僚、後輩、部下、看護師など医療スタッフなど、対象となる人ごとにどんな悩みを抱えているのかを聞きました。
すると、すべての人に対して、半数以上の人が「特に悩んでいることはない」と回答。「上司」に対しても「特に悩んでいることはない」と答える人が56%になりました。
ただ、ほかの“対象となる人”と比較すると、上司に対して悩みを抱えている人がもっとも多い結果になりました。
上司に対する悩みの原因で上位になったのは、「困難な業務を任される」(17.9%)、「過度な業務を任される」(16.2%)など、業務負担に関するものでした。次いで、「派閥や上下関係のしがらみ」が12.8%となり、職場内での調整や根回しなどの難しさが浮き彫りになりました。
Q:現在の職場の人間関係について、ご自身との間で悩んでいること教えてください。(複数回答可、回答数1139)
これらの悩みに対して、どんな対応をしたかを聞いたところ、「悩みの対象者と距離を置いた」が31.9%でもっとも多くなりました。続いて、「時間の流れにまかせる」(22.6%)、「特に何もしていない」(21.6%)という回答が多かった一方で、「悩みの対象者と直接話す」という積極的なアプローチも19.8%にのぼりました。
Q:悩みに対して、どういう対応をしましたか。(複数回答可)
人間関係が原因で転職したことがある医師は約2割
では、人間関係が原因で転職をしたことがある人はどれくらいいるのでしょう。
Q: 人間関係が原因で転職をしたことはありますか。
アンケート結果によると、「人間関係が原因で転職したことがある」と回答した人は22.9%、「考えたことはある」と答えた人は29.9%になりました。人間関係で転職した人と、転職はしなかったものの考えたことがある人との合計は52.8%と半数を超えています。この結果から、医師が仕事をする上で、良好な人間関係が築けているかは重要な要素であることがうかがえます。
人間関係が原因で転職を考える際、どういうルートで転職をしたかを聞いたところ、「エージェントへの相談」が55.9%と半数を超えました。「知人・先輩の紹介」も3割弱(28.4%)を占めています。
Q:人間関係が理由で転職をした際に、どういうルートで転職しましたか。
人間関係が理由の場合、周囲には相談しづらいこともあり、エージェントを利用する人が多いのかもしれません。
まとめ
今回のアンケートでは、医師の約6割が職場選択において人間関係を重視していることがわかりました。同じく約6割の医師が、現在あるいは過去に何らかの人間関係の悩みを抱えたことがあると答えました。
また、人間関係を理由に退職・転職した経験がある人は2割を占めました。人間関係に不満がない人は、職場の全体的な満足度も高い傾向にあることから、人間関係を良好に、ストレスなく過ごせることが、医師の仕事を継続するうえでも大事な要素であることが見えてきました。
【アンケート概要】
調査期間:2023年9月12日~18日
対象:「民間医局」会員の医師
回答者数:1139人(男性807人、女性296人、わからない・答えたくない36人)
回答を寄せていただいた医師の年齢や診療科目の内訳は、以下の通りです。