アンケート記事
医学部の学費は、私立大学の場合6年間で数千万円以上かかる場合も少なくありません。民間医局コネクトは会員医師を対象に、医学部の学費のために奨学金や学費の減免・給付制度を活用していたのかについてオンラインでアンケートを実施し1702人から回答が寄せられました。約4割が医学部の学費で何らかの奨学金を得たり、学費減免制度や給付金を受けたりした経験があると回答。そのうち、給付・貸与された総金額が「1000万円以上」という人は約2割いました。そのほかにも、返済額や返済期間、計画通りに返済できたかなどについても調査しました。
利用が多かったのは日本学生支援機構の貸与型奨学金
Q:医学部の学費について、減免制度、奨学金・給付金を利用されたことはありますか?(現在利用中・返済中の方も含む)(回答数1702)
まず、医学部の学費について、減免制度、奨学金・給付金を利用したことがあるかどうかを尋ねました。回答者の42.7%(726人)が「利用したことがある」と回答しました。
どのような種類の減免制度、奨学金・給付金を利用していたかを尋ねたところ(複数回答可)、最も多かったのは「日本学生支援機構(旧・日本育英会)・貸与型奨学金」で、59.6%(426人)でした。以下、「国公立大学学費減免制度」が18.2%(132人)、「民間の奨学金制度」が12.5%(91人)、「日本学生支援機構(旧・日本育英会)・給付型奨学金」が11.7%(85人)、大学独自の奨学金制度が11.2%(81人)と続きます。
そのうち、減免、給付・貸与された総額が最も高い制度について尋ねました。最も多かったのは「日本学生支援機構(旧・日本育英会)・貸与型奨学金」が51.0%(370人)で、半数以上が回答しました。次いで、「国公立大学学費減免制度」が8.5%(62人)、「大学独自の奨学金制度」が8.1%(59人)、「医学部の地域枠制度」が7.0%(51人)という結果になりました。
Q:利用したすべての制度で減免、給付・貸与された総金額を教えてください。(回答数726)
利用したすべての制度で減免、給付・貸与された総金額についても聞きました。最も多かったのは「300万円以上500万円未満」で23.4%(170人)でした。以下、「100万円以上300万円未満」が18.2%(132人)、「700万円以上1000万円未満」が15.2%(110人)、「100万円未満」が10.6%(77人)と続きます。1000万円以上の回答をすべて合わせると21.2%(155人)で、「1800万円以上」という人も6.9%(50人)いました。
毎月の返済額は「1万円以上3万円未満」が約4割
Q:減免制度、奨学金・給付金の利用・返済状況について教えてください。(回答数726)
続いて、減免制度、奨学金・給付金の利用・返済状況について尋ねました。「すべて返済済み」の人は35.8%(260人)、「現在返済中」という人は30.7%(223人)でした。「減免制度や、給付条件に従い返済不要」という人も17.8%(129人)いました。
Q:利用した制度の中に就労条件付き(給付・貸与や返済免除の条件として、特定の地域や施設での勤務が設定されている等)の制度はありましたか?(回答数726)
利用した制度の中に、就労条件付き(給付・貸与や返済免除の条件として、特定の地域や施設での勤務が設定されているなど)の制度はあったかどうかを尋ねました。「就労条件があった」は26.2%(190人)、「就労条件は無かった」は73.8%(536人)という結果でした。
Q:毎月の返済額は平均にすると、どのくらいでしたか?(給付期間中の方は将来の返済予定も含む)(回答数597)
返済が必要な制度を利用している(利用していた)597人対して、毎月の返済額の平均を聞きました。最も多かったのは「1万円以上3万円未満」が38.5%(230人)で、以下「3万円以上5万円未満」が24.1%(144人)、「5万円以上7万円未満」が12.2%(73人)と続きます。「10万円以上」という人も14.2%(85人)にのぼりました。
Q:返済にかかった期間はどれくらいでしたか?(給付期間中や、現在返済中の方は将来の予定も含む)(回答数597)
返済にかかった期間(将来の返済予定も含む)についても尋ねたところ、最も多かったのは「15年以上」で37.0%(221人)でした。次いで「5年以上10年未満」が19.1%(114人)、「3年未満」が14.4%(86人)、「10年以上13年未満」が14.1%(84人)、「3年以上5年未満」が11.6%(69人)という結果でした。10年以上かかるという人は全体の54.9%で、半数以上を占めています。
Q:計画通りに返済できましたか/できていますか?(回答数483)
奨学金を「すべて返済済み」「現在返済中」と回答した483人に対して、計画通りに返済できたか/できているかを尋ねたところ、「はい(計画通りに返済できた/できている)」が95.9%(463人)、「いいえ(計画通りに返済できなかった/できていない)」が4.1%(20人)という結果でした。
制度の利用満足度は「満足」「やや満足」合わせて7割超
Q:減免制度、奨学金・給付金制度を利用したことについて、どちらがあなたの考えに近いですか。それぞれ教えてください。
【事務手続き(回答数726)】
減免制度、奨学金・給付金制度を利用したことについて、それぞれの選択肢のうち近い考えを聞きました。事務手続きについては、「面倒」(23.8%)と「やや面倒」(34.4%)を合わせて58.2%、「やや簡単」(29.8%)と「簡単」(12.0%)を合わせて41.8%と、面倒だと考えている人が16.4ポイント上回りました。
【返済額の負担感(回答数483)】
奨学金などを「すべて返済済み」「現在返済中」の483人に対して、返済額の負担感について聞きました。「負担を感じた」(16.6%)と「やや負担を感じた」(28.2%)を合わせて44.8%(216人)、「あまり負担を感じなかった」(31.1%)と「負担を感じなかった」(24.2%)を合わせて55.3%と、負担に感じなかったという人が10.5ポイント多いという結果になりました。
【給付条件の厳しさ(回答数726)】
給付条件については、「条件が厳しい」(15.2%)と「やや厳しい」(28.5%)を合わせて43.7%。「やや緩い」(39.7%)と「緩い」(16.7%)を合わせて56.4%と、緩いと感じている人の方が12.7ポイント多いという結果になりました。
【利用した結果の満足度(回答数726)】
利用した結果の満足度については、「利用して満足」(31.1%)と「やや満足(44.2%)」という人を合わせて、7割以上が満足と感じていることがわかりました。
まとめ:高額になりがちな奨学金も、「返済は負担を感じなかった」派が優勢
今回のアンケートでは、回答した約4割の医師が何らかの減免制度や奨学金・給付金を利用したことがあると回答しました。返済が必要な制度の利用者のうち、毎月の返済額の平均で最も多かったのは「1万円以上3万円未満」で回答者の約4割を占める一方で、減免、給付・貸与された総金額が1000万円以上という人も2割以上いることがわかりました。また、完済までの期間は10年以上かかるという人が半数以上でした。
医学部の学費は高く、奨学金の返済総額も高額になる傾向があるとはいえ、「すべて返済済み」「現在返済中」の人に返済額の負担感について尋ねると、「負担に感じなかった」という人の方がやや優勢という結果になりました。
【アンケート概要】
調査期間:2023年7月14日~20日
対象:「民間医局」会員の医師
回答者数:1702人(男性1099人、女性553人、わからない・答えたくない50人)