記事・インタビュー
たかせクリニック
理事長
髙瀬 義昌
平成24年8月に厚労省から発表された「高齢者数3000万人超え」「認知症患者300万人超え」という発表に度肝をぬかれた医療・看護・介護関係者は少なくないと思われます。どちらも多いということについても「びっくり」なのですが、この2つの数字を単純に割り算すると、高齢者の10人に1人は認知症患者である可能性があることにもなります。たしかに糖尿病をはじめとするメタボリック・シンドロームが認知症の発生や増悪に悪さをしているという論文が数多くみられるようになり、一般の外来などにおいても、以前より「もの忘れ」を訴える患者が多くなったと感じている医師は数多くいらっしゃると思います。本人だけでなく同行した家族ともなかなか話の疎通がとれず、家族自身が「介護うつ」や「認知症」を伴っていたりします(もちろん本人も家族も病識はないことが多いのですが…)。外来の継続受診をすすめたり、専門病院で画像診断をすすめても、本人がじっとしていられないためままならないこともあります。
平成25年2月24日、日本認知症予防学会で講演させていただいた際、鳥取大学浦上克哉教授に「髙瀬先生、軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)は1000万人以上いると思ってますよ」とお聞きしてさらにびっくり。「認知機能障害があっても家庭生活は何とかこなせる人」が高齢者3人に1人という勘定になります。専門家の間では変性性の認知症のうちアルツハイマー型認知症は100万人以上、レビー小体型認知症は50万人以上といわれています。
アルツハイマー型認知症については川畑信也先生や繁田雅弘先生他、多くの先生方がわかりやすい本を出されています(拙著『はじめての認知症介護』(佼成出版社刊)や『認知症の治療とケア』(じほう刊)もお役に立つことと思いますのでご紹介します)。
今回は恩師の一人である小阪憲司先生に教えていただいたレビー小体型認知症についての話題を提供したいと思います。この病気は人視聴の一つなのですが、病初期に認知機能障害がみられず!幻視からはじまることがあるということです。また、レビー小体という「細胞内のゴミ(封入体)」が脳幹を中心に末梢に限局した場合は「パーキンソン病」で、大脳皮質を中心に中枢神経系から交感神経系まで広がっている場合は「レビー小体型認知症」ということになるわけです。
つまり「レビー小体型認知症」と「パーキンソン病」は本質的に同じ病気ということになります。小阪先生によれば、異なる2つの病気が偶然重なるというよりは一緒に起こりやすいというべきものだそうです。高齢発症の増加や優れた抗パーキンソン病薬の出現でパーキンソン病の高齢化がすすんでいます。当然のことながら高齢者に認知症が多いので、認知症を伴うパーキンソン病患者は現在その全体の7〜8割に達するといわれています。これらの病気は薬物やケアの状況で結果が大きく左右されます。
専門医が見逃しやすく、とらえ方が困難な病気のひとつともいえますので、次回はより詳しく述べたいと思います。
※ドクターズマガジン2013年5月号に掲載するためにご執筆いただいたものです。
髙瀬 義昌
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